マッスルミュージカル争議解決
■マッスル・ミュージカル争議
ミュージカル劇団員がラスベガス公演(1年間)を辞退したところギャラをおよそ半分に減額され,これを撤回させるために労組を結成したところ,使用者から労組脱退のプレッシャーを受けて多数の組合員が脱退させられた。しかも,委員長,副委員長,書記長はステージへの出演拒否するという扱いを受けた。また,出演中に怪我をした劇団員の労働者性を否定し,労災保険の適用も拒否したという事案でした。
http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2007/07/post_cdaf.html
■争議解決-都労委での和解
今年4月23日の労組結成から,12月4日の解決まで,7か月のスピード解決でした。
http://www.ei-en.net/freeuni/m_071204_kaiketsu.html
12月4日東京都労働委員会立ち会いのもと、㈱デジタルナイン(代表:樋口 潮)と組合との間で和解が成立しました。
これをもって、一方的な賃金減額、5月9日以降の組合員3名に対する就労排除、昨年5月発生の労働災害などを争点としたマッスルミュージカルの労働争議は全面的に解決したことになります。およそ8ヶ月におよぶ本争議への篤いご支援・ご声援、誠にありがとうございました。
残念ながら組合員3名(磯前・深澤・Show)の職場復帰は叶いませんでしたが、不当労働行為と一方的な賃金減額に対する会社の陳謝、ラスベガス公演参加者への現地滞在手当の適切な支給、労働安全衛生の改善など、マッスルミュージカルの職場に働くルールを確立させる画期的な協定を勝ち取ることができたものと考えます。
和解調印にあたって、公益委員の荒木氏(東大法学部教授)は「残念ながら3名の組合員の方は本日をもって会社との契約が終了することになるが、本和解協定は今後も残される方々について規定がなされるという異例のもの。組合員の心意気を感じるところ」と感想を述べました。
■労働者性について
組合員は,ギャラ(報酬)の減額について,東京地裁に賃金仮払い仮処分を申し立てていました(生活ができないほど減額されましたから)。裁判所は,労働者性を認め,賃金支払いの決定を出す寸前までいったのですが,決定の2,3日前に(それまで和解を拒否していたにもかかわらず)会社が差額分を全額支払ってきました。労働契約上の労働者性を認める裁判所の仮処分決定が出たはずだったのですが,これは少し残念でした。
労災については,労基署に申請しており,現在,中央労基署が調査中です。都労委に申し立てた不当労働行為救済で全面解決にいたったということです。
■復職しない解決について
マッスルミュージカル争議は,残念ながら,労組員が劇団に復職しない解決でした。しかし,これは,労組員の意思です。彼らは,彼らの意思と能力を生かして,他の場所で活躍してくれるにちがいありません。争議が解決しても,映演フリーユニオンのメンバーであり続けると言っています。
労働争議の解決は復職させるかどうかが重要です。それは今後も,変わらないとおもいます。労組に加盟して,たたかうと,辞めるしかないというのでは団結権の保障とはいえません。
他方で,有期契約や間接雇用,非正規雇用の層が増大しているなか,復職しない解決も,本人の意思に合致するかぎり,一つの大きな選択枝として位置づけて良いと思います。
会社が変わっても,ユニオンのメンバーであり,各業種や各地域の労働条件の向上を目指す活動が続けることが意味があるのだと思います。
少数であっても非正規労働者のユニオンがたたかい,その企業の残業代を支払わせる約束をさせる。ここが大切なのでしょう。都労委の荒木尚志公益委員の和解にあたってのコメントはこの点を指摘するものなのでしょう。
木下武男教授の言う,労働市場規制型労働運動の一つのあり方でもあると思います。
映演フリーユニオン,また,マッスルの元メンバーが今後,いっそう活躍することを応援したいと思います。
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コメント
>>労災については,労基署に申請しており,現在,中央労基署が調査中です。
山梨青年ユニオンです。トラックバックさせていただきました。ところで,労組結成から7ヶ月のスピード解決とのことですが,労災申請はいつころ行ったのでしょうか。時間的にどの程度かかっているのか気になりましてお伺いする次第です。
投稿: みのりん | 2007年12月 9日 (日) 09時19分
6月14日に劇場のある渋谷労基署に労災申請しました。ところが、劇場は事業場認定されずに、本社を管轄する中央労基署にまわされました。これで2か月くらいロスをしています。
年内に結論を出すように組合は要請しているところです。
投稿: 水口 | 2007年12月10日 (月) 09時15分