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2008年2月17日 (日)

2/17朝日新聞社説:弁護士増員 抵抗するのは身勝手だ

朝日新聞の2/17社説http://www.asahi.com/paper/editorial.html

弁護士が就職難というのも、額面通りには受け取れない。弁護士白書によると、弁護士の年間所得は平均1600万円らしい。弁護士が増えれば、割のいい仕事にあぶれる人が出る。だから、競争相手を増やしたくないというのだろうが、それは身勝手というほかない。

第一、弁護士過疎の問題は解消したのか。(・・・略・・・・)

弁護士をあまり増やすな、というのなら、こうした問題を解決してからにしてもらいたい。並はずれた高収入は望めなくとも、弁護士のやるべき仕事は全国津々浦々にたくさんあるのだ。

 しかし,そろいもそろって,日経,毎日,東京,朝日まで,法曹人口3千人見直しに対して,激しい弁護士(会)批判を行っています。以前,規制改革派と,市民派の増員論と分析しました。

http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2008/02/post_f3b3.html

 日経は規制改革派/毎日,東京,朝日の各紙は市民派なのでしょう。

 結局,弁護士(会)がマスコミに反感を持たれているということなのでしょうね。マスコミがなぜ,これほどまでに反感を持っているのでしょうか。

 一般の人(普通の人)が持っている弁護士に対する反感や不信の反映なのではないでしょうか。記者の取材を通じての普通の市民の意識の反映なのだと思います。例えば,市民(普通の人)は,解雇事件を「仮処分や労働審判手続をするのに大サービスで着手金10万円です。」と聞くと,「そんなに高いのです。」かという感覚です。朝日新聞の記者も「高いですねえ」とおっしゃていました。(まあ,解雇された労働者にとっては,高いって言えば高いよなあ,でもね・・・。愚痴になるからヤメときます)。弁護士が増えれば,せいぜい2,3万円でやってくれると考えているのだと思います(小倉先生のように時給換算すると時給1000円くらいか?)。経営側の弁護士なら着手金100万円は下らないでしょうになあ。)。お金を用意できない労働者が労働事件を弁護士に依頼できるようになるためには,法律扶助を増額してもらうしかないでしょうね。(労組に頼めば即解決してもらえるというのが理想ですが,現状では困難でしょう。)

 あるいは,逆に,社説氏の多くは,弁護士に対する「麗しき誤解」があるのかもしれませんね。社会的弱者のためには,金もとらずに持ち出しで,一生懸命弁護するというイメージがあるのではないでしょうか。(医師ならアカヒゲ幻想,教師ならキンパチ幻想)。

 私の事務所に「社会的弱者のためなら,俺は年収400万円で良い。だからノルマを下げて欲しい。稼げって言うな。」と言っていた元気の良い若手弁護士(青年のユニオンとともに闘う純粋な青年弁護士です!)がいます。でも,その話を聞いて,うちの事務局は真っ青になりました。「私らの給料とボーナスはどうなるのかしら・・・・」って。(で,彼は心を入れ替えて今は人一倍,稼いでいます)

 司法改革反対派の弁護士ブログでは,一斉に新聞社説には反発しています。

 私も,弁護士の数を増やしたらからといって,市民派の「希望」(国選弁護に質の高い弁護士が就任する。貧困層の相談を親身に引き受ける弁護士が多くなる等々)は実現しないことは火を見るよりも明らかだと思っています。

 同じ質の仕事をしても,依頼者がお金持ちならしっかり弁護士費用を払って貰えますけど,依頼者が貧乏なら,勝利しない限り,元もとれないというのが弁護士業の宿命なのです(ここがサラリーマンとの決定的な差ですな)。

 ですから,「経済合理性」を無視した弁護士でないかぎり,苦労だけ多く見返りが少ない事件などはやろうとしないのです。弁護士の数を増やせば増やすほど,市場原理で行動する「合理的」弁護士が増えます。したがって,そのような経済的合理主義を追求する弁護士は「過疎地」には絶対行きませんし,よほどの変わり者(旧司法試験時代は,卒業してまで司法試験を受験する奴自体が変わり者だったのです)でない限り人権活動はしません。

 市民派が求める弁護士は,法律家としての理想や生き甲斐を求める中にしか,いないのです。そのような法律家は,若手の中にこそ多くいるのだと思います。また,そのような若手を育てる必要があるのでしょう。

 ところが,ロースクールの最大の欠点はお金がかかるということです。司法修習の給与制も廃止(今の時代であれば貧乏人出身の私は弁護士にはなれなかったでしょうね)。これからは,弁護士になったとき1000万円以上の借金を抱えることになります。(お金持ちのお坊ちゃん,お嬢ちゃんは別)。普通の労働者階級出身の子弟が弁護士になれても,借金を返すために「背に腹は代えられない」という選択をするしかありません

 これからの若い弁護士は金にならない事件はできなくなります。法律家としての理想よりも,自分の借金を返すことを優先せざるをえない(まあ貧乏人出身は弁護士なんかなるのではなく,任官した方が良いぞな。)。ですから,若手弁護士の就職難を放置したら,そのツケは市民にかかってくるのです。

  弁護士の数を抑制しないのであれば,国選報酬を増額したり,法律扶助予算を抜本的に増額し,また,法テラスの給料を増額し任期を延長するという方策が必要となります。

 どっちもなしという政策はないですよ。マスコミの皆さん。そこを考えて欲しい。

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コメント

弁護士増員反対の、弁護士会のかけ声は、特権階級の既得権維持として、一般のマスコミや市民の支持は受けられないと思います。増員路線は変わらないでしょう(最高裁や法務省が反対しても)。

全弁護士が一丸になって反対しても、吹けば飛ぶような存在ですし、市民は誰も支持してくれrないと思います。(弁護士ごときが、大声で増員反対を言えば阻止できるという考え自身が理解できません。客観的に見れば既得権維持の業界利益としか見えないでしょう。一般市民はもっと辛い目にあいっているぜ、と揶揄されるだけでしょう。またまた、そもそも弁護士増員にならなければそもそも司法試験に合格できない人たちも多いわけですし。自分が合格した後は、増員反対かよっ!てね。)

私が、依頼者に弁護士が増えたほうが良いかと聞くと、皆さん増えたほうが良いと言います。質の問題については、弁護士の経歴や実績や専門を解るようにしてくれないと、少ない現状だって質は問題ではないかと指摘されます。

ソフトランディングをめざすしかないでしょう。増員のスピードを一旦、落としつつ、増員を受け入れる仕組みをつくることが必要でしょうね。扶助予算の抜本的増額、法テラスのスタッフ弁護士の勤務条件の改善(スタッフ弁護士で労働組合を作ったらどうでしょうかね。スタッフ弁護士ユニオンとか・・・。

投稿: 通りすがり | 2008年3月 1日 (土) 00時03分

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