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2009年11月 8日 (日)

第118回労働法学会 「民法の現代化と労働契約法」山本敬三教授

2009年10月18日の第118回日本労働法学会が開催され、それに参加してきました。

山本敬三教授(京大・民法)の「民法の現代化と労働契約法」が大変に面白かったです。民法から見ると、労働契約法はこのように見えるのかという点が新鮮でした。

■約款法理から就業規則法理を見ると

山本敬三教授は、民法の約款組み入れの理論からは、労契法7条は問題があると指摘されました。

ご承知のとおり、労契法7条は、「周知性」と「内容の合理性」を要件として、就業規則が労働契約の内容となると定める。他方、民法では、約款の組み入れの要件は、「開示」と「約款の契約に組み入れの合意」が必要(基本方針試案【3.1.1.26】)。しかし、労契法7条は、「就業規則の内容を契約に組み入れるとの合意」は要件となっていない。

したがって、民法が現代化され、上記の約款組み入れの要件が立法化されると、労契法7条は一般法である民法に反することになってしまう。


就業規則法理は、民法の約款理論とは別物だと言えばすむわけですが、となると、やはり就業規則は契約説的な理解ではなく、労契法によって法律的に創設された効力を持っているという考えがもっともすっきりすということになりそうです。

■就業規則不利益変更は事情変更の要件から見ると緩やかすぎる

また、労契法10条は就業規則不利益変更を定めるが、民法の事情変更の原則(基本方針試案【3.1.1.91】事情変更の要件)から見ると、事情変更の要件が緩やかであり、問題が生じるとも指摘されました。

事情変更の要件

<ア>当該事情の変更が契約当事者の利害に著しい不均衡を生じさせ、または契約を締結した目的の実現を不可能にする重大なものであること。

<イ>当該事情の変更が、契約締結後に生じたこと

<ウ>当該事情の変更が、契約締結時に両当事者に予見しえず、その統御を越えていること


この要件からみると、特に<ア>の要件からは、労契法10条の要件が緩やかにすぎるという指摘でした。

労働契約が、企業活動を前提とした多数の労働者との間の継続的契約関係という特殊性からやむを得ないということになるのでしょうか。

■民法の目と労働法の目

これらの点は、民法に合わせるのではなく、労働契約法の独自の必要と論理があるということなのでしょう。

労働契約法は、「合意原則」がキイなのか、「合意を超えた規制」がキイなのか。この点、労働法学会のメイン報告で、土田教授、唐津教授らが議論をされていました。言わんとされていたことは、労働者と使用者との間で締結された生の「合意」は非対等者の合意だから「本当の合意」ではなく、「労使対等合意の原則」(労契法3条1項)によって「あるべき合意」に修正されたものが「真の合意」というものということなのでしょう。やはり、法の規制がキイかと思います。

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