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2008年11月 2日 (日)

韓国 国民参与裁判について

■韓国 ソウル訪問

P1000015 ソウル中央地方法院

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先日、第二東京弁護士会の会務にて韓国のソウル弁護士会を訪問しました。その機会に、ソウル中央地方法院(=ソウル中央地裁)に訪問して、法院長(地裁所長)、刑事部の主任法官(裁判官)や、韓国の弁護士から韓国の国民参与裁判の実施状況をお聞きする機会を得ました。

■韓国の国民参与裁判

ノ・ムヒョン大統領の下での司法改革作業で施行された陪審制に似た制度です。

9人の陪審員が一般国民から選出されて有罪・無罪を評議した上で、評決する。
裁判官(法官)は、この評議に関与しない。ただし、陪審員が全員一致に至らない場合には、裁判官の意見を聞いた後に、多数決により評決する。
・陪審員は量刑についても評議して意見を述べる。
陪審員の評決(有罪・無罪、量刑)は裁判所を拘束しない。
・裁判所は陪審員の評決と異なる判決をする場合には理由を述べなければならない。
被告人は国民参与裁判か、通常の裁判官裁判を選択することができる。
・参与裁判対象事件は、殺人、強盗、強姦などの重大暴力犯罪と収賄事件等。

陪審員制度に近いですが、評決に拘束力なく、被告人に参与裁判か通常裁判かの選択権が認められることが特徴です。

日本の裁判員裁判は、裁判官と裁判員がともに合議体をつくり評議し評決をします。被告人に選択権がありません。

■韓国国民参与裁判の運用について

ソウル中央地方法院で、法官から次のような説明を受けました。

・韓国では、10月までに全国で46件の参与裁判の判決が出された。
・参与裁判を選択する率は非常に少ない。
・実際には、200件の参与裁判申立がなされ50件が参与裁判となっている(対象外事件の申立だったり、排除されている)。
・今までの46件のうち2件が裁判官が陪審員の評決と異なる判決を下した。
・その2件のうち1件は、陪審員は、3訴因のうち、2訴因を有罪、1訴因を無罪としたが、無罪について、法律の解釈を誤ったとして有罪とした。もう1件は、量刑が重すぎるので、量刑を軽くした。
・控訴率は80%で、破棄率は25%。

■ソウル各裁判所での参与裁判

ソウルは人口約1000万人(韓国の人口は約4800万人)。ところが、ソウルの裁判所(中央、東西南北の5地裁がある)では2件しか参与裁判がない。他の地裁に比較しても、参与裁判率は異常に低い。裁判官は、その原因について、次のように説明していた。

①弁護士は参与裁判について否定的である。弁護士が被告人に参与裁判でないほうが良いと説得して取りさげたケースがある。

②弁護士が参与裁判を嫌う理由としては、手間がかかるからということがある。

③被告人が参与裁判を躊躇する理由としては、量刑が重くなると危惧していると思われる。

■韓国弁護士の意見

ソウル弁護士会の弁護士に、国民参与裁判を被告人が選択しない理由を聞いたところ、次のような感想を聞かせてくれました。

「量刑が重いという不安が大きいために被告人が参与裁判を選択しないのが真相」「弁護士が非協力的なのではない。」そうです。

陪審員の量刑は、それまでの裁判官の量刑よりも重くなることは、裁判所も弁護士も指摘していた。

韓国の弁護士の一人は、「韓国の司法改革は、アメリカ一辺倒で短絡的だ。日本の裁判員裁判は実施まで長期間議論されたが、韓国ではアメリカが陪審制であるということで、一挙に議論もなく導入された。僕は何でもアメリカが良いという改革は反対だ。僕はアメリカは嫌いなんだ」と言っていました。日本の裁判員裁判反対派と同じことを言うので、笑っちゃいました。民族主義者は、どこの国でも一緒じゃあ。

■ソウルの裁判所宣伝ビデオ

ソウル中央法院で、裁判所の宣伝ビデオ(DVD)を見せて貰いました(日本語版)。

国民の皆さま、どうぞ、裁判所にお越し下さい。けっして無駄足だとは感じさせません。心配事を解決する道を提供します。がっかりさせません。

まるで、証券会社か農協の宣伝のようでした。

■日本の最高裁と対称的

以前、労働審判施行にあたって、日弁連が最高裁と協議をしたとき、「裁判員裁判に膨大な宣伝費を投入するのであれば、労働審判ももっと裁判所が宣伝して欲しい」と要請したことがあります。

すると、日本の最高裁担当課長は、「裁判員は裁判所に強制的に来て貰うのであるから理解を促進するために宣伝をする。他方、労働審判は紛争事件であるから、労働審判を宣伝するということは、事件を起こして裁判所に来てくれと言うことになるから、そのような宣伝はいかがなものか。」という旨を答えていました。

「お客さまに満足していただきます。」という感じの韓国の裁判所と、日本の裁判所とは対照的です。ちなみに、今は最高裁は労働審判を注目しているそうです。この手法を一般民事にも導入できないかと考えているのかもしれません。

■韓国の司法試験とサッカー事情

私は、2002年の日韓ワールドカップて韓国で試合を観たことがあります。ちょうど、光州市で、韓国対スペイン戦を観ました。ホン・ミョンボのPKをこの目で観たと、話したところ、韓国の弁護士とサッカー談義と司法試験の話になりました。

今年、「韓国では裁判官任官の7割が女性」であったとのこと。成績順に任官者が採用されるから女性の方が成績は良いから、任官者の7割が女性となるということです。2008年の任官者は、2006年のドイツワールドカップ年の司法試験合格者だとのことです。

韓国の弁護士は、「韓国ではサッカーのワールドカップがあると、男は試験勉強をせずに酒ばっかり飲み、サッカー応援にあけくれる。だから、ワールドカップイヤーは、女性が大量に合格し、必然的に任官者も女性が多くなる」と説明してくらました。

さらに、その弁護士は、「ワールドカップイヤーに司法試験に合格した男はダメだ」というのです。なぜかと問うと、「男の癖に、サッカーを応援しないで、司法試験の勉強をやっているようなヤツはダメ男だ」というのです。(笑い)

やはり、韓国人のサッカー熱はあついです。

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