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2008年1月28日 (月)

日本マクドナルド店長残業代請求事件判決

日本マクドナルドの店長が「管理監督者」かどうかが争われた事件で、東京地裁は、「原告店長は管理監督者でない」として、残業代と付加金の支払いを会社に命じました。

テレビ東京等の取材を受けました。また、夕刊各紙の一面ですね。

労働基準法第41条(労働時間等に関する規定の適用除外)

この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。

二 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を 取り扱う者

この2号の管理監督者は,経営と一体化し,重要な職務と権限を有しており,厳格な時間管理を受けず,一般の労働者と比較して優遇された地位にある者です。

東京地裁判決(斉藤巌裁判官)は,マクドナルドの店長は店舗の人事管理等に関与しているが,経営と一体化する立場ではなく,時間管理も受け,平均年収約704万円程度では一般の労働者より優遇されているとは言えず,管理監督者には該当しないと判断しました。

労基法の解釈とすれば「常識」ですが、一般社会では、「管理職なら残業代は払わなくてよい」という誤解が蔓延しているということですね。

記者から見せてもらった日本マクドナルド事件の判決文「判決要旨」を次にアップしておきます。

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2008年1月21日 (月)

10万件アクセス

■10万件アクセス

本日高松地裁のエタニットパイプ事件の法廷から帰宅したところ,本ブログのアクセスが10万件を突破したことに気づきました。

以下,この3か月間のアクセス・ページのトップ20です。

1 会社分割・労働契約承継法と「在籍出向」
2 成果主義賃金による降級・減額措置を違法とした東京高裁判決-マッキャンエリクソン事件
3 日本の自殺率-驚愕の国際比較
4 労働契約法案は修正成立
5 労働契約法に関する「ねじれ」
6 民事裁判の証人尋問
7 読書日記「裁判員制度の正体」西野喜一著
8 女性への「ちゃん」づけはハラスメントか?
9 民主党の労働契約法案を読む(1)
10 読書日記 「新しい階級社会 新しい階級闘争」 橋本健二著
11 弁護士大増員時代-ドイツ弁護士事情
12 「世界」5月号 西原博史「『君が代』伴奏拒否訴訟最高裁判決批判」論文を批判する 
13 新「教育の自由」論争 堀尾輝久教授「世界」12月号論文
14 労使双方が反対の労働契約法・・・だったよね,やっぱ。
15 謹賀新年 そして短い回顧
16 労働者性に関する紛争(2)-手間請け大工労災事件、新国立劇場合唱団員地位確認事件
17 マッスルミュージカル争議解決
18 民主党の労働契約法を読む(4)-就業規則と契約変更請求権の関係
19 犯罪報道の在り方
20 日本労働弁護団50周年総会

■アクセス傾向に対する感想

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2008年1月20日 (日)

労働者派遣法の「見直し」の見直し

■労働者派遣制度の検討状況(中間報告)

 平成19年12月25日の労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会の「労働者派遣制度の検討状況(中間報告)(案)」を遅ればせながら読みました。

 「労使それぞれ根本的な意見の相違があり,隔たりが大きい状況にある」

 「このような意見の相違は,労働者派遣が原則自由であるべきと考えるのか,本来は限定的なものであると考えるのかという基本的考え方の違いに起因するものであり,労働者派遣制度の根本的な検討を行うことなく,個別の制度の仕組みの議論を続けても,有意義な結論に到達することは困難であると考える。」

 「現時点では,登録型派遣の考え方等労働者派遣制度の在り方の根幹に関わる問題については,厚生労働省に学識者からなる研究会を設け」

■労働者派遣法の「規制緩和」の中断
 
  要するに,中断宣言です。
 とにもかくにも,労働者派遣の「全面自由化」を狙った規制改革派の目論みは,現時点では<頓挫した>ということですな!

 とはいえ,経営側は「労働市場の改革」を生き残りをかけた<悲願>だと思っているでしょうから,態勢を整えるため臥薪嘗胆(総選挙もあるし),きっと,これからは,懐柔策と迂回戦術に切り替えるのでしょう。

■労働側の方針-登録型派遣の廃止

  連合の方針は,「登録型は雇用の不安定さ,処遇の低さ,日雇派遣の温床となる等問題が多いとして,原則として禁止する等,抜本的に見直すべき。少なくとも,当面は専門26業務のみに絞るなど,非26業務は禁止する方向で検討すべき」です。全労連も,同様の意見でしょう。

 これに対して,日本経団連をはじめとして経営側は,「登録型派遣の廃止は非現実的だ」と強く主張しています。

 でも,2006年の総務省統計局の労働力調査では,派遣労働者は121万人です。正規労働者が2240万人,非正規労働者全体が1663万人。派遣労働者は,非正規労働者の7%です。ちなみに,契約社員・嘱託社員は421万人です。派遣が廃止されても,契約社員や嘱託になれば十分に吸収できると思います。

 ですから,連合のように当面,登録型は専門26業務に絞ることは十分に可能ではないでしょうか。

■日雇派遣=バイト紹介事業

  日雇派遣だって,それでしか働けない人たちがいると主張する人もいます。

 でもね…。 私の大学生時代,五反田にあった某大手印刷会社の夜勤のバイトがありました。一晩夜勤で働くと,翌朝およそ9000円の現金が貰えました。あのバイトはお金がなくなったときに助かりました。学生だけでなく,30,40代位の人たちも沢山が働きに来ていたのを憶えています。日雇派遣なんて,昔はみんなバイトでOKでした。
 今だと,紹介事業を携帯メールで募集すれば良いだけでしょう。

  しかし,有料職業紹介だと,一回紹介料をとるだけで,企業はもうからない。日雇派遣だと派遣料でピンハネして,おまけにデータ装備費とか管理費の天引きでピンハネできる(二度美味しい)。要するに,儲かるから,バイトの紹介業でなく,日雇派遣となる。

 日雇派遣は,要するに紹介事業なんでしょうね。本来,労働者派遣業なら派遣元会社が労働者を「教育・訓練」して,労働者を派遣(供給)するものです。でも,日雇派遣なんてそんなことは予定していないから,これは本来,労働者派遣ではない形態でしょう。

 日雇派遣を禁止したって,労働者はちっとも困らない(携帯メールを使った有料バイト紹介事業でも良いのだから)。儲けが少なくなる派遣元会社や,直接雇用による使用者責任を負いたくない受入企業の「うま味」がなくなるだけ。

■労働者派遣法の純化

 先日,西谷敏先生が主催される研究会で,法政大学の浜村彰先生の「労働者派遣のこれから」というテーマの講演を聞きました。浜村先生は,「直接無期雇用の原則は生存権に基づく雇用安定の規範的要請だ」と強調されていました。ただ,現段階では,登録型派遣の全面廃止は現実的ではないので,労働者派遣を「例外的な一時的な労働力の受給調整手段」として「純化」させるべきだと提言されていました。

■日弁連 研修

 ちなみに,来週1月24日に日弁連特別研修で「非正規雇用を巡る諸問題-パートタイム労働法の改正と非正規雇用に関する労働法の実務的諸問題」を行います。弁護士向けの研修ですが,使用者側代理人と労働者側代理人のディスカッションがあります。

http://www.nichibenren.or.jp/ja/event/attorneys/080124.html

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2008年1月16日 (水)

女性社員と制服

■労働組合からの相談

上場企業で,サービス業種の大企業の労働組合から相談がありました。

その会社は,女性社員のみに制服着用を義務づけており,女性には制服を無償貸与してきました(金融とか商社とかの事務系のお仕事です)。今般,会社は均等法の性差別禁止の趣旨から,「女性社員の制服を廃止する」と提案してきました。

執行部(男性中心)は,会社の提案はもっともだと受け入れようとしたところ,女性組合員から猛反対をくらったとのこと。女性組合員曰く,「制服の無償貸与の廃止は,労働条件の不利益変更だ」と言うのです。

■女性社員への制服着用義務は均等法違反?

女性社員に制服着用を義務づけること自体は,均等法の条文には直接違反はしないでしょうね。(制服の無償貸与を受けられない男性社員にとって均等法6条2号違反かも?)

しかし,着用をしない女性を懲戒処分をしたら,人事権濫用,ないし公序良俗違反として違法となるでしょう。

■女性社員の制服廃止は合理的でしょうね。

女性社員が汚損業務に従事しており,制服が必要な場合は別ですが,そもそも不利益変更に該当するのでしょうかね。そもそも,女性のみに制服を着用を義務づけるのは,均等法の趣旨から考えて適切ではないでしょう。。

(女性にとっては制服があったほうが楽なんだそうですが。・・・?)

したがって,女性のみの制服を義務づけることを廃止するのは,少なくとも合理的と言わざるを得ないのではないでしょうかね。

もっとも,会社の本当の狙いは経費削減でしょうが。

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2008年1月12日 (土)

読書日記「ポスト戦後政治への対抗軸」山口二郎著

「ポスト戦後政治への対抗軸」  山口二郎著 岩波書店
         2007年12月6日発行
        2007年12月31読了

著者は,著名な北海道大学大学院教授です。1993年,岩波の「世界」で,平和基本法構想を提唱した中心メンバーでした。

■社会党の「護憲政治」に対する決算

本書前半では,日本社会党が,護憲政治(憲法9条を争点かすることによって国民の支持を獲得するという政治)の惰性から,1990年代後半の冷戦終結による新しい状況に対応する政策を創ることができず,にもかかわらず,村山富市委員長が首相に就任することで,突然,「護憲」政策を転換させた,この一連の経過に対する「政治学的な決算」の書と言えると思います。

社会党が結局,状況に対応することなく,知的威信を失ったことに対して,当時の党執行部に対してよりも,党内の「原理主義的平和主義者」に対して次のように痛烈に批判しています。

永遠の批判政党という自己規定に満足している人々にとって,政権参加のために党是を変更することは許し難い堕落ということになる。批判政党であるためには,数は問題ではなく,教義の正しさが重要である

この護憲政治の惰性は,いまも続いているのでしょうか。次の1993年の「平和基本法」構想を当時読んだ私としては90%賛成できる内容でした(10%の疑問は安保条約をどうするか)。

1 自衛隊を合憲的な存在として認めること。
2 非核3原則,徴兵制の禁止,海外派兵の禁止などの憲法的規範を明記すること。
3 PKOに対する自衛隊および文民組織の参加について制度を整備し,より非攻撃的な方法で国際平和に貢献することを宣言する。

今後,現在の状況に対応した「平和基本法」ヴァージョン2が復活することが求められていると思います。(もし,将来,自民党改憲草案のような改正案の国民投票が実施された場合に,改憲反対だけでは足りず,対抗する政策・構想が求められることになると思います。)

■ポスト戦後政治の対抗軸

本書後半では,著者は,政治学は貧困問題を正面から取り組んでこなかったと反省します。そして,平等と貧困についての社会状況が変化したことを正面から取り上げます。

体系的な福祉国家が打ち出されれば,日本において「新自由主義」対「社会民主主義」という二大政党システムができるであろう。

(もっとも,著者はこの本のどこかで,社会民主主義というと,この国では様々に誤解されるので,このことばは政治的シンボルとしては良くない旨を書いていました。)

■あとがきについて

著者は,北大の宮本太郎氏らとの共同研究で,40代半ばの研究者としての「中年の危機」を乗りこえたと書いています。著者は1958年生まれで私と同世代です。宮本氏も私と同世代です(大学が同学年だったようです)。私と同世代の学者らが,どんどん思い切ったことを書く時代になったんだなあ,と感慨深いです。        

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2008年1月 2日 (水)

謹賀新年 そして短い回顧

2007年は,ワーキングプアと格差社会,そして貧困が社会的に注目されるようになりました。

一過性のマスコミのブームでなく,具体的な政策変更と制度改革を実現する流れになるのか。総選挙がある2008年が大きな節目になるでしょう。

今年も,最低週1回のブログ更新を目標にしています。本年もよろしくお願いします。

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