中労委労働者委員 全労連系から任命
■中労委の労働者委員に全労連系組合から初の任命
昨年11月16日、全労連に加盟している全医労の元副委員長の淀房子氏が任命されています。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2008-11-16/2008111601_01_0.html
■1989年 労働組合再編成と連合系独占
総評が解体し、連合と全労連が成立した1989年以降、それまではナショナルセンターの系統により中央労働委員会の労働者委員が任命されていたのが、全て連合系が推薦した委員に独占をされていました。
約20年前、この「連合系独占」任命は違法であるとして、純中立労組懇(出版労連、民放労連、新聞労連、生協労連等の中立系産別組織の協議会)と全労連が、国を被告として任命取消・損害賠償請求を提訴しました。私も、純中立労組懇から依頼されて、この事件を担当していました。おそらく約10年くらい裁判を担当していたと思います。
国会図書館で、労組法制定当時の中労委時報(当時の名前は忘れましたが)、末弘厳太郎博士の労組法の古い本などを読んで、労働委員会当初から、労働組合の産別や系統別で労働者委員は選任される趣旨であったことを調べて証拠に出したり、準備書面を書いたりしてきました。1949年の54号通牒にもその趣旨が明記されていました。
ところが、労働省は連合との関係を維持するために、頑なに全労連系と非連合中立系が推薦した委員を排除してきたのです。
もっとも、正確に言えば、労働省自体は、全労連系を排除する積極的な意図はなかったように思えます。しかし、全労連系を任命すると、連合から強い反発を受けるために、任命しなかったというのが実情でしょう。連合が容認さえすれば、全労連系や純中立系の任命に大きな障害はなかったように思います。
各都道府県の地労委も、労働省に右へならえで、連合系のみを任命していました。東京都は、連合東京系と東京地評系の任命、京都府が連合京都系と京都総評系でした。これは総評のローカルセンターが残ったという特殊事情によります。現在は、非連合系の委員も任命している都道府県は、9都道府県に増えています。非連合系の労働者委員も任命した高知県の橋本知事(当時)や長野県の田中知事(当時)は、労働行政と連合の横やりはおかしいと痛烈に批判して、非連合系の委員も任命していました。
■裁判の結果はことどとく敗訴
中労委訴訟、そして各地の地労委でも訴訟が提訴されました。訴訟は、ことごとく敗訴でした。取消訴訟では原告適格がない、損害賠償についても、任命は裁量権の範囲内であるとして請求棄却でした。確か、ずいぶん後になって、福岡地裁で連合独占を違法としつつ、損害はないとした判決が出たように記憶しています。
各地の弁護団が集まって全国の弁護団会議をしたときに、ある地裁の弁護団から、裁判官は、「要するに思想差別のようなものですなあ。」と言っていたそうです。そこまでわかっているのに、その地裁も、やはり裁量権の範囲内として請求を棄却しました。
■労働審判員選任との差
この連合の全労連系排除の姿勢が強かったために、労働審判制度のできる際にも、当初は、連合が全労連系の推薦の労働審判員を排除するのではないかと裁判所も含めて懸念していたと思います。しかし、労働審判については、連合と全労連が話し合って、各地の組織人員に応じて労働審判員の推薦枠を決定するという常識的なルールがつくられました。このルールをまとめあげたのは当時の連合副会長の高木剛氏(現連合会長)でした。
ところが、その後も、労働委員会の労働者委員については連合系の独占は変わりませんでした。その理由は謎でした。
ようやく、独立行政法人担当とはいえ(一般企業担当はできませんが)、やっと中労委で、全労連系の任命を認めたのでしね。自分の気にくわない労働組合だからといって、任命から排除するという厚労省や、連合は、近代市民社会の常識からあまりに外れています(どこの第三世界の国の話?っていう感じです)。このような行政と特定団体の「談合体質」と「癒着」は、日本社会にありがちな「宿痾」でした。これがようやく少しばかり是正されたのは喜ばしい限りです。
■連合と全労連
連合は労使協調路線の官公労、大企業・正社員の労組が中心です(もっとも、UIゼンセンは中小企業労組、全国コミュニティユニオンは地域労組が主体のようですが)。他方で、全労連は左派系の少数派労組、中小企業労組、非正規労働者の労組が中心です。
今の「雇用の崩壊」が迫るなか、連合と全労連が対立している古い「労働戦線」対立時代は終わったということでしょうね。
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