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2007年10月24日 (水)

民主党の労働契約法を読む(4)-就業規則と契約変更請求権の関係

■民主党の労働契約法案

日本弁護士連合会労働法制委員会が10月23日にありました。民主党の細田律夫衆議院議員の政策担当秘書石原憲治氏を招いて,労働契約法案の解説をしていただきました。

政府案の評価,労働契約法案の策定の背景,民主党の参議院での過半数獲得した下での国会の情勢と今後の見通しを含めて解説していただき,大変に面白い内容でした。

■契約変更請求権と就業規則との関係

以前の私のブログhttp://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2007/10/post_fdca.htmlで指摘したように,民主党案25条で判例の就業規則変更法理を認めています。

(就業規則の作成又は変更と労働契約との関係)
第25条 第5条第1項に規定する使用者が,労働基準法第89条の規定により就業規則を新たに作成し,又は変更した場合(同条の規定により行政官庁に届けられ,かつ,同法第90条の規定により意見を聞いた場合に限る。)において,次のいずれにも該当するときは,当該作成され,又は変更された就業規則に基づいて労働契約の内容を変更することについて,使用者と労働者が合意したものと推定する
1 使用者が当該就業規則の作成又は変更について,あらかじめ労働者代表と誠実に協議を行ったこと
2 当該作成又は変更の必要性があり,かつ,当該作成され,又は変更された労働条件の内容が合理的なものであること。

同時に,民主党案第24条は,労働契約変更請求権を認めています。

(労働契約変更請求権)
第24条 当事者の一方が,労働契約の内容を維持することが困難な事情が生じたため相手方に労働契約の変更を申し込んだ場合において,当事者間の協議が調わないときは,当該変更を申し込んだ者は,別に法律で定めるところにより,当該労働契約の変更を裁判所に請求することができる。

この点に関して,私は,「労働契約変更請求権を認める以上,就業規則の変更による労働条件変更法理を導入する必要はないのではないか。同意しない場合には,24条の労働契約変更請求権を行使すれば良いのだから。」と質問しました。

これに対して,石原氏は次のように解説されました。

25条では,あくまで「合意の推定」であり,労働者が合意していないことを反証すれば,就業規則の変更により労働条件を変更することはできない。この場合には,24条の労働契約変更を裁判所に請求することになる,と考えている。

つまり,民主党案25条の「合意の推定」は,事実上の推定であり,労働者が合意していないことを反証すれば,不同意の労働者を拘束することはできないと言うのです。

この点は,判例の就業規則変更法理とは異なるということです(判例法理の否定です)。なお,民主党案の24条の「別に法律に定めるところ」とは,労働審判法のことを意味するということだそうです。

■民主党法案24条と25条の関係について

ただ,25条では「変更の必要性と合理性」と,「労働者代表との誠実協議」という要件を定めながら,同意しない労働者を拘束することができないというのは,ちょっと座りが悪いですね。この点は「連合試案」の方が首尾一貫しているように思えます。

また,24条の労働契約変更請求権の要件は,「労働契約の内容を維持することが困難な事情が生じた」ことです。これは「変更の必要性」を意味する文言でしょう。24条の文言上は,「合理性」の要件は書かれていません。これは,先ず25条の就業規則の変更手続が行われることを前提にしているから,合理性の要件はそこで満たされていると言うことなのでしょうか。

しかし,就業規則の変更手続を行わないで,24条の変更を請求するケースもあるのでしょうから,24条と25条の整合性がとれていないように思います。

■「労働契約の変更ルールは何でも反対」派に対して

就業規則法理を導入するから,また,労働契約変更請求権を認めるから,民主党法案にも反対する,という意見を耳にしています。

しかし,この問題の出発点は,継続的契約関係である労働契約については,労働条件を変更せざるえない場合があるということです。これは不可避的なことでしょう。

「労働者の同意がない限り,契約変更は不可能だ」とする立場に固執した場合には,労働条件を変更しなければならない場合に,どう法的に処理をするのでしょうか。

「同意なき労働契約の変更を認める制度はおかしい」とだけ批判するのでは,現実に生じる労働契約変更をめぐる紛争を適正に解決する法的ルールの提案がない限り,あまりにナイーブな為にする批判だと思います。

(昔なら「サヨク・ショウニビョウ」と言うところですが,今はこの言い回しは「差別表現」で適切ではないのでしょうね。この死語である「サヨク・・・」とは,「具体的な歴史的な諸条件を見ることなく,自己の左翼的願望だけを声高に述べる空理空論」という趣旨でした(By レーニン)。今風の言葉で言えば,「サヨク反対派」とでも言えば良いのでしょうか)。

この立場では,同意がない限り労働契約は変更できないとする以上,変更解約告知(解雇)を認めるしかないでしょうね。

このような変更解約告知(解雇)というハードな手段でなく,もっとソフトな手段として提案されているのが,労働契約変更請求権,あるいは,判例の就業規則変更法理なのだと思いますけど。

■今後の審議の展開

民主党案と政府案との審議がはじまるのでしょう。政府がつっぱっても,民主党がつっぱっても,どちらも両案は成立しません。

政府案が民主党案のより良い部分を取り入れて修正することになるのでしょうか。しかし,そうなれば,日本経団連は絶対反対するでしょうね。紆余曲折が予想されます。無理してヘンな修正をして成立させる必要はないと思います。

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