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2009年5月 1日 (金)

読書日記「小林多喜二-21世紀にどう読むか」ノーマ・フィールド著

岩波新書2009年1月20日発行 4月30日読了

■メーデーの日に

新書だと、長くても2、3日で読んでしまうのですが、この本を読了するのに約1ヶ月かかりました。

でもって、今日はメーデーということで、記念に「蟹工船」を青空文庫からダウンロードして印刷し往復の通勤電車の中で読みました。高校生のときに読んで以来です。

■ノーマ・フィールド本は

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教科書的な知識しかなかった小林多喜二について、その人間性に触れた気持ちになりました。

銀行員であったことは知っていましたが、貧しい境遇から叔父の援助をうけてエリートコース(小樽高等商業学校)にのり、北海道拓殖銀行に入行したことは知りませんでした。

■タキと多喜二

何よりも驚いたのは、銀行員になった21歳のときに、「ヤマキ屋」という小料理屋の酌婦である田口瀧子(タキ)と知り合い恋におちて身請けまでしていることです。酌婦といっても、要するに売春婦であったということです。その小料理屋に行ったのも、どうやら「まれに見る美女がいる」との話しにのせられて遊びにいったようなのです。

小林多喜二は、彼女に熱烈に手紙を書き教育を与えようとして、とうとう身請けして、結婚まで申し込んでいる。ノーマによれば、瀧子は、小林多喜二の名誉のために身を引いたということのようです。

天皇制を否定する「アカが嫌い」だったとの説もありますが、瀧子は、「そうではない。」と戦後になってきっぱり否定しているそうです。瀧子曰く「共産主義がどういう思想なのか研究することもなかったし、必要もなかった。小林が悪いことをするはずがなかった。絶対的に信用していた。」と述べたそうです。

■小樽第2回メーデー

小樽では1927年第2回メーデーが開催され、参加者は約3000人と東京以北最大規模なものだったそうです。小樽では、激烈な富良野の磯野小作争議、小樽港湾争議があった。どうやら、小林多喜二は、拓殖銀行に勤めながら争議に参加して生き生きと活動したようです。

■蟹工船

久しぶりに蟹工船を読んでみて、昔のように冷笑的にはなりませんでした。田舎くさい演出だと思った箇所も、ノーマ・フィールド本を読むと、小林多喜二がいかに労働者が小説を読んで自分の生活を描いているのかと思わせるように、こころを砕いていたことを理解できた気がします。

確かに、お高くとまっている風情はありません。露骨な「猥談」も書かれています。劇画的な筋立てて、クライマックスとラストが単純だが力強いことは間違いありません。きっと、昭和初期の労働者たちにうけたのでしょう。

その小林多喜二のアピール力を恐れて、日本警察は僅か一日で拷問で殺したのです。

■あまり「ゴリゴリ原則的」でないところがよい

小林多喜二は、共産党員によく見られるゴリゴリの原則論者ではなかったようです。警察に捕まった労働者(登場人物)に次のように語らせているそうです。

「お前ら達幹部みたいに、警察さ引っ張られて行けば、それだけ名前が出て偉くなったり、名誉になったりすんのと違うんだ」

■今もある「蟹工船」的職場

小林多喜二が描いた蟹工船の職場は今の日本にもあります。

それを一番感じるのは、日本まで来て働いているブラジル日系人の労働相談を受けたときです。いわゆる3Kの職場。食肉、弁当、飲料、菓子などの工場(それぞれ東証一部上場企業の立派な大工場。名前を出したいくらいです。判決文になったものは後で公表しましょう。)で、彼ら・彼女らは労災に罹災しています。おまけに偽装請負です。

安全装置を停止した食肉処理機にまきこまれて右腕に重症を負う女性労働者。フォークリフトの荷物運びに巻き込まれて怪我をする男性労働者。フォークリフトの回転にあたって転落して頸椎損傷を受けた男性。多くの人は日本語は片言しかできません。彼ら・彼女らへの安全教育や安全対策が行われていません。日本の安全教育テキストを、ただローマ字のフリガナをつけて配布して読ませている。ポルトガル語に訳されたのかと思うと、ただ日本語をローマ字表記しているだけなのです。「読めても、日本語がわからない」と彼らは言っています。これが日本の現実です。

裁判にすれば、あたかも、「詐病だ。わざと労災を起こした。」などと主張をする経営者側弁護士たちがいます。日系人に対する差別意識丸出しの先生たち。まあ偉そうなことったらありゃしねえ。みんな東証一部上場企業の顧問弁護士。お偉い「ブル弁」先生たちです(小林多喜二ならそう言うしょうね)。

まさに、「蟹工船」的世界です。

日本人の非正規労働者も同じ境遇なのでしょう。このことは、小樽商科大学の蟹工船読書感想文コンクールにあらわれています。(私たちはいかに『蟹工船』を読んだか。)51wfyk8dyyl_ss500_

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■個別労働紛争から集団的労働紛争への回帰。労働運動の再生へ

世界恐慌に比較されている今回の大不況。

個別労働紛争の法論理だけでは、この大波は乗りこえられないのではないでしょうか。整理解雇の4要件であろと、4要素であろうと、世界恐慌並みの不況となれば労働者に不利です。

個別労働関係の法理では、限界があります。これから「労働者の団結と連帯の力」こそ求められる時代になったと思います。

小林多喜二は、何よりも非正規労働者の若者らに「蟹工船」が読まれていることを喜んでいることでしょう。

特高に殺された彼への最高の贈り物です。

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