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2007年10月30日 (火)

読書日記 「新しい階級社会 新しい階級闘争」 橋本健二著

「新しい階級社会 新しい階級闘争」 光文社

 2007年10月30日初版第1刷
 2007年10月28日読了

■橋本健二の一般向け本 第2冊目

橋本健二氏の講談社の「階級社会」を前にとりあげました。

http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2006/10/post_bd4c.html

著者の青木書店「階級社会 日本」という本を読んでから,著者の本は,だいたい読んでいます。

今回の著者は一般向けに書かれており,講談社の本を基本にして,もっと読みやすくしているかんじです(個人的には,講談社本のほうが好みですが)。

■今回の新境地

講談社本では,わりと不安定雇用労働者(アンダークラス)には期待せず,新中間層への期待が強調されていました。

(正直言って,いわゆるルンペンプロレタリアートって気がして,どこまで信用できるのかなあ,と感じてしまいます。都合が悪くなったら,火を付けたり,殴ったり,つまりキレるのでは? 「戦争が希望だ」と叫ぶ赤木氏のようなトンデモ君もいるし・・・)

ところが,この光文社本では,著者は,アンダークラスを,労働者階級の下層であると同時に,独自のグループとして位置づけます(126頁,130頁)。

①資本家階級(5.4%)

②新中間階級(19.5%)

③正規雇用の労働者階級(36.7%)

④アンダークラス(22.1%)

⑤旧中間階級(16.3%)

( )内の数字は全就業者に占める割合。

著者は,正規雇用の労働者階級には厳しい目を向けています。政治意識が低く,もっとも不活性な階級とj斬り捨てます。それに対して,アンダークラスは,「新しい階級」の最下層として,労働者階級よりも政治意識が高い傾向にあるとして,将来の政治的覚醒の可能性を見ています。

「団結した労働者階級」は日本では虚構であるとして,結局,日本の労働者階級が自らの政治的代表部(労働者政党)をもつことはなかったと総括しています。

これに比して,アンダークラスが立ち上がりつつあると期待を寄せています。日本の労働者階級は,自覚的なプロレタリアートになれなかった。でも,今度は,アンダークラスが自覚的なプレカリアートになれるのではないかというわけです。

ただし,著者は,それは新中間階級との合流が必要と考えているようです。特に,これからリストラされ,ワーキングプア化される公務員労働者との連帯がありうると考えています。確かに首都圏青年ユニオンは,公共一般が支えていますね。

■新しい階級社会とは

労働者階級は,新中間階級とアンダークラスを生み出し,資本主義社会は上記の5つの階級となったということのようです。

■新しい階級闘争とは

選挙を通じた民主的階級闘争は,日本において,結局,労働者政党が成立せずに終焉を迎える。新しい階級社会は,犯罪や暴発の歪んだ形をとらざるをえない。アンダークラスが立ち上がるときに,新しい階級闘争が行われるということのようです。

■論座の小熊英二との比較

「論座」11月号では,小熊英二氏が,今のプレカリアートの運動の萌芽を,70年代から80年代にあった,反既成政党の新左翼運動,全共闘運動やウーマンリブなどの「新しい社会運動」の延長で別に目新しいものではないとつきはなしています。プレカリアート運動は,局地戦を地道にやっていくしかないし,それでいいじゃないか,ってね。まあ,あの運動が所詮はそんな程度のものでしたからね。

そして,よりあり得べき未来は,若年失業と貧困が増えて,治安の悪化と麻薬の流行が起きることで,それを防ぐためには若者をプレカリアートの労組員にしたほうが,政府にとっても警察にとっても好都合だから,政府はプレカリに補助金を出したほうが良いと書いています。

確かにね。リアルに見れば,小熊英二氏の言うことがもっともかもしれませんね。正規雇用の労働者階級が政治的には滅び行く中で,その息子・娘たちのアンダー・クラスが,局面を大きく変えると期待するほうが非現実的なのでしょうか。

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2007年10月28日 (日)

読書日記「サウスバウンド」 奥田英朗著

昨日の帰りと,今日の新宿までの往復で,上下巻を読みました。結構,吹き出しそうになって,楽しめました。

■小説はオモロイ

父は,内ゲバをやっていた元過激派。その父は,小学生の息子から見たら,ヒモのようないい加減な父親。あらすじは,サヨクをやめて,アナーキストになり,元活動家の女のヒモとなった元過激派のフリーライターが食いつめて,琉球王国に征服された八重山に渡って,環境派になって,開発業者とたたかうというお話し(サヨクからエコって,この20年のはやり)

作者の奥田英朗は1959年生まれ。学生運動は知らない世代だから,左翼や過激派の描写は結構,いい加減かも。

でも,元活動家の女のヒモになっている44歳のオッサン元過激派を父とする小学生の視点というの設定は,けっこう面白い。

■映画は?

