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2008年10月13日 (月)

読書日記 「入門 いまどきの経済」と「はだかの王様の経済学」 松尾匡著

「入門」は2001年5月発行(晃洋書房)。この副題には 「国家から市場へ、そして…… 」。「はだかの王様」は2008年6月発行(東洋経済新報社)。副題には「現代人のためのマルクス再入門」書かれています。

著者は、亡き置塩信雄教授の弟子だそうです。置塩教授は近代経済学が解るマルクス経済学者として著名でした。(置塩教授は、マルクスの「搾取理論」を数学的に証明したが、「利潤率の傾向的低下の法則」が成立しないことを数学的に証明したのだそうです。ちゅうことは、「資本主義は崩壊しない」ちゅうことでんな。)

一昔前(国家独占資本主義段階)には、右派の企業と左派の労働者が、どっちのために国家権力を使うのかを争ってきた。つまり、企業主義の開発体制か、社会民主主義的な福祉国家かという対立です。 ところが、1980年代半ば以降は、企業は市場化(民営化)を追求して、左派は国家の活用を追求して福祉国家路線を維持した。

労働者側は国家権力を労働者のために使おうとする。他方で、企業側は国家の規制(福祉国家)を解体して、市場化を推進しようとする。今は、こういう対立となっています。

でも、著者は世界自由資本主義(グローバル経済)になった現代において、国家権力を使って労働者のための経済政策を一国で実現することは不可能になったと考えているようです。

著者によれば、次の時代は、労働者は国家規制による保護ではなく、労働者=消費者=民衆が生産者とネットワークを作るという新しい社会経済システムが勃興してくると言います。 そして、IT技術の発達により、ニーズに基づく生産のネットワークが可能になったと言います。これと協同組合的生産事業体が合体すれば、「個々人が自分の判断で決定に参加して運営される、草の根の共同決定的参加型事業経済」ができあがり、これがマルクスの言うところの「アソシエーション」だそうです。現在でも、協同組合企業などで萌芽が生まれつつあるといいます。

亡き置塩信雄教授は、次のようにその著者で語っていました(「経済学はいま何を考えているか」大月書店・1993年発行)。

「あるものXが、社会的共有であるということは、そのXに関する決定が社会の全構成員によって掌握されていることでなければならない」

「ソビエト連邦をはじめとする「「社会主義」社会において、生産手段の社会的共有は実質的には存在しなかった。生産手段を用いての生産に関する決定は、社会の多数の構成員を排除して、一部の国家機関構成員によって独占的、集中的に掌握された。」

「新しい社会においては、社会の全成員が生産に関する決定に関与するのでなくてはならない。資本家階級に代わって、一部の人びとが社会的共有物であるとされた生産手段の国家的管理者であるということで、生産に関する決定を排他的に独占する社会ではあってはならない。」

その弟子である著者は、民主的な共同決定による経済をIT技術による消費者と協同組合的事業の連合体による「ネットワーク型経済」に期待をかけているようです。

しかし、著者は「はだかの王様の経済学」では、このような新しいアソシエーション型経済が開花するのは100年後、200年後になると書いています。

となると、そんな先の話よりも、現在の日本においては、国家を民衆の側が自分のために使えるかどうかという、一昔前の「福祉国家」路線の方がわかりやすい。

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