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2008年11月23日 (日)

アスベスト補償・救済制度の国際比較 立命館大学シンポ

■立命館大学の国際シンポ

11月22日、立命館大学「アスベスト災害・公害の政策科学」研究プロジェクトとして標記シンポジウムが開催され、秋の京都に行ってきました。残念ながら、日帰りのため観光はまったくできでませんでしたが。

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創思館









「ritsumeiasubesuto081122.pdf」をダウンロード

ステファン・レビン氏(アメリカ・マントサイト医科大学准教授)
ベネデッド・テラッチーニ氏(イタリア・元トリノ大学教授)
ジャン・ポール・テソニエール氏(フランス・弁護士)
カン・トンムク氏(韓国・釜山国立大学医学部予防・労働医学科准教授)
森永謙二氏(日本・前独立行政法人労働安全衛生総合研究部長)

コーディネーター 森裕之(立命館大学政策科学部准教授)
コメンテーター 宮本憲一(立命館大学政策科学部客員教授)

レビン氏は、あのセリコフ教授の弟子で、セリコフ・センター医長です。

大変に勉強になったシンポジウムでした。各国とも、アスベスト被災者の多くが建設労働者であることが報告されていました。首都圏建設アスベスト訴訟は東京地裁、横浜地裁ではじまっています。

特に、レビン氏と、フランスの弁護士のテソニエール氏の話が印象に残りました。

■レビン氏の話し

レビン氏は、アメリカでも建設労働者に多くにアスベスト被災者がいること、9.11のワールドトレードセンターの被災により、レスキュー隊の多くがアスベストによる呼吸系疾患に苦しんでいることなどがデータとともに報告されました。アメリカでは、周知のとおりアスベスト訴訟が大規模に起こされ、アスベスト被害の補償制度がすすんでいるかと思いきや、公正な被害補償制度はないとそうです。

次の二つの話が印象的でした。

(1)アメリカの訴訟による解決のゆがみ

アメリカでは、訴訟による解決が大規模に行われたが、訴訟では被災者には十分で公正な補償がなされていない。特に、弁護士が金儲けにはしり、被災者に十分な補償がなされていないということです。弁護士が金儲けのために、法律事務所が医学検査もして、原告を募り提訴するが、被災者救済のシステムをつくらず放置しているそうです。アスベスト企業の方の弁護士も、企業を破産させて巨額の損害賠償請求から逃げるように指導し、企業側の弁護士も多額の報酬を得てもうけている。

アメリカでもアスベスト被害補償法制度がつくられようとしているが、政治的にはなかなか進まず、国民皆保険もないアメリカでは、オバマ政権になったからといって、実現は楽観できない。

アメリカの弁護士はとんでもない金の亡者です・・・。

(2)アメリカ民主主義

レビン氏は、セリコフ教授が常に言っていたこととして次のように語っていました。

セリコフは、政治をよく理解していた。彼は、科学的所見や医学的所見だけでは物事は解決しない。医学者や科学者は情報を得たら、それを労働組合に知らせ、マスコミに提供し、幅広く広めて、政府と行政を動かすよう政治的影響力を行使することを重視していた。

アスベスト問題を解決するためには、このような取り組みを強めていくしかない。その結果、一つ一つ改善ができる。

アメリカ民主主義の真骨頂ですね。労働組合とマスコミと共同していくというのですが、弁護士が入っていないのは仕方がないでしょうねえ。

■フランスのアスベスト基金-仏弁護士テソニエール氏の話

アメリカの弁護士の悪辣さを聞いて落ち込んだのですが、フランスのテソニエール弁護士の発言には勇気づけられ励まされました。

フランスでは、1995年にアスベスト被害者団体(ANDEVA)が結成され、1996年にアスベスト禁止する法律が制定された。2002年2月28日、破棄院・社会法部(最高裁にあたる)が、使用者の労働者に対する安全張り世義務の内容を、従来のように手続を踏んだか(手段債務)、というものでなく、結果の問題となった(結果債務)。この安全配慮義務を尊重せず、危険性を認識していた場合、使用者は「許されない過失」があったとして責任を認められた。

フランスでは、1995年から数万件近いアスベスト訴訟が提起され、この動きが裁判所の判例を変更させ、アスベスト被害者の全面的救済が一般化した。判例変更まで、1%程度の勝訴率が、判例変更後は99%勝訴するようになった。

2000年12月23日、法律によってアスベスト被害者賠償基金(FIVA)が創設された。労災職業病であろうとうなかろうと、あらゆるアスベスト被災者と遺族に賠償金を支払う基金である。この基金は社会保障制度から拠出されている。補償は2万~2万5千ユーロの年金。基金にアスベスト被災の申請をして、審査期間は約6ヶ月。もし却下されれば、その認定を訴訟で争う。

基金が出来てからは、被災者の4分の3は、基金への申請を選び、他の4分の1は訴訟を提起している。基金を選択しないで提訴する原告の動機は、金額について不満であるから。

フランスでは、被害者が団結して訴訟を提起し、労働組合の力、マスコミの力で、法律を作った。FIVA(基金)の理事会には、被災者の代表、労働組合の代表、使用者の代表が入っている。

■森永賢二氏の話

日本では、疫学調査が行われていない。厚生労働省は即刻、疫学調査を行うべきだが、逃げているとしか思えないと述べられていました。

■首都圏建設アスベスト訴訟の目標

東京地裁と横浜地裁で提訴された首都圏建設アスベストのたたかいが目指す構想と、フランスのFIVAは共通性があります。フランスのアスベスト訴訟と基金創設へのたたかいについて、是非、詳細に知りたいものです。

トンネルじん肺弁護団で、基金の内容及び経過を調べるために、フランスに是非、行きたいものです。アメリカは遠慮しておきましょう・・・。

蛇足

・・・はやく、こういう弁護士活動に完全復帰したい今日この頃です。

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