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2009年6月24日 (水)

日弁連労働法制委員会 濱口桂一郎さんの講演を聞く

日弁連の労働法制委員会にて、濱口桂一郎さんのEU派遣指令の講演を聞きました。

濱口さんは、講演の前半、EUでの労働法形成のプロセスを、それは楽しそうにお話しをされていました。1998年に濱口さんの「EU労働法の形成」を呼んで、労働弁護団の会報「季刊労働者の権利」に書評(というか、感想文)を掲載したところ、濱口さんの論文をお送りいただいたことを思い出しました。

EU派遣指令は、派遣労働利用の規制を緩和するとともに、派遣労働者と派遣先労働者の均等待遇を義務づけています。

私が、ヨーロッパがその方向に舵をきった理由・根拠は何かという初歩的な質問をしたところ、「ヨーロッパではここ30年、20年にわたり失業問題の解決が過大であり、とりわか若者の失業の解消が大きな政策目的であったから」と教えてもらいました。

均等待遇の対象労働者は、派遣先労働者であるが、ヨーロッパでは産別労働協約で賃金が格付けられているから、均等待遇が可能だが、日本では難しいのではないかという質問に対して、「賃金決定の基準やルールがない社会はない」、「日本でも各企業で賃金決定のルールがあるはずで、実際に決められるはず。」と応答されていたことは印象に残りました。

確かに、企業ごとに賃金体系は違うとはいえ、中途で従業員を雇い入れるときには、企業はなんだかんだといっても賃金を決定します。各企業ごとバランスを考えて決めています。私も使用者として、こういう場合の賃金を決めたこともあります。

ただ、日本の場合には、対象労働者は、正社員ではなく、契約社員(非正規)が比較対象となることが多いということが問題ですが。

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2009年6月14日 (日)

民法(債権法)改正と労働法(その3)

■日弁連 6.13 「民法(債権法)改正シンポ

内田貴教授(法務相経済関係民刑基本法整備推進本部参与)、潮見佳男教授(京都大学大学院法学研究科)を招いて、日弁連司法制度調査会の民法(債権法)改正シンポジウムが開催されました。

■事情変更による契約解除又は改訂請求権

今回の「債権法改正の基本方針」(別冊NBL126号)には「事情変更」を新たに立法することが提案されています(同書155頁)。

【3.1.1.91】(事情変更の要件)
<1> 契約締結に当たって当事者がその基礎とした事情に変更が生じた場合でも、当事者は当該契約に基づいて負う義務を免れない。
<2>ただし、事情の変更が次の要件を満たすときは、当事者は【3.1.1.92】の定める請求をすることができる。
<ア> 当該事情の変更が、契約当事者の利害に著しい不均衡を生じさせ、または契約を締結した目的の実現を不可能にする重大なものであること
<イ> 当該事情の変更が、契約締結後に生じたこと、かつ
<ウ> 当該事情の変更が、契約締結時に両当事者にとって予見しえず、その統御を越えていること

上記<2>の要件がある場合には、当事者は事情変更による契約変更を申し出ることができ、再交渉がととのわないときには、裁判所に契約の解除を請求(金銭調整も可)すること、または契約の改訂を求めることができる制度を創設するとしています。

【3.1.1.92】(事情変更の効果)

<1> 事情の変更が【3.1.1.91】<2>の要件を満たすときは、当事者は契約改訂のための再交渉を求めることができる。当事者は再交渉の申出を遅滞なく行わなければならない。
<2> 再交渉の申し出がされたときは、相手方は、交渉に応じなければならない。
<3> 両当事者は再交渉を信義に従い誠実に行わなければならない。

(甲案)
(4) 当事者が<2>または<3>に定められた義務に違反したことにより、または再交渉を尽くしたにもかかわらず、契約改訂の合意が成立しない場合には、当事者(ただし<2>または<3>に定められた義務に違反した者は除く)は、

<ア> 裁判所に、当該契約の解除を求めることができる。ただし、<イ>に従い裁判所により契約改定が合理的と認められる場合はこのかぎりでない。裁判所は、解除を認めるに際して、当事者の申し出た適切な金銭調整のための条件を付することができる。

<イ> 裁判所に、改訂案を示して契約の改訂を求めることができる。裁判所は、当該改訂案の内容が変更した事情および契約に照らして合理的であると判断するときにかぎり、当該改訂案に基づいて契約の改訂を命じることができる。ただし、裁判所は、両当事者から求められた改訂案の内容がいずれも合理的であると判断するときは、より合理的であると認める改訂を命じることができる

