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2008年10月28日 (火)

読書日記 「労働再規制」五十嵐仁著 ちくま新書

2008年10月10日 発行、2008年10月18日読了

■「財界」内の二つの流れ

「新自由主義」路線(宮内義彦オリックス会長ら)と、旧来型の「日本型経営」路線(今井敬新日鐵会長ら)の対立を軸としながら、労働に関する規制改革を概観しています。

財界内に、この二つの流れがせめぎ合ったのはそのとおりだと思います。

これは、「重厚長大」の重工業から「軽薄短小」の電機産業に移行して成長してきた「日本型経営」企業が、IT情報技術革命によって金融・情報産業が次世代の成長産業になり、このような「先進企業」(金融・情報産業)に交代していくプロセスなのでしょう。

もっとも、財界内部としては、どっちが勝ったということではないのではないかと思います。高度経済成長を支えてきた大企業連合は、グローバル経済と新自由主義路線を受け入れつつ変容しながら統合したのではないかと思います。

奥谷禮子氏のような新自由主義を「戯画化」した人物が主流になっていれば、労働側も攻めやすいのですが、財界総本山はもっと利口なようです。日本型経営を基本にしつつ、新自由主義的な労務管理を慎重に導入しつつあるように見えます。

■2006年の反転

著書は、その政治的現れが小泉政権であったとし、2006年を境に、新自由主義路線はほころびを見せ、「潮目」が変わり、労働再規制の反転攻勢がはじまりつつあると言います。

確かに、ここ数年のマスコミの変わりようは目を見張ります。それほど、日本社会が大きなダメージを受けているということなのでしょう。

■ある世論調査

同書に山口二郎・宮本太郎「日本人はどのような社会経済システムを望んでいるか」(世界2008年3月号)という世論調査の結果が紹介されています。結果は次のようなものです。

「アメリカのような競争と効率を重視した社会」を望む
   全体6.7% 民主支持者5.5% /自民支持者6.3%

「北欧のような福祉を重視した社会」を望む
   全体58.4% 民主支持者61.3% 自民支持者50.3%
 
「かつての日本のような終身雇用を重視した社会」を望む
   全体31.5% 民主支持者31.5% 自民支持者41.4%

高福祉高負担の北欧福祉型社会を、旧日本型より、多くの人が支持していることに驚きました。アメリカ型「競争」社会も嫌ですが、今までの日本型「企業談合」社会もゴメンということでしょう。なかなか興味深い調査です。

民主党の政策も、新自由主義政党から社会民主主義的な政策に変わりつつあるようですから。これは、政治的・風見鶏的「変節」であって、本心からではないのではと心配に思いますが・・・・。でも、総選挙の結果、大きな変化がおきることを期待しています。

■金融危機、そしてリストラの津波が

とはいえ、現在の金融危機により大不況がはじまるようです。1985年の円高直後、また、1990年のバブル崩壊直後のように、またまた人員削減の大リストラがはじまるでしょう。

1985年 ブルーカラーの中高年労働者が「雇用調整」されました。

1990年 全産業のホワイトカラーの中高年管理職が「リストラ」され、そして若者は正社員で雇用されなくなり、非正規労働者層が激増した。

2008年 この間、ふくれあがった「非正規労働者」が真っ先にリストラされるでしょう。つまり、若者たちの再受難です。彼ら・彼女らの「仕事」がなくなる。

この局面で、労働運動が頑張れば、労働運動が再活性化するチャンスなのかもしれません。労働組合には、不退転の決意で頑張って欲しいものです。

ワーク・シェアリング、積極的労働市場政策、そして同一価値労働同一賃金を実現する労働運動や労働政策が本当に求められる時期になったと思います。

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