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2008年10月19日 (日)

読書日記「教育格差の真実」尾木直樹/森永卓郎 小学館新書

(2008年10月6日発行 10月15日読了)

尾木直樹氏と森永卓郎氏の対談集です。新書の対談集ですから、通勤電車の往復で読めてしまいます。

■尾木氏の発言で驚いたこと

それよりも驚いたのは教育評論家の尾木氏の次のような話です。

尾木 …学力観が変わったことが、学力低下の原因や背景として非常に大きいです。… 学力低下の中心的原因は、学力観が変わって「関心、・意欲・態度」がどのようであるかということが前面に出てきたことによると思います。それまでは、テストで中間も期末も満点をとったら、授業中の態度が悪くても、森永さんみたいに食らいついて嫌われていても、通信簿では「5」をもらうことができた。しかし、今はそれはあり得ないんです。…

森永 えっ ダメなんですか。

尾木 …「これは態度が反抗的だ。いちいち素直じゃない」と見る先生に当たると「3」になります。

尾木 …1993年、94年頃に中学校に入学した子が大学一年生に入ってきたときに、かなり変化を感じましたよ。やたら態度がいい。つまり、先生の前では態度を良くしているということが、今、中学校では当たり前になっちゃっているんですよ。…反抗的だと自分の内申点にひびくわけですから。だから先生に反抗するなんていうことはさらさら考えたことがない。これは実は、人間が精神的にいかにたくましく自立するのかという大きなテーマに対しては、深刻な問題なんです。

なんだか「にわかに措心しがたい」話しなのですが、都立校の先生の話を聞くと、こういう傾向にあるんだそうです。確かに、私の経験でも、最近の司法修習生はいやに素直で礼儀正しい人が多いですね。それに比較して、私たちの頃の学生や司法修習生、反抗的で生意気な人が多かったのは間違いない・・・・。

思春期に反抗を経験していないので、30歳すぎても、親をうらんで人を殺したなんて口走ったり、戦争になって丸山真男を殴りたいなんて言い出すヤツらが出てくるんでしょうね。

■自称「社会民主主義者」の森永氏の発言

森永氏の発言は、いままでいろんなところで発言したり、書いたりしていることと同じですが、いつものように真っ当なことを話しています。

森永 一夜にして何億円も稼ぐというような金融資本主義の時代は終焉を迎えるのではないか。真面目にものやサービスを生む時代が再びやってくると思うんです。

森永 ヨーロッパで同一労働同一賃金ができて、日本でできないわけがないと思っているんです。同一労働同一賃金の原則に違反したら、会社を罰すればいい。

森永氏の「罰すれば良い」という立論(労基法4条、119条1号にて既に男女同一賃金については罰則規定はあるのですが、これが実際に適用できない様々な問題があります。)は、いささか乱暴ですが、「格差社会」(本当は、「隔差社会」だと思います。)の是正のためには、同一価値労働同一賃金の原則を確立することが必要不可欠だと思います。

産業別・職種別賃金制度がない日本において、どのようにこの原則を広めて、妥当させていくのか。労働運動と労働法理論の緊急の大きな課題だと思います。

逆説的ですが、日本型雇用システム、年功序列賃金制度が崩れる、今からがチャンスなのかもしれません。

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