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2009年12月13日 (日)

読書日記 「なぜ若者は保守化するのか」 山田昌弘著

2009年12月3日発行
2009年12月13日読了

■それをいっちゃあ おしめいよ。おいちゃん。

「パラサイトシングル」、「希望格差」、「婚活」など現代社会の実相を一言で、あらわすキイワードをつくってきた山田昌弘教授のエッセイです。

保守化する日本の若者。既存の社会を批判し、自由で自律的な生き方を主張し行動するのが若者。終身雇用制を社畜と批判し、女性の自立、男女平等を主張するのがいつの世も若者の特権・・・のはずが、今時の若者は逆保守化している。

著者によれば、若い女性は高収入で安定した正社員男性と結婚して専業主婦になるのを望んでいる。伝統的性別役割賛成率が20代女性の40%に達している。女性の自立やフェミニズムを実践して専門職のキャリアを追求するのは、高学歴の女性の中の極少数の者でしかない。若い男性も、公務員や大企業の正社員に新卒で就職することを一番に望んでおり、転職や起業などは望んでいない、とのことです。

この傾向は世論調査などで明確です。確かに、個人的な実感と一致します。でも、それをいっちゃあお終い・・・・夢も希望もない(というのが現実か)。

■少子化論議のタブー

著者は、少子化は、若い女性の未婚が原因であるとします。

彼女たちは、なぜ結婚しないのか。理由は単純で、彼女たちに豊かな生活を保証できる未婚男性が少なくなっているからである。

このことは、私は10年以上言い続けているが、大きく取り上げられることはなかった。こんなことを言ったらクビが跳ぶと、ある官僚に言われたこともある。多くの人は薄々知っているが、公に言ってはならないタブーなのだろう。

ということで、少子化対策には、保育所を増やすことも重要(それは結婚した人への援助)だが、もっと重要なのは非正規社員でもフリーターでも安心して結婚できる社会をつくるしかないと言います。そのとおりでしょうね。

■フランスの調査団との懇談話し

著者は、フランスの経営大学院の日本視察団と、日仏の労働状況について次のように懇談したそうだ。

彼らは日本の最低賃金を聞いて驚き、また、200万人を超すフリーター数を聞いて驚く、そんな賃金ではまともな暮らしができないではないか、どうして日本の低収入の若者はデモや暴動を起こさないんだと質問してきた。私が日本の若者は学卒後も親と同居して生活を支えてもらっているから低収入でも暮らしていけるというと、「日本の経営者がうらやましい。母国語を話せて文句も言わない若者がそんなに低賃金で雇えるんだ」と言っていた。

確かに外国人の経営者から見れば、うらやましいことでしょうな。

■「意識は存在が規定する」

労働者と活発なインテリが結び付いた「革命」の20世紀の時代は遠く過ぎ去り、今や、資本主義を前提として、格差をなくすの手段として、福祉国家理念(社会民主主義)なのか、自由市場経済理念(新自由主義)なのかが問われている時代です。

若者の保守化は、現実に自己を適応させるためのやむを得ない防衛策なのでしょうね。

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コメント

初めまして。
調べ物をしていて、ここにたどり着きまして。

最後の一文――、

> 今や、資本主義を前提として、 > 格差をなくすの手段として、
> 福祉国家理念(社会民主主義)なのか、
> 自由市場経済理念(新自由主義)なのか
> が問われている時代です。

――には、正直、違和感を感じます。

なぜなら、"社会民主主義"か"新自由主義"か――なキーワードで、"二者択一"を一方的に迫っている印象を抱くためです。

今の日本に於ける格差の問題は、"高度経済成長時代の発想が、破綻した事"だと思う。
都市部の発展が地方を下支えする――と言いながら、実は東京への産業&人材集中を招いただけで、大都市であっても、地方の場合はノウハウの蓄積も難しくしている為では無いのでしょうか?

そこに踏み込まねば、幾ら"格差の是正"を唱えたところで"東京への依存"は変わらない分、逆に地方の衰退を招く可能性が強い。

でも、それは、"付加価値のある、産業の育成"を意味しており、それを意識せずに、

「福祉国家理念なのか、自由市場経済理念なのかが問われている」

――と結論付ける様では、更なる格差が発生する結果しかもたらさないのでは無いでしょうか?

更に、"格差の問題"で言うのなら、
「大学を出れば、良い就職先に恵まれるから、将来は安泰」
――と、安直なキーワードを軸にした教育のあり方にも踏み込まなければ意味は無いと思います。

その"安直さ"こそ、求職者の大企業志向(=ひいては東京集中)をもたらして地方の衰退に繋がった側面がある為です――これこそ、"格差"では?

"格差の是正"には賛成するけれど、もっと、"風が吹けば、桶屋が儲かる"と言う側面も踏まえて欲しいですね。

長くなりましたが、それでは、またです。

投稿: Masaya | 2014年6月14日 (土) 08時54分

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