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2009年11月 3日 (火)

有期労働契約法制立法提言 労働弁護団

■労働弁護団の提言

2009年10月28日、日本労働弁護団は「有期労働契約法制立法提言」を発表しました。

http://homepage1.nifty.com/rouben/

非正規雇用労働の流れを食い止めて、有期労働契約を例外的なものと位置づけて包括的な規制を提言するものです。

有期労働契約の締結を、ドイツのように正当な理由がある場合に限定するものです。

 使用者は、次の額号に定める正当な理由がなければ、期間の定めのある労働契約(以下、「有期労働契約」という)を締結することはできない。

①休業又は欠勤する労働者に代替する労働者を雇い入れる場合
②業務の性質上、臨時的又は一時的な業務に対応するために、労働者を雇い入れる場合
③一定の期間内に完了することが予定されている事業に使用するために労働者を雇い入れる場合

■厚労省 有期労働契約研究会

2008年2月に厚生労働省は、有期労働契約研究会を発足して、当初は次のような論点を提示していました。ここでは有期労働契約の締結事由の限定は論点には含まれていませんでした。

1 有期労働契約に係る施策の在り方
(1) 契約期間(上限制限)
(2) 有期労働契約の範囲、職種ごとの期間制限
(3) 契約締結時の労働条件等の明示
(4) 通常の労働者との処遇の均衡等
(5) 契約の更新、雇止め
(6) その他有期契約労働者の待遇の改善対策
2 その他
 必要に応じ、適宜論点を追加

しかし、ここにきて第7回有期労働契約研究会は、新たに踏み込んだ論点を提示しました。この点はhamachanのブログでも紹介、指摘されているとおりです。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/10/post-b479.html

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/10/s1023-5.html

研究会は、現状認識として次のような問いを発しています。

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/10/dl/s1023-5c.pdf

○正規労働者の解雇規制が国際的に見て厳しいから有期契約労働者が増えたという見解もあるが、どのように評価すべきか。賃金等のコストが低い点や解雇に比べ雇止めの規制が緩やかであるという点も考慮すべきではないか。

日本の解雇規制が「国際的に見て厳しい」という現状認識に対して、「という見解もあるが、どのように評価すべきか」としている点は、俗論に対して冷静な議論をしようという姿勢があるように見えます。

そして、現行法制に対する評価として

○我が国の法制においては、有期労働契約の締結事由や勤続年数・更新回数の上限に係る規制はないが、今回のヒアリング・実態調査結果等も踏まえて、どのように考えるべきか。

中立的な表現をしながら、「有期契約の締結事由や勤続年数・更新回数の上限」を論点としてあげたことは相当に踏み込んだという印象です。以前の厚労省の研究会の報告書などでは、有期契約の締結事由の規制は「問題外のそと」という扱いだったですから。

諸外国の法制度、①フランスのように有期労働契約締結事由を合理的なものに限定する方式や、②英国や韓国のように締結事由は限定しないが勤続年数の上限と更新回数の上限とを定める方式、③ドイツのように有期とするのに正当な理由があれば上限なし、正当な理由がなければ勤続年数の上限を定めるという方式(労弁の提案)に対して、「我が国の雇用システムの特徴や労使のニーズに照らして、どのように評価すべきか」と検討対象にあげています。

この有期研究会は来年夏には中間報告が出るというスケジュールのようですが、今後、どこまで議論が進むのか要注目です。

■広島電鉄の例

今朝の2009年11月3日の朝日新聞で、広島電鉄が「契約社員を正社員化。他方、正社員の中高年労働者の賃金を引き下げ。65歳に定年延長したが生涯賃金は変わらず」という改革を、労使で合意したことが報告されています。このような労使の合意による是正というのは珍しい例になるのではないでしょうか。賃金が引き下げになった中高年の労働者が、「納得いがないが、仕方がない」と語ったという記事が印象的です。

低成長の時代に、労働者側の負担(犠牲)だけで格差是正がされるのか、使用者の応分な負担による格差是正ができるのか。労働組合の方針と力量が問われます。

hamachanの「新しい労働社会」(岩波新書)での「産業民主主義」の好例ということになるのでしょう。

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