インターネットで,映画の予告編を見たけど,小説から受けた雰囲気と随分違った感じです。父親役の豊川悦司さんが全然,琉球出身にも見えず,元サヨクの過激派/活動家らしくもない(ミス・キャスト。40歳過ぎのオジサンが鮮やかなオレンジのシャツなど着るかよ!)。鼻濁音で舌っ足らずのアジ演説なども聞いたことがない。

元活動家の母を演じる天海祐希さんもミスキャスト。若すぎる。美人で背が高いから,絶対に活動家にはならないタイプ。この役柄は,田中裕子さんでしょう。

今度,映画を観てはきます。

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2007年10月24日 (水)

民主党の労働契約法を読む(4)-就業規則と契約変更請求権の関係

■民主党の労働契約法案

日本弁護士連合会労働法制委員会が10月23日にありました。民主党の細田律夫衆議院議員の政策担当秘書石原憲治氏を招いて,労働契約法案の解説をしていただきました。

政府案の評価,労働契約法案の策定の背景,民主党の参議院での過半数獲得した下での国会の情勢と今後の見通しを含めて解説していただき,大変に面白い内容でした。

■契約変更請求権と就業規則との関係

以前の私のブログhttp://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2007/10/post_fdca.htmlで指摘したように,民主党案25条で判例の就業規則変更法理を認めています。

(就業規則の作成又は変更と労働契約との関係)
第25条 第5条第1項に規定する使用者が,労働基準法第89条の規定により就業規則を新たに作成し,又は変更した場合(同条の規定により行政官庁に届けられ,かつ,同法第90条の規定により意見を聞いた場合に限る。)において,次のいずれにも該当するときは,当該作成され,又は変更された就業規則に基づいて労働契約の内容を変更することについて,使用者と労働者が合意したものと推定する
1 使用者が当該就業規則の作成又は変更について,あらかじめ労働者代表と誠実に協議を行ったこと
2 当該作成又は変更の必要性があり,かつ,当該作成され,又は変更された労働条件の内容が合理的なものであること。

同時に,民主党案第24条は,労働契約変更請求権を認めています。

(労働契約変更請求権)
第24条 当事者の一方が,労働契約の内容を維持することが困難な事情が生じたため相手方に労働契約の変更を申し込んだ場合において,当事者間の協議が調わないときは,当該変更を申し込んだ者は,別に法律で定めるところにより,当該労働契約の変更を裁判所に請求することができる。

この点に関して,私は,「労働契約変更請求権を認める以上,就業規則の変更による労働条件変更法理を導入する必要はないのではないか。同意しない場合には,24条の労働契約変更請求権を行使すれば良いのだから。」と質問しました。

これに対して,石原氏は次のように解説されました。

25条では,あくまで「合意の推定」であり,労働者が合意していないことを反証すれば,就業規則の変更により労働条件を変更することはできない。この場合には,24条の労働契約変更を裁判所に請求することになる,と考えている。

つまり,民主党案25条の「合意の推定」は,事実上の推定であり,労働者が合意していないことを反証すれば,不同意の労働者を拘束することはできないと言うのです。

この点は,判例の就業規則変更法理とは異なるということです(判例法理の否定です)。なお,民主党案の24条の「別に法律に定めるところ」とは,労働審判法のことを意味するということだそうです。

■民主党法案24条と25条の関係について

ただ,25条では「変更の必要性と合理性」と,「労働者代表との誠実協議」という要件を定めながら,同意しない労働者を拘束することができないというのは,ちょっと座りが悪いですね。この点は「連合試案」の方が首尾一貫しているように思えます。

また,24条の労働契約変更請求権の要件は,「労働契約の内容を維持することが困難な事情が生じた」ことです。これは「変更の必要性」を意味する文言でしょう。24条の文言上は,「合理性」の要件は書かれていません。これは,先ず25条の就業規則の変更手続が行われることを前提にしているから,合理性の要件はそこで満たされていると言うことなのでしょうか。

