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2008年11月17日 (月)

読書日記 「間違いだらけの経済政策」榊原英資著 日経新書

元大蔵相国際局長、財務官で、現在、早稲大学教授。

■デフレ不況でなかった

21世紀になってのデフレ(ディスインフレーション)は、グローバリゼーション、経済統合の結果であり、デフレスパイラルと言われた不況ではなかったというのです。「2002年以降、物価安定の下での好景気が続いた」と。

日本のデフレの正体は、東アジアでの経済統合・生産ネットワークの進化による商品価格の下落であった(価格革命)。輸入の相手先は、80年代には5%前後であった中国のシェアが、2006年には21%になっている。逆に、アメリカの輸入シェアは85年の20%から、2006年には12%にまで下がっている。

東アジア諸国を結ぶ生産ネットワーク、サプライチェーン・ネットワークが形成されていくにつれ、自動車や機械部品などのシェアが圧倒的に増え、東アジアはハイテク製品の輸出国に変貌しています。

つまり、生産ネットワークの形成は日本の素材産業や部品製造業の輸出を急速に活性化させ、その結果、鉄鋼や自動車部品などの産業が日本の景気拡大のエンジンになっていったのです。他方、中国、香港、台湾など東アジア諸国からの輸入は日本の物価を押し下げ、物価が安定するなかでの景気回復を可能していいったのです。

竹中平蔵をはじめとしたエコノミストは、この新しい事態を理解できなかったので、デフレ脱却という誤った経済政策をとったといいます。このデフレは構造デフレだということです。

このような構造デフレ(好況下の物価安定)は、歴史上繰り返されていると言います。

1870年~1913年のいわゆるパックス・ブリタニカの次代にも怒っています。この時期は第二次産業革命とグローバリゼーションの時代とも言われ、世界の一人当たり実質GDPは平均1.3%成長しており、第二次世界大戦後の1950年~73年の2.9%に次ぐ高さでした。

■資源インフレ

他方で、資源・エネルギーは稀少となり、インフレとなっている。ハイテク商品がコモディティ化し、資源・エネルギーが稀少化するという事態が同時に進行していると言います。

この資源・エネルギーの高騰は、資源が稀少となり、中国・インドの経済発展により、大量消費することになり、あともどりしないだろう。

■アメリカの金融システム崩壊

アメリカの投資銀行を中心とした金融構造が崩壊し、世界の金融システムが商業銀行モデルにもどっていき、金融構造と金融監督が大きくかわり、実物経済を離れて肥大化した金融が、より実物に近いところに、おそらく戻ってくるのでしょう。

「ともかく、アングロサクソンに従っていれば間違いない」という岡崎久彦(元外交官)流のアメリカ原理主義や、「アメリカの市場主義が正しく遅れている日本」という竹中平蔵流の市場原理主義から脱却すべきとも言っています。

■新たな公的セクターを

で、著者は、資源・エネルギー省を創設して、公的セクターの役割を高めなければならないとしています。マクロ経済では、近代資本主義の構造の大変化の時代には対応できないというわけです。

■東アジアの経済統合と日本経済

これを読んでいて、企業主導の東アジアの経済統合、生産ネットワークが日本経済の構造までかえる状態になっているということが解りました。それを主導してきたのは民間企業だということも。

これからの世界同時不況の中で、どうなっていくのでしょうか。日本の労働者の賃金の低下は経済的には不可避のようです。

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