労働者派遣法の「見直し」の見直し
■労働者派遣制度の検討状況(中間報告)
平成19年12月25日の労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会の「労働者派遣制度の検討状況(中間報告)(案)」を遅ればせながら読みました。
「労使それぞれ根本的な意見の相違があり,隔たりが大きい状況にある」
「このような意見の相違は,労働者派遣が原則自由であるべきと考えるのか,本来は限定的なものであると考えるのかという基本的考え方の違いに起因するものであり,労働者派遣制度の根本的な検討を行うことなく,個別の制度の仕組みの議論を続けても,有意義な結論に到達することは困難であると考える。」
「現時点では,登録型派遣の考え方等労働者派遣制度の在り方の根幹に関わる問題については,厚生労働省に学識者からなる研究会を設け」
■労働者派遣法の「規制緩和」の中断
要するに,中断宣言です。
とにもかくにも,労働者派遣の「全面自由化」を狙った規制改革派の目論みは,現時点では<頓挫した>ということですな!
とはいえ,経営側は「労働市場の改革」を生き残りをかけた<悲願>だと思っているでしょうから,態勢を整えるため臥薪嘗胆(総選挙もあるし),きっと,これからは,懐柔策と迂回戦術に切り替えるのでしょう。
■労働側の方針-登録型派遣の廃止
連合の方針は,「登録型は雇用の不安定さ,処遇の低さ,日雇派遣の温床となる等問題が多いとして,原則として禁止する等,抜本的に見直すべき。少なくとも,当面は専門26業務のみに絞るなど,非26業務は禁止する方向で検討すべき」です。全労連も,同様の意見でしょう。
これに対して,日本経団連をはじめとして経営側は,「登録型派遣の廃止は非現実的だ」と強く主張しています。
でも,2006年の総務省統計局の労働力調査では,派遣労働者は121万人です。正規労働者が2240万人,非正規労働者全体が1663万人。派遣労働者は,非正規労働者の7%です。ちなみに,契約社員・嘱託社員は421万人です。派遣が廃止されても,契約社員や嘱託になれば十分に吸収できると思います。
ですから,連合のように当面,登録型は専門26業務に絞ることは十分に可能ではないでしょうか。
■日雇派遣=バイト紹介事業
日雇派遣だって,それでしか働けない人たちがいると主張する人もいます。
でもね…。 私の大学生時代,五反田にあった某大手印刷会社の夜勤のバイトがありました。一晩夜勤で働くと,翌朝およそ9000円の現金が貰えました。あのバイトはお金がなくなったときに助かりました。学生だけでなく,30,40代位の人たちも沢山が働きに来ていたのを憶えています。日雇派遣なんて,昔はみんなバイトでOKでした。
今だと,紹介事業を携帯メールで募集すれば良いだけでしょう。
しかし,有料職業紹介だと,一回紹介料をとるだけで,企業はもうからない。日雇派遣だと派遣料でピンハネして,おまけにデータ装備費とか管理費の天引きでピンハネできる(二度美味しい)。要するに,儲かるから,バイトの紹介業でなく,日雇派遣となる。
日雇派遣は,要するに紹介事業なんでしょうね。本来,労働者派遣業なら派遣元会社が労働者を「教育・訓練」して,労働者を派遣(供給)するものです。でも,日雇派遣なんてそんなことは予定していないから,これは本来,労働者派遣ではない形態でしょう。
日雇派遣を禁止したって,労働者はちっとも困らない(携帯メールを使った有料バイト紹介事業でも良いのだから)。儲けが少なくなる派遣元会社や,直接雇用による使用者責任を負いたくない受入企業の「うま味」がなくなるだけ。
■労働者派遣法の純化
先日,西谷敏先生が主催される研究会で,法政大学の浜村彰先生の「労働者派遣のこれから」というテーマの講演を聞きました。浜村先生は,「直接無期雇用の原則は生存権に基づく雇用安定の規範的要請だ」と強調されていました。ただ,現段階では,登録型派遣の全面廃止は現実的ではないので,労働者派遣を「例外的な一時的な労働力の受給調整手段」として「純化」させるべきだと提言されていました。
■日弁連 研修
ちなみに,来週1月24日に日弁連特別研修で「非正規雇用を巡る諸問題-パートタイム労働法の改正と非正規雇用に関する労働法の実務的諸問題」を行います。弁護士向けの研修ですが,使用者側代理人と労働者側代理人のディスカッションがあります。
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コメント
派遣会社内部で実際に起こっていることが綴られています
二重派遣問題はこれから更に大きな問題になっていくと思います。利益主導の大手派遣会社も現在は野放し状態です。
全ての業務の監視確認はやっていませんから
http://midnightsayonara.blog42.fc2.com/blog-entry-82.html#comment
投稿: ミッドナイトエクスプレス | 2008年2月25日 (月) 13時36分