しかし,就業規則の変更手続を行わないで,24条の変更を請求するケースもあるのでしょうから,24条と25条の整合性がとれていないように思います。

■「労働契約の変更ルールは何でも反対」派に対して

就業規則法理を導入するから,また,労働契約変更請求権を認めるから,民主党法案にも反対する,という意見を耳にしています。

しかし,この問題の出発点は,継続的契約関係である労働契約については,労働条件を変更せざるえない場合があるということです。これは不可避的なことでしょう。

「労働者の同意がない限り,契約変更は不可能だ」とする立場に固執した場合には,労働条件を変更しなければならない場合に,どう法的に処理をするのでしょうか。

「同意なき労働契約の変更を認める制度はおかしい」とだけ批判するのでは,現実に生じる労働契約変更をめぐる紛争を適正に解決する法的ルールの提案がない限り,あまりにナイーブな為にする批判だと思います。

(昔なら「サヨク・ショウニビョウ」と言うところですが,今はこの言い回しは「差別表現」で適切ではないのでしょうね。この死語である「サヨク・・・」とは,「具体的な歴史的な諸条件を見ることなく,自己の左翼的願望だけを声高に述べる空理空論」という趣旨でした(By レーニン)。今風の言葉で言えば,「サヨク反対派」とでも言えば良いのでしょうか)。

この立場では,同意がない限り労働契約は変更できないとする以上,変更解約告知(解雇)を認めるしかないでしょうね。

このような変更解約告知(解雇)というハードな手段でなく,もっとソフトな手段として提案されているのが,労働契約変更請求権,あるいは,判例の就業規則変更法理なのだと思いますけど。

■今後の審議の展開

民主党案と政府案との審議がはじまるのでしょう。政府がつっぱっても,民主党がつっぱっても,どちらも両案は成立しません。

政府案が民主党案のより良い部分を取り入れて修正することになるのでしょうか。しかし,そうなれば,日本経団連は絶対反対するでしょうね。紆余曲折が予想されます。無理してヘンな修正をして成立させる必要はないと思います。

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2007年10月23日 (火)

10月22日 労働政策審議会安全衛生分科会じん肺部会

■トンネルじん肺の「合意書」の実行に向けて

6月18日のトンネルじん肺の合意書に,粉じん障害防止規則の改正が明記されています。厚労省とは,この間,自民党じん肺議連の会長の逢沢議員,萩原議員,北村議員,公明党じん肺プロジェクトチームの座長の漆原議員の立ち会いで,厚労省,国交省等とのラウンドテーブルを2回,開催してきました。

■労働政策審議会安全衛生分科会じん肺部会

厚労大臣は,粉じん則の改正にあたって労政審に諮問を行いました。10月22日にはそのじん肺部会に,原告を代表して原告団団長の船山さんが参考人として意見を陳述しました。

 私は新潟からまいりましたトンネルじん肺根絶原告団長の船山です。このような発言の機会を与えていただき、大変ありがとうございます。

 私は、昭和29年、20歳のときから、トンネル掘さく工事で働き始めました。それから平成2年に離職するまで36年間、全国各地の鉄道や道路、ダム、水路のトンネルをつくってきました。やりがいのある仕事だと誇りに思ってきました。しかし、その結果、昭和62年、54歳のときにじん肺管理3イの続発性気管支炎と認定されました。現在3のロに進行しています。

 じん肺防止のための政策を議論される労働政策審議会じん肺部会の皆さまにお話をさせていただく機会を、やっと設けていただくことができました。私は、この10年にわたるトンネルじん肺訴訟を闘ってきた全ての原告・家族を代表して発言させていただきます。

 私のお願いは、ただひとつ、トンネルじん肺を二度と出さないための対策をきっちり確立していただきたいということです。

東京地裁判決で勝訴した後,原告団・弁護団は,全面解決の要請書を,厚労省に送付して各委員にお渡し下さいと要請しました。ところが,厚労省の事務方は,「その必要はない」と拒否されました。政府との合意書を締結することで,やっと,被災者の要望を述べることができたのです。

これは考えてみれば,おかしな話しです。労政審の他の部会(労働条件分科会など)は,諸団体の文書は各委員に配布してくれていました。安全衛生分科会だけが,極めて頑なな対応でした。

労政審じん肺部会に次の「粉じん則の改正要綱」が諮問されました。
   ↓
「funzinsokukaiseiyoukou.pdf」をダウンロード

■原告団長の要請

上記の粉じん則について船山団長は次のように注文を付けました。

 今回示される省令に、役人が言いのがれのできないような、またゼネコンがきっちり守って実行するような具体的な中身をはっきり書いてほしいということです。

 ① 一つめは、要綱案三項の「ずい道の長さが短いこと等により、空気中の粉じんの濃度の測定が著しく困難である場合を除き」とは具体的に何メートルのことを言うのでしょうか。はっきりしないのでは、本当に守られるのでしょうか。

 ② 二つめは、要綱案四項には「粉じん濃度の測定