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2008年2月13日 (水)

予想された反応/弁護士増員問題

朝日新聞が,2/3に「冤罪を防ぐ」ためには,弁護士増員が必要であるとの社説を掲載し,法曹人口3000人見直しをする日弁連会長候補者らの発言に批判的なスタンスを表明していました。「制改革派」と「市民派」の弁護士過少批判があるのです。
    ↓
http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2008/02/post_f3b3.html

これに続いて,日経新聞も,毎日新聞,なんと東京新聞でさえ(私も「東京新聞 お前もかっ?!」て気分ですが)社説で,市民の需要や国選弁護制度の充実には弁護士人口の増員が必要であるとの社説を掲載しています。当然に予想された反応です。

○日経新聞 <2/9社説 「弁護士は多すぎ」は本当か)>

この司法過疎の解消などを目指し一昨年秋に業務を始めた「法テラス」も弁護士の人手が足りない。来年までに300人必要と見込む常勤弁護士はまだ90人しかいないし、お金に余裕がない人の訴訟を手助けする民事法律扶助業務を担当するのは全弁護士の4割未満だ。

また、刑事事件で資力に欠ける人などに付ける国選弁護を担当するのは、全弁護士の半分強にすぎない。

手間がかかる割に報酬が低いところが共通する。「仕事にあぶれる」は有り体に言えば「もうかる仕事にあぶれる」なのか。

 「大幅増員すれば弁護士間の生存競争がひどくなり、人権の擁護・社会正義の実現を目指す仕事には手が回らなくなる」。増員反対派の、こんな言い分にうなずき、法曹は増やさないほうがよいと判断する国民はどれほどいるだろう。

○毎日新聞 <2/9社説:「弁護士会 司法改革を後退させぬように」>

 裁判員制度、被疑者弁護、刑事裁判での被害者の代理人、少年審判の国選付添人など新しい制度の導入によって、弁護士の出番が増えているのに、増員を抑制するのでは筋が通らない。既得権のパイを小さくしたくないとの発想に根差しているのなら、世論の納得は得られまい。

○東京新聞<2/13社説:「日弁連新会長 司法改革後退は許されない」>

 過剰論は、要するに都会で恵まれた生活ができる仕事が減った、ということではないだろうか。

 司法書士などの試験と同じく司法試験も法曹資格を得る試験にすぎず“生活保障試験”なぞではない。

 保持する資格を職業に生かせない例はいくらでもある。「弁護士資格を得たら、必ず弁護士として暮らしていけるよう参入規制すべきだ」とも聞こえる増員反対論に共感する一般国民は少ないだろう。

 「生存競争が激化し、人権擁護に目が届かなくなる」-こんな声も聞こえるが、余裕があるからするのでは人権活動と呼ぶには値しない。

市民派からの弁護士(会)批判です。マスコミは,「弁護士の数が少ないから,国選事件や法律扶助事件を担当する弁護士が増えない」と批判しています。

■不毛な論争でなく事実に基づく建設的な議論を

これに対して,「自由競争を弁護士業界に持ち込むものだ」,「新聞協会は再販制度反対・規制緩和反対と言っているのに二枚舌だ」とかと感情的な反論だけでは不毛な論争となってしまいます。著名な司法改革反対派の弁護士ブログでは一斉に反発しています。(でもでも,多勢に無勢。敵/味方を間違い得ないようにね。周りから見れば,所詮,弁護士なんか,ただのプチブルなんだから・・・)。

弁護士過疎の地域があり,国選弁護体制が全国的に見て十分な対応が出来ていないことは,疑いようのない事実でしょう。

問題は,弁護士を3000人に増員しないと解決できないことなのか,また,3000人に増員すれば解決するのか,を事実に基づいて検討するしかないと思います。

■市民のニーズに応えるための積極策が必要

多くの弁護士が指摘するように,3000人増員しても,上記問題点は解決しないでしょう。競争原理を持ち込んでも公共的課題(弁護士偏在や国選弁護の充実)が解決することはありえないのですから。(医療や教育,労働分野で既に証明済み。)

多くの弁護士が指摘するとおり,国選弁護料及び民事扶助予算等を増額することが必要不可欠です。「もうかる事件にしろ」ということはありません。その「事件に労力と時間を投入できるような報酬で仕事をする」というのは当然のことです。そのバランスが成り立たないとその仕事をする人がいなくなります。弁護士が何千人に増えようと,そのような事件を多くの弁護士が継続的に担当することは不可能です(理想に燃えた弁護士は圧倒的に少数派ですし,若い頃そうでも,年取ればそうはいかないのですがな。生活もあるし。弁護士だからって,理想に生きろっと言うのも無理ですね。所詮,「東京新聞」の社説の言うとおりただの職業資格であって,聖職でないのですから!)。

地方の弁護士過疎問題は,各地の弁護士が,新人弁護士を受け入れるように一層の努力することも必要でしょう。しかし,それには限界があることも事実です。

法テラスが若い弁護士のやる気を受け入れるものに充実していくことが必要です。また,任期の延長や法テラスのキャリアを生かして各地で独立できるような事件受任システムをつくること等の工夫も必要でしょう。

弁護士会の公設事務所の展開を充実することが必要なのでしょう。このような対策があって,こそ新聞各紙が批判する状況が改善されると思います。

弁護士側としては,このような具体的な提言をしてマスコミの理解を得るように努力すべきだと思います。増員反対を決議した一部の弁護士会や弁護士連合会に,「市民のニーズにどう応えるのか」という観点が薄いことが気にかかります。

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コメント

公設事務所が増えればその分民間事務所に頼む人が減るから結局同じじゃないですか?

アメリカのように大々的に広告をする事務所が増えればこれまでどこに相談していいかわからなかった人がたくさん来てニーズにこたえられるかもしれませんが。

まだまだ市民には、“どこに”“何を専門にする”“どういう人柄の弁護士がいるのか”ということがわからないのが最大の問題ですよ。

今のところ過払いの広告ばかりなのは残念です。テレビやラジオで他の分野の広告も流れていれば助かる人はたくさんいると思うんですけどね。

投稿: さみだれ | 2009年11月29日 (日) 01時24分

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