東京新聞の「犯罪報道の見直し」
■東京新聞が裁判員裁判実施にあたって犯罪報道を見直す
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2009021502000080.html
東京新聞(中日新聞社)は、今年五月の裁判員制度開始を前に事件報道のあり方を見直し、「事件報道ガイドライン」を作成しました。事件報道の意義を再確認するとともに、可能な限り情報の出所を示すなど記事スタイルを一部修正。バランスの取れた事件報道を目指します。
捜査段階では、「容疑者=犯人」ではないという原則をあらためて確認し、これまで以上に容疑者側の取材に努めて言い分を掲載していきます。
(2008年2月15日)
この事件報道ガイドラインとはどういうものなのでしょうか。被疑者・被告人=有罪視報道を止めるのは当然です。ただ、「容疑者側を取材して努めて言い分を掲載する」というのは少し違うのではないかと思います。双方の言い分を、報道すれば良いというのではないように思います。証拠に基づかない「推測」記事が公判前にあふれかえる事態こそが、裁判員裁判による適正な裁判にとってマイナスになるのではないでしょうか。
なお、公判が開始されれば、裁判の公開が憲法で保障されている以上、法廷での出来事については、マスコミは原則として自由に報道できるのですから。
■捜査機関の情報漏洩に対する規制強化を
現在、警察から漏れた(リークされた)と思われる、被疑者の自供(自白)の有無及び自供(自白)の内容などが詳細にマスコミで報道されます。いわゆるサツ回りという取材からの情報でしょう。多くは、「捜査関係者によると、」という枕詞で報道されていますが、一般には、報道された自供(自白)を真実のものとして受け止めているのではないでしょうか。
しかし、具体的な捜査情報を漏らすことは、本来、公務員の守秘義務に反しています。記者がいろいろ捜査情報をさくぐろうとすることは規制できないでしょうが、この情報源は公務員ですから、守秘義務違反として厳しく追求すべきです。戒告や停職などの懲戒処分の対象とすべきでしょう。特定することは難しいとしても、懲戒処分の対象とすることを鮮明にすれば抑止効果は期待できるでしょうし、情報が漏れた場合には守秘義務違反として警察内の独立した監督機関(監察官)が、関係者に事情聴取すべきです。捜査にもマイナスになるし、そのようなリスクをおかしてリークする者は少なくなるでしょう。
■弁護人の場合は
弁護人も依頼者の秘密について守秘義務を負っています。したがって、担当刑事事件の内容については、原則として公表できません。しかし、現在のように有罪視報道がなされている場合には、被疑者・被告人の利益のために言い分を公表したほうが良いこともあります。このような場合であっても、被疑者・被告人の承諾を得なければ公表できません。被疑者段階、公判が開始された被告人段階の違いもあります。被疑者・被告人の承諾を得ることを前提としても、何をどこまで公表すべきかは、弁護人にとって極めて難しい判断になります。
被疑者・被告人が否認をしている場合には、被疑者・被告人の了承を得た上、言い分を公表したり、また目撃証人を探すために積極的に記者会見をする場合もあります。これは、被疑者・被告人の権利を擁護するための正当な刑事弁護活動です。
時に、マスコミンに注目される事件については、弁護人が取材攻勢にあうことがあります。また、周知のとおり、マスコミや世論から弁護人が激烈な社会的なバッシングを受けることも珍しくありません。
裁判員裁判が開始した場合、社会的に注目される事件につき、マスコミにどう対応すべきか、弁護人は、より慎重に検討しなければならないですね。弁護人が一人だけで判断するのは困難でしょう。複数の弁護人が討議できる体制が必要だと思います。
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コメント
最も必要なのは弁護士・警察官・検察官・記者の実名報道ではないでしょうか。実名を出されれば市民に説明責任を負う意識が生まれるはずです。
投稿: Piichan | 2009年3月 2日 (月) 01時51分
水口様は裁判員制度に賛成のようですが、きちんとした事件報道をすることこそ国民の司法への信頼回復の近道ではないでしょうか。
投稿: Piichan | 2009年3月 2日 (月) 04時49分
報道をすることが極めて重要なのはご指摘のとおりです。ただ、報道をするのは、公開の法廷で裁判がはじまった段階で良いと思います。
被疑者段階での推測記事やリーク記事をあたかも事実のように報道することは無意味かつ有害であり、裁判員に対して予断や偏見を与えるおそれがあると思うのです。
公判がはじまった段階では、裁判員は、法廷で実際の証拠や証人を見ているのですから、マスコミなどの記事にそれほど影響を危惧する必要はないと思っています。
投稿: 水口 | 2009年3月 3日 (火) 05時07分