(乙案) 省略

■事情変更の効果は雇用契約(労働契約)にも適用される

午後の質問コーナーで、潮見教授に、「上記の事情変更の規定は雇用契約(労働契約)に適用されると思うが、債権法改正検討委員会では、労働契約法の制定過程で、厚労省労働政策審議会の研究会が労働契約変更請求権、変更解約告知について議論してきたことを参照にしているか」と質問しました。

潮見教授は、一般論としては雇用にも適用されることになること、労働契約法の制定過程での研究会の議論は承知していること、ただ雇用(労働)との関係については今後、さらに検討を深める旨の回答をされました。

事情変更の法理は、従来は、契約締結時に想定されていない特別な例外的な場合と解釈され、労働契約の場合には事情変更の法理はほとんど適用がないと考えられてきたと思います。だからこそ、労働法分野ではその代替策として、就業規則変更による労働条件変更、あるいは変更解約告知が議論されてきたのだと思います。

しかし、上記のように、民法にて、裁判所での事情変更による、契約解除+金銭調整、又は契約改訂権が制度化されれば、事情変更が認めれるケースは従来よりも格段に広がると思います。

この事情変更の効果規定が新設されれば、労働契約の場合にも、使用者が労働者に対して、想定外の事情が発生したとして、労働条件の変更の再交渉を申し入れ、再交渉がまとまらなければ、労働契約の解除(解雇)又は、契約の改訂を裁判所に請求することができるということになります。

この事情変更の規定の新設は、労働契約法にも大きな影響を与えることになると思います。仮に、この事情変更の法理(効果)が民法に導入されるとなると、労働契約法で議論された労働契約変更請求権や変更解約告知がまた再浮上することは十分に考えられます。

■「雇用」はいじらないって言うけれど

潮見教授は、労働契約については、民法に取り込まないで、将来は労働契約法に統合すると述べられていました。消費者契約法は自立支援を法理念とするが、労働契約法は労働者の保護を法理念としており、一般法である民法に統合するのは適切でないという趣旨のお話しをされていました。また、内田教授も、他の講演会で、雇用は現行法のままにするとお話しされていたと聞いています。

しかし、上記以外にも、労働契約に影響を与える部分は結構あります(公序良俗の暴利行為の規定の具体化、不実表示の取消、損害賠償の免責、債権時効、有期雇用契約の黙示の更新規定)。やはり、今後、注目していかなければなりません。特に、労働組合のナショナルセンターは見落としがないようにお願いしたいと思います。

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2009年6月 7日 (日)

読書日記 「21世紀の歴史」ジャック・アタリ著

作品社

2008年8月30日発行

2009年4月15日読了

(フランスでは2006年11月出版)

■空想社会科学小説

<超帝国>→<超紛争>→<超民主主義>の三題噺を中心とした、空想科学小説(SF)ならぬ、空想社会科学小説(SSF)です。

■資本主義の歴史「中心都市」の東から西へ 変遷

資本主義の歴史を、港から発達した「中心都市」が東から西に移り発展することを描いています。ブルージュ→ヴェネチア→アントワープ→ジェノバ→アムステルダム→ロンドン→ボストン→ニューヨーク→ロスアンジェルスと。現在、ロスアンジェルスは、インターネットに象徴される情報技術のもとで世界の中心都市となった。

ちなみに、1980年代、著者も、東京がこの中心都市になるのではないかと想像したが、結局は、そうならないと結論づけています。

しかし、実際には、日本は銀行・金融システムの構造問題を解決する能力がなく、また膨張した金融バブルを制御する能力にも欠けていることが、まもなく明らかになった。また、自国通貨である円の大幅な切り上げを回避することが、労働市場の流動化を図ることもできず、サービス部門や「ホワイトカラー」の労働生産性を向上させることもできなかった。特に、日本は世界中からエリートを自国に引き寄せることができなかった。そして、「中心都市」に求められる個人主義を推進することもなく、覇権国であるアメリカの呪縛から逃れることもできなかった。(114頁)

しかし、そのアメリカも終焉を迎えるそうです。ロスアンジェルスも2025年頃には終末を迎えるというのです。

■21世紀の中心都市

次の「中心都市」は、アジアにうつることが示唆されているが、具体的にどこかとの指摘はされません。ただ、日本でないことは間違いないようです。21世紀前半の日本について次のように記述しています。

将来的なテクノロジーに関しては抜きんでているとしても、個人の自由を主要な価値観にすることはできないであろう。また、日本を取り巻く状況はますます複雑化する。例えば、北朝鮮の軍事問題、韓国製品の台頭、中国の直接投資の拡大である。こうした状況に対し、日本はさらに自衛的・保護主義的路線をとり、核兵器を含めた軍事を増強しながら、必ず軍事的な解決手段に頼るようになる。こうした戦略は、経済的に多大なコストがかかる。2025年、日本の経済力は、世界第5位ですらないかもしれない。(146頁)

これに対して、二つの危機さえを回避すれば、「韓国は、新たな経済的・文化的モデルになり、その卓越したテクノロジーと文化的ダイナミズムによって世界を魅惑する。」と高く評価しています。その二つの危機とは、北朝鮮の崩壊による南北統一と北朝鮮との軍拡競争だそうです。

■独裁国家は70年を超えると崩壊する

中国については、中国共産党が崩壊すると断言しています。民主主義がない社会には市場が発展することがあり得ないことは歴史が証明している。今後、中国は共産党独裁が崩壊して内戦状態になり、軍事的な暴発(台湾侵略やシベリア侵略)に出る危険が高いとします。

2025年には、いずれにせよ中国共産党の76年間にわたる権力に終止符が打たれるであろう。(70年以上にわって権力を握り続ける政権は世界中どこにも存在しない)。

確かに、ソビエト連邦は1917年から1989年の72年間、日本の戦前天皇制独裁国家は1868年から1945年の77年間で、それぞれ崩壊していますね。

■<超帝国>と<超ノマド>

いずれにしても、市場民主主義が、アジア諸国にも拡大し、アジア諸国も多極化する。そして、世界は混沌とし、民主主義なき市場が世界を覆う。国境なき市場が生まれ、政府や国家さえ破壊する。これが<超帝国>であり、市場がすべてを制覇し、その市場を操るのが超ノマド=超帝国の支配者だと言います。この「ノマド」っていうのは「遊牧民」という意味だそうです。これに対するのが「定住民」、昔は農民だが、現代では福祉国家の国民たちということです。

超ノマドとはクリエーター階級(未来企業の戦略家、保険会社や娯楽産業の経営者、ソフトウェアの発明者、金融業者、法律家、デザイナー等々)です。

この<超帝国>に対する<超紛争>が起こると予想します。国家自体が崩壊し(ソマリアやイラクみたいに)、膨大な下層ノマドが生み出され、「海賊」が世界中に横行する。そして想像を絶する兵器を使っての世界中で紛争を起こす。

■アーサー・C・クラークばり

このあたりからは先は、アーサー・C・クラークのSF小説「2061年宇宙の旅」、「3001年宇宙の旅」を読んでいるようです。確か、イタリアで宗教団体による核爆発テロがあったというストーリーがありあました。

しかし、著者は、大まじめに<超帝国>の出現と、<超紛争>の凄惨な地獄絵のような世界の招来は不可避であると予言しています。そこで、人類の滅亡を避けるためには、人々は<超民主主義>を生みだし、調和的な世界を築かなければならないと言うのです。

最後に、「人類は自滅から逃れられるか?」と次のようなに述べます。

現在、市場資本主義は、「資本論」の著者がほぼ予想したとおりの道筋を歩んでいる。一方で、社会主義は、マルクスが警鐘を鳴らした袋小路に迷い込んでしまった。また社会主義では、持続的な自由の保障、幸福、多様性、公正、人間の尊厳を担保することが不可能であることが判明した。現在では社会主義を再考することさえ時間の無駄であると思える。(284頁)

(しかしながら、…)現在、我々は前述のかの社会主義者と同様に、信念に基づいた行動を我々の未来のためにあえて起こす必要がある。(285頁)

ジャック・アリタは、フランスの社会党政権・ミッテラン大統領の特別補佐官を務めた政治家で、1991年にはヨーロッパ復興開発銀行の初代総裁になったという人物です。1943年生まれで今年63歳だそうです。キリスト教的な世界観、最後の審判、メシアの登場、千年王国っていう感じです。

この本はフランスでは2006年に出版されており、2008年9月以降の世界金融崩壊の前に書かれています。

■暗い21世紀 

この本に書かれたように、21世紀は<超紛争>の時代になるのかもしれません。ソマリアやイラクのように国家が崩壊する地域が、アフリカ、中東、中国に多数出現して、海賊や山賊らが跋扈する悪夢の世界。環境破壊による資源や食糧争奪戦が勃発し、核テロもきっと起こるという暗い予想に満ちています。

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2009年6月 1日 (月)

人間らしい労働と生活を目指す日弁連決議に反対する裁判員裁判反対派の面々-「坊主憎けりゃ、袈裟まで憎い」

■5月29日日弁連第60回総会での出来事

日弁連は今年、60周年を迎えるので、司法改革について決議をあげました。

http://www.nichibenren.or.jp/ja/opinion/ga_res/2009_1.html

裁判員裁判に反対派(高山俊吉先生とお仲間たち)は、この決議には絶対反対です。少人数ですが、結構、大きな声と汚いヤジをとばしますので、総会騒然という感じですね。まあ、反対派が自由に発言するのは弁護士会が健全な証ですけど。

■もう一つの決議にも反対

驚いたいたのは、もう一つの決議にも反対したことです。

もう一つの決議とは、「人間らしい労働と生活を保障するセーフティネットの構築を目指す宣言」というものです。

http://www.nichibenren.or.jp/ja/opinion/ga_res/2009_2.html

この決議は、要するに現状を踏まえて次の3点について、今後、弁護士会の重要な課題とすることを宣言するものです。

①労働、社会保障、教育などの社会政策をについて積極的に提言すること

②労働と生活の問題の総合的な相談窓口を弁護士会が設置し、行政・自治体連携すること

③民事法律扶助制度の抜本的改革を目指すこと

■裁判員反対派はこの決議にも反対

裁判員裁判反対派の方々は、上記決議にも反対意見を述べて、討議打ち切り動議に対しても野次と罵声をあびせていました。

裁判員裁判反対派の方々にとっては、この日弁連決議の内容は、新自由主義と小泉・竹中流の構造改革派に対する厳しい批判をすることなく、単にセーフティネットでごまかそうとしているものなのだそうです(シャミンの偽善者ってわけですな!)。欺瞞に満ちた内容なので反対するのだそうです。

裁判員裁判反対派の弁護士は、次のような、立派な革命的気概に満ちあふれた炎のごとき反対意見を述べられダラ幹たちを批判されておいででした。

この先生曰く、

資本主義300年の歴史の中で、最大の危機を迎え、まさに今、資本主義が崩壊しようとしてる。ル・モンドでさえ、革命を礼賛している時代なのに、そのような認識をまったく持っていない日弁連の決議はごまかしでしかないのだ。

このル・モンドの記事ってこれですね。

「革命を讃える」
セルジュ・アリミ(Serge Halimi)
ル・モンド・ディプロマティーク編集総長
http://www.diplo.jp/articles09/0905.html

弁護士会って、弁護士全員が加盟しなければならない強制加入団体である公的団体です。ですから、特定の政治的・社会的価値観に立て!というのは、もともと無理があります。任意団体である自由法曹団とか、青年法律家協会とはちがうのですから。任意団体であれば、仲間内の好きな理念や価値観を自由勝手に言っていれば良いのでしょうが。

仮に、心底に革命を目指したいなら、「なんとか実現党」でもつくって自由に弁護士会の外で政治活動でもされれば良いのにねえ。弁護士会に、自分の特定の政治的価値観を押しつけて、それに賛成してもらえないから反対するって、何だか、おかどちがいというか、大人げないように思います。

大声をあげて、この決議に反対する裁判員裁判反対派の言動を見ながら、全国にたくさんいる裁判員裁判を反対する弁護士、自由法曹団や青法協の中にいる強硬な裁判員裁判反対派の弁護士さんたちが全部が全部、まさか、彼ら・彼女らと一緒の考えじゃないとは思うのですけど・・・・きっと。

裁判員裁判に賛成する日弁連執行部の言うことは何でも反対する、ということなのでしょうか。まさに「坊主憎けりゃあ袈裟まで憎い」っていうわけです。

上記のル・モンド・ディプロマティークの記事にスペイン内戦で敗れた共和派の言葉を紹介してます。

我々はすべての闘いで負けたが、いちばん美しい歌を歌ったのは我々だった

古今東西かわりなく、サヨクって、下手な歌でもできるだけ多くの人が歌うことで多数派を目指すことよりも、誰が最後まで純粋に教義をまもっていたとか、あるいは、誰が一番、美しい歌を歌っていたかの方が重要なのですね(まあ、ロマンチックだこと)。

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