誤解を解く 【中核】ではありません
■労働法律旬報1661号(2007.12.10号)の巻頭言での誤解
労働法律旬報の「労働と法-私の論点」に,中央大学教授の角田邦重先生が「労働契約法~ないよりましか,ないほうがましか?」と題する論考を掲載されています。
その中で,「日本労働弁護団で活動の中核を担っている水口洋介弁護士」として,このブログを紹介していただいています。(労弁の皆さんから,「おっと,そいつは違うぞ」という声が多くあがっていることでしょう。)
ブログをご紹介いただくのはありがたいのですが,私が「日本労働弁護団で活動の中核を担っている」というのは,角田先生の誤解です。(角田先生は私の母校の労働法の教授ですから,私の方は講演やお話しをお聞きしたり,論文を拝読させていただいています。でも,残念ながら,直接,お話しをさせていただく機会に恵まれていません。)
このブログに掲載している意見は,全くの個人的意見です。確かに,私は労働弁護団の全国常任幹事ですけど,最近は,とんと幹事会や事務局会議に参加できていません(スミマセン)。この問題については,労働弁護団の中でも私の意見と異なる人も多いと思います。自分の所属事務所(東京法律事務所)の意見でもありません。どちらかというと,東京法律事務所の多数派の意見とは対立するでしょう(私の意見の方が正しいと思っていますが)。
労働弁護団が労働契約法を,どう評価するかは,全国幹事会での議論,会員同士の意見交換を経て,確定することになります。たぶん,いま検討が進んでいると思います。幹事長の小島周一弁護士がとりまとめをされるでしょう。
なお,「ないよりもましか,ないほうがましか」という問いかけをされたのは,民主党の細川律夫議員の政策担当秘書の石原憲治さんでした。とても判りやすい表現なので,借用させてもらいました。
■民主党の労働契約法案の撤回について
また,角田先生は次のように述べていらっしゃいます。
(民主党が自らの労働契約法案を)あっさりと引っ込めてしまったのは,それを具体化する方法について十分な議論の用意がなかったか,使える法理であれば良いとする現実主義的な労働弁護団の判断があったからではないか。
民主党案の撤回は,民主党の独自の判断なのでしょうね。
ただ,はっきりしているのは,衆議院が自公が多数派。参議院は野党が多数派。そうである以上,民主党案を撤回して,自公と民主党が修正合意しないかぎり,政府案も民主党案も含めて「労働契約法」なるものは,まったく影も形も無くなるということです。(両方つっぱれば労働契約法自体が消える。)。そうなれば,判例法理が現実の実務を支配し,現実の雇用現場の現状は何も変わらないということになる。
そこで,「ないよりもましか,ないほうがましか」という問いかけの意味が出てきます。民主党は,「ないよりもまし」との<政治決断>をしたということだと思います。
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