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2008年8月10日 (日)

労働契約と家事使用人

■外国人家政婦は労働法で守られない?

今朝の朝日新聞で、フィリピン人家政婦を雇っていた米国人に対して、家政婦が加盟した労働組合が団体交渉を申し入れたら、米国人に「労基法で保護されていないのだから、交渉の必要はない」と交渉を拒絶されたと報道されています。そして、「実情にあった法改正が必要だ」と報じられています。

確かに、労基法は家事使用人には適用しないとしています(労基法116条2項)。しかし、労基法が適用されないからといって、団体交渉を拒絶することはできません。労組法は「職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活をする者をいう」としていますから、外国人家政婦(家事使用人)であろうと、労組法上の労働者です。労基法の適用の有無にかかわりなく、団体交渉を申し入れることができ、使用者は団交応諾義務があります(労組法7条)。労基法が適用されなくとも、労組法が適用されます。また、労働契約法が適用されます。

■外国人家政婦と雇い主との関係は労働契約

家政婦と雇い主が締結する契約は労働契約です(労働契約法2条1項)。したがって、労基法が適用されなくとも、労働契約法が適用されます。ですから、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当で認められない」限り、解雇は無効となります(労働契約法16条)。雇い止めについても、雇用継続に合理的な期待があると認められる状況であれば、解雇の規制が類推適用されます。

労働契約法上の労働者は、「事業で使用される」という要件はありませんから、一般の家政婦も労働契約です。もっとも、労働契約法がない場合にも、民法の雇用契約でありました。

先日、朝日新聞の家庭・生活欄の「独立して働く」というシリーズで、一人親方の労働者性の問題について、訂正記事が掲載されていましたが、この当たりの労働法の知識は、わりと知られていませんね。新聞記者の皆さんも労働法を学生時代に勉強したことのあるひとは少ないでしょうから。

でも、新聞記者に判りにくい、労働法であることのほうが問題なのかもしれません。

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