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2009年1月 4日 (日)

民法(債権法)改正と労働契約-ちょっとびっくり。

■民法(債権法)改正

民法改正が議論されていることは法律雑誌等でなんとなく知っていましたが、「債権総論が主たる対象だろう」という程度の認識しか持っていませんでした。でも、大変な認識不足でした。

荒木・菅野・山川教授らの「詳説労働契約法」(弘文堂)を読んでいたところ、民法の雇用そのものも改正の検討対象になっているというのです(同書164頁以下)。

民法(債権法)改正検討委員会ホームページhttp://www.shojihomu.or.jp/saikenhou/indexja.html

を読んでビックリ!

■雇用契約と労働契約の関係-民法(雇用)と労働契約法

第4準備会で各種契約について討議をしているのですが、雇用、請負、委任の各則を残しつつ、その総則規定として役務供給契約に関する規定を定めるという提案がされています。

2007年12月25日第4回議事録資料(http://www.shojihomu.or.jp/saikenhou/shingiroku/shingiroku008.pdf

「雇用契約については、起草当時の理解とは異なり、『使用従属性』という要素をその定義に読み込む解釈が通説となっているが、このような解釈を今後も維持するのが適当である。」

「なお、雇用契約と労働契約との関係については、通説的見解によれば、両者はオーバーラップすることも多いが、理論的には異なる観点から基礎づけられた別個の契約概念であって、実際上も両者は必ずしも一致するものではない。したがって、雇用契約と労働契約とはさいあたり二元的に捉えておくのが適切である」

 雇用契約と労働契約を、「理論的に異なる観点」とはどういう趣旨でしょうか。また、両者が別個の契約概念だとして、民法雇用と労働契約法が併存してしまうと、実務が混乱してしまいす。労働法学では、現在は、雇用契約と労働契約は同一とするのが通説的立場です(「使用従属性」という要素を民法の雇用に読み込むのであれば、同一説になるのがスジだと思うのですが。)

■今後の民法(債権法)改正での雇用についての検討課題

また、今後の検討課題として次のような項目をあげています。

(1)雇用契約と労働契約との関係
 使用従属性を基準とする雇用契約の概念を維持する方向で検討することとし、労働契約との関係を更に検討する。

(2)契約期間
 雇用契約における契約期間が労働契約を含め、一般原則として意義をもつという観点から、その内容(期間の定めのない場合の解約申し入れ、ある場合の期間制限・更新)について、検討する。

(3) 安全配慮義務
 民法に規定するかどうか、規定するとして雇用契約の規律の部分に措くことが適当かどうかについて検討する。

(4)企業再編と就労請求権との関係
 労働者の同意原則を維持しつつ、具体的検討をする。

(5)労務提供と賃金請求権との関係
 使用者の責めに帰すべき事由による就労不能な場合の規律の明確化を検討する。その際、賃貸借契約の目的滅失の場合の賃料債権、請負契約における仕事完成前の報酬請求権との関係も検討する。ここで、民法536条の規律及び解除との関係をより一般的なレベルでも検討する。

 う~ん。企業再編と就労請求権っても凄い大論点です。同意原則を維持するっていう方向は良いとして、会社分割・労働契約承継法との関係はどうなるのでしょうか。
 契約期間や労務提供と賃金請求権など労契法や労基法との調整など大論点もあります。安全配慮義務は、労働契約法に規定が新設されましたが、何も言及がなく、ひょっとして、この研究会の学者は知らなかったのではないでしょうかね?

 労働契約法が2007年11月28日に国会で成立し後で、議論されているのにもかかわらず。労働契約法との関係について十分討議されていません。いくら、学者有志の研究会とはいえ、法務省民事局付きの役人( http://www.shojihomu.or.jp/saikenhou/indexja.html )も入っているの制定された労働契約法に対する目配りが不十分だと思います。第4回議事録の23,24頁で少し触れている程度です( http://www.shojihomu.or.jp/saikenhou/shingiroku/shingiroku007.pdf

 その後には、雇用契約、労働契約関係の報告は掲載されていません。おそらく、労働契約法との関係が議論されているのでしょう。でも、雇用契約、労働契約は、労働法の中核概念です。労働法立法の在り方としては、いくら民法で法務省の所掌分野とはいえ、労働法学者や労使のヒアリング、労働法全体の整合性を検討すべきではないでしょうか。

 以前、知り合いの裁判官と四方山話をしていたとき、その裁判官が「労働契約法も、本来は法務省が担当したほうが良い。その方がシステマティックな実務的なしっかりとした法律が作れる。」って言っていました。私が、「契約自由・対等当事者の民法の世界と、労働法は違いますよ。」って言ったところ、「いやいや、借地借家法は経済的弱者をまもる法律だけど法務省管轄ですよ。法務省だってできますよ。」って言っていました。

 この民法(債権法)改正研究会は、法務省が後ろ盾ですから、急ピッチで検討が進むという情報もあります。この研究会はどうなるかわからないという学者もいるようですが、会社法の一気呵成の改正作業がありましたから、結構、この債権法改正もあっという間に現実化する可能性があります。

 今後、労働法的観点からも、要注意です。

【追記】

その後、債権法改正の基本方針が4月29日に発表されて上記の状況は大きくかわっています。

以下のブログも参照下さい。

http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2009/05/post-81af.html

http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2009/06/3-e4e5.html

http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2009/10/post-fe60.html

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