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2008年7月12日 (土)

「左翼小児病」

1ヶ月ぶりの更新です。このところ、弁護士会の仕事が多忙で、なかなかブログの更新もできません。他方、労働法分野では、「労働者派遣法」見直しの動きが激しく、その検討状況や労働運動の動きを追う時間も持ちたいのですが、なかなかそれもできない日々が続いています。

ところで、「左翼小児病」という言葉が昔ありました。現在は死語でしょうね。

でも、このところ、たびたび「左翼小児病」という嘗ての「左翼用語」を思い浮かべます。

広辞苑によれば、「左翼小児病」とは「幼稚で極端な性向」と説明されています。知っている人は知っていると思いますが、これはレーニンが「共産主義における『左翼』小児病」という著作で論じている性向のことです。

なお、「小児病」は、「子どもに多いジフテリア・麻疹・水痘・百日咳・猩紅熱の類」だそうです。ですから、「小児病」に苦しんでいる子供とその親御さんの心情を思えば、左翼「小児病」という用語は、不適切な表現なのでしょうね。だから、「死語」となったのでしょう。左翼の「机上の空論」病とでも言い換えるのでしょうか。

レーニンは、一切の妥協を排して、声高に威勢の良い革命的言質を弄する「左翼主義者(極左主義者)」を、「なんという子供じみた素朴さだろう」と嘆き、「非常に若い、経験のあさい革命家には、また小ブルジョア的な革命家にあっては非常に老齢で経験ゆたかなものでさえも、『妥協をゆるすこと』はとくに『危険なもの』であり、理解できない、ただしくないものに見えるだろう」と書いています。そして、次のように記述しています。

政治では、ときには、階級間、政党間のきわめて複雑な――国家的な、また国際的な――相互関係が問題となるので、あるストライキの妥協が、ただしい妥協か、それともストライキ破り、裏切指導者の背信的な妥協か、等々といった問題よりもはるかにむずかしいばあいが非常に多い。あらゆるばあいにあてはまるような処方箋ないし一般的な基準(「妥協は絶対にいけない!」)をつくりだすことは、ばかげたことである。一つ一つのばあいをそれぞれただしく判断できるためには、自分自身の判断力をそなえていなければならぬ。

もっとも、トロッツキーは、このレーニンの著作のポーランド版に寄せて、次のような序文を書いたそうです。

レーニンは、形式的な「左翼主義」、見せかけの急進主義と美辞麗句を断罪し、そうすることで、階級的政策の真の革命的非妥協性をいっそう鋭く擁護した。しかし、彼は――残念ながら!――、さまざまな類の日和見主義者がこの著作を悪用するのを防ぐ十分な予防策を講じなかった。日和見主義者たちは、無原則的な妥協を擁護する目的で、12年前に刊行されたこの著作を何百回、何千回となく引用した。

トロツキーの指摘も言い得て妙です(と、一応、逃げを打っておきます)。

結局、レーニンの言うとおり、一つ一つの具体的な問題について、個々の局面で正しい判断をするしかないわけですね。

原則論を振り回し具体的な歴史的・政治的条件を無視して、「一切の妥協は、けしからん」と述べる人々に、私は最近、法曹人口増員問題や裁判員裁判をテーマにした弁護士会や自由法曹団の内の論争の場で、目に触れ、耳にする機会が多くなりました。

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