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2009年3月 9日 (月)

政治資金規正法の虚偽記載の故意とは?

■政治資金規正法の虚偽記載って?

民主党の小沢一郎議員の公設秘書の逮捕について新聞では次のように被疑事実が記載されています。

調べによると、大久保秘書は、実際は西松建設の政治献金であることを知りながら、03~06年分の陸山会の政治資金収支報告書に、西松建設のOBが代表を務めていた政治団体「新政治問題研究会」(95年設立、06年解散)と「未来産業研究会」(98年設立、06年解散)から計2100万円の寄付を受けたとする虚偽の記載をしたという。(朝日新聞3月4日)

罰則は政治資金規正法25条1項3号の12条違反ということなのでしょうか?

第25条 次の各号の一に該当する者は、5年以下の禁錮又は100万円以下の罰金に処する。
(1号、2号 略)
3号 第12条第1項若しくは第17条第1項の報告書又はこれに併せて提出すべき書面に虚偽の記入をした者
(第12条第1項には、政治団体の会計責任者の報告書提出義務が記載されている。)
■形式犯
政治資金規正法は複雑でわかりにくいですが、これはいわゆる形式犯ですから、虚偽であるか否かは形式的な事実認識が問われるはずです。つまり「新政治問題研究会」などという政治団体が存在しないことを知りながら、あえて存在すると記載することが虚偽記載になるのであって、もし「新政治問題研究会」が実在するのであれば、そう書いたからといって虚偽記載ではないということになるのが普通の形式犯の虚偽という故意についての解釈でしょう。お金には色はついていませんから。

でも、西松建設名義の預金口座から直接にお金が出され、新政治問題研究会の銀行口座に直接に振り込まれ、それがそのまま小沢氏の政治資金団体である陸山会に振り込みにより寄付されていた場合には、新政治問題研究会は実在していたとしても、ダミーということになります。それを会計責任者が知っていた場合にはどうなるでしょうか。

検察は、これも虚偽記載として立件するつもりのようです。しかし、実在する新政治問題
研究会の預金口座から直接に振り込まれている場合に、それをそのとおり記載することが「虚偽記載」ということになるのでしょうかねえ。

もし、正しく記載するとしたら、西松建設が寄付者ということになります。だが、お金は間違いなく、新政治問題研究会の名義の銀行口座から振り込まれているのですから、西松建設が寄付したとして報告書に記載すると、それが虚偽ということになりかねません。
その意味で、このような形式犯の虚偽記載について、実質的な認識を問うということになるのは通常の形式犯の故意の考え方とずいぶん違う解釈をするように思います。裁判になれば、けっこう大きな法律問題になるのではないでしょうか。

■本件か、別件か?

通常は、こういう形式犯としての逮捕は別件で、本件があるというのが、今までの特捜のやり口だったのではないでしょうか。小沢一郎氏の公設秘書逮捕については、まだまだ、今後の動きが注目されます。
■しかし、漆間官房副長官(元警察庁長官)って・・・

警察庁長官と言えば、法務省や検察庁と強いパイプを持っているとしか考えられないポジションです。しかも、オフレコでの発言をしたということになれば、何らかの情報を得たうえで話していると考えるのが普通です。

漆間発言の結果、検察としては自民党関係者も事情聴取をせざるを得なくなります。検察としては、中立公正を行動で示す必要がでてきますからねえ。漆間官房副長官の、まあ、なんていう愚かな発言なのでしょうか。

でも、こんなトンマな発言をする漆間元警察庁長官って、周囲からは一切信用されておらず、重要な機密情報なんかは集まらないような人なのかもしれません。

ひょっとしたら、本当に単なる軽口だったのでしょうかね? もし、そうだとしたら、そんな人物がわが国の官房副長官だというのも、なんか寂しいものがあります・・・。

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コメント

貴エントリを読ませていただき、大変勉強になります。

ところで、
>3号 第12条第1項若しくは第17条第1項の報告書又はこれに併せて提出すべき書面に虚偽の記入をした者<

それと、上記に加えて、
第22条の2 何人も、第21条第1項、第21条の2第1項、第21条の3第1項及び第2項若しくは第3項又は前条第1項若しくは第2項の規定のいずれかに違反してされる寄附を受けてはならない。
・・・につき、
同第26条 次の各号の一に該当する者(団体にあつては、その役職員又は構成員として当該違反行為をした者)は、1年以下の禁錮又は50万円以下の罰金に処する。
3.第22条の2の規定に違反して寄附を受けた者

・・・という事にもなり、
入り口論では2罪で併合1罪というように検察は考えているのではないでしょうか。

名義の冒用などの場合と同様に、故意(認識・認容)の存在については難しいのだと思います。果たして検察官はどのように証明するのでしょう。
また、これが可能なのであれば、いわゆる迂回献金形をとる他の
政治家たちも故意犯ということになるのだろうと思います。

そうすると、どうも教科書に書いてあるような形式主義的犯罪(例えば文書偽造など)というものの考え方を変えなければならないのでしょうか。

投稿: えんどう | 2009年3月13日 (金) 13時28分

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