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2010年4月25日 (日)

読書日記 「主婦パート 最大の非正規雇用」本田一成著 集英社新書

2010年1月20日初版
2010年4月10日読了

本田一成氏は、経営学者で、國學院大学経済学部教授です。専攻分野は、スーパーマーケットなどのサービス産業の人的資源管理、組織行動、労使関係。

大変に勉強になりました。

主婦パートが非正規雇用労働者の多数を占めることはつとに指摘されてきたことです。正社員は約3430万人、非正社員は約1890万人。うち、パートタイマー1300万人、主婦パートは800万人と言われています(平成19年度)。

「主婦パートは、短時間のパートを望み、夫が家計の主たる生計を稼ぎ、家計補助的な収入を得ることを目的としては働いている」と言われてきました。特に、「不安定雇用という名の虚像」(小泉静子・佐藤博樹著)では、この主婦パートは、不安定雇用でもないし、仕事や労働条件への満足度も高いとしていました。

しかし、この本は、経営学者としての著者が1000人ものパートの聞き取りを通じて、主婦パートがおかれている現状を分析しています。

主婦パートは、低い賃金で従順に働くという、企業にとって貴重な労働者である。そして家庭では妻や母として、家事・育児・教育・介護などの大きな家庭責任をほぼ全面的に引き受け、忍耐強く献身的にこなす。さらに、夫を仕事に専念させ、長時間労働を可能とさせるだけでなく、子どもたちを教育して、仕事に生活の多くを捧げる人間として企業に送り込んだり、そういう家族を支える人間として成長させる。(主婦パート・サイクル)

主婦パートたちは、長らくこのような負担に耐えてきたが、基幹化による重圧が益すことによって、主婦パートサイクルが停止し始めている。

しかし、家庭での家事育児負担、職場での基幹化という名のもとでの労働強化、正社員が減らされパートが戦力化されることによる職場の不効率化などが語られています。名付けて「主婦パート・ショック」です。

基幹化による圧力は、低賃金、不安定の労働との矛盾により、経営での不完全作業が増加して、経営コストをあげており、マイナスになっていると指摘しています。また、家庭での児童虐待や少子化の遠因ともなっていると指摘しています。

著者は、「パートタイム社員」を創設しようとい提案しています。期間の定めのないパートタイム社員として雇用する。そして、健康保険や厚生年金の130万円の壁を撤廃する。主婦パートを、パートタイム社員化して、準正社員的な立場として雇用することで、家庭や社会の歪みを是正するべきだとしています。

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