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2007年10月30日 (火)

読書日記 「新しい階級社会 新しい階級闘争」 橋本健二著

「新しい階級社会 新しい階級闘争」 光文社

 2007年10月30日初版第1刷
 2007年10月28日読了

■橋本健二の一般向け本 第2冊目

橋本健二氏の講談社の「階級社会」を前にとりあげました。

http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2006/10/post_bd4c.html

著者の青木書店「階級社会 日本」という本を読んでから,著者の本は,だいたい読んでいます。

今回の著者は一般向けに書かれており,講談社の本を基本にして,もっと読みやすくしているかんじです(個人的には,講談社本のほうが好みですが)。

■今回の新境地

講談社本では,わりと不安定雇用労働者(アンダークラス)には期待せず,新中間層への期待が強調されていました。

(正直言って,いわゆるルンペンプロレタリアートって気がして,どこまで信用できるのかなあ,と感じてしまいます。都合が悪くなったら,火を付けたり,殴ったり,つまりキレるのでは? 「戦争が希望だ」と叫ぶ赤木氏のようなトンデモ君もいるし・・・)

ところが,この光文社本では,著者は,アンダークラスを,労働者階級の下層であると同時に,独自のグループとして位置づけます(126頁,130頁)。

①資本家階級(5.4%)

②新中間階級(19.5%)

③正規雇用の労働者階級(36.7%)

④アンダークラス(22.1%)

⑤旧中間階級(16.3%)

( )内の数字は全就業者に占める割合。

著者は,正規雇用の労働者階級には厳しい目を向けています。政治意識が低く,もっとも不活性な階級とj斬り捨てます。それに対して,アンダークラスは,「新しい階級」の最下層として,労働者階級よりも政治意識が高い傾向にあるとして,将来の政治的覚醒の可能性を見ています。

「団結した労働者階級」は日本では虚構であるとして,結局,日本の労働者階級が自らの政治的代表部(労働者政党)をもつことはなかったと総括しています。

これに比して,アンダークラスが立ち上がりつつあると期待を寄せています。日本の労働者階級は,自覚的なプロレタリアートになれなかった。でも,今度は,アンダークラスが自覚的なプレカリアートになれるのではないかというわけです。

ただし,著者は,それは新中間階級との合流が必要と考えているようです。特に,これからリストラされ,ワーキングプア化される公務員労働者との連帯がありうると考えています。確かに首都圏青年ユニオンは,公共一般が支えていますね。

■新しい階級社会とは

労働者階級は,新中間階級とアンダークラスを生み出し,資本主義社会は上記の5つの階級となったということのようです。

■新しい階級闘争とは

選挙を通じた民主的階級闘争は,日本において,結局,労働者政党が成立せずに終焉を迎える。新しい階級社会は,犯罪や暴発の歪んだ形をとらざるをえない。アンダークラスが立ち上がるときに,新しい階級闘争が行われるということのようです。

■論座の小熊英二との比較

「論座」11月号では,小熊英二氏が,今のプレカリアートの運動の萌芽を,70年代から80年代にあった,反既成政党の新左翼運動,全共闘運動やウーマンリブなどの「新しい社会運動」の延長で別に目新しいものではないとつきはなしています。プレカリアート運動は,局地戦を地道にやっていくしかないし,それでいいじゃないか,ってね。まあ,あの運動が所詮はそんな程度のものでしたからね。

そして,よりあり得べき未来は,若年失業と貧困が増えて,治安の悪化と麻薬の流行が起きることで,それを防ぐためには若者をプレカリアートの労組員にしたほうが,政府にとっても警察にとっても好都合だから,政府はプレカリに補助金を出したほうが良いと書いています。

確かにね。リアルに見れば,小熊英二氏の言うことがもっともかもしれませんね。正規雇用の労働者階級が政治的には滅び行く中で,その息子・娘たちのアンダー・クラスが,局面を大きく変えると期待するほうが非現実的なのでしょうか。

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