護憲派でなく,「立憲派」?
10月6日の朝日新聞が,田村理教授(憲法学・専修大学)の「鉄人28号と憲法」と題するエッセイを載せています。鉄人28号(国家権力)を操るリモコン,それが,すなわち「立憲主義」という内容です。
「強大な力をもった鉄人は公権力という力そのもの。そしてその動きを制限・管理する為のリモコンが憲法であり,それを通じて公権力が国民の人権を侵すことの無いようにする,いわばリモコンの管理者が国民自身である」
憲法こそがリモコンである(立憲主義)。しかし,国民自身がその憲法(リモコン)を手放し,暴走させることもできる。
国民自身がリモコンの操作が苦手,それが日本人です。つまり,「立憲主義なき国,日本」 それが問題だ,と言いたいのだと思います。
護憲よりも,立憲主義を強調する「立憲派」ですね。
「日本国憲法典」をただひたすらまもるのが,護憲派。象徴天皇制も,非武装条項も,なにもかも「日本国憲法典」そのものを護ることを至上命題にする。最終的には,9条プログラム規定説まで後退してでも,9条を維持することを優先する(渡辺治説)。
9条護持派は,自衛隊は違憲であり,即時廃止を主張しなければ論理が一貫しません。9条のもと,自衛隊を容認するということは,その限度で,9条は政治宣言,ないしプログラム規定でしかないということを認めることになります。その解釈は,歴代自民党の誤魔化しの御都合憲法解釈と同一です。それは立憲主義の観点からは許されないということになります。
ずっと復古主義的な改憲派が強かったから,「護憲」と言ったほうがアピールしやすいという政治的な思惑が,戦術的には正しいのは否定しませんが・・・。
立憲民主主義制にとっては,議会が二院制であろうと一院制であろうと,どっちでも良い。大統領制を前提にした議院内閣制だって良いはずです。ドイツのような大統領制をとった上で,議院内閣制にすれば,「象徴天皇制」も廃止できます。フランス的な大統領制と議院内閣制も魅力的です。
これこそが,立憲主義と共和主義の実現です。
また,軍隊を持っていても,専守防衛,海外派兵禁止,核兵器不保持を定めた憲法があってもおかしくないでしょう。だから「専守防衛」を定めた憲法があっても良いわけです。また,必要かつ適切な国連PKO,PKFであれば,それへの参加を宣言する憲法があっても良いのでしょう。
理性的な国民の下で,賢明な政府が組織されれば,そのような憲法が理想的な憲法でしょうね。
もっとも日本人は,鉄人28号をリモコンで操れるほど成熟していないから無理でしょう。まあ,情緒的な護憲運動しか,日本人には受けないのでしょうね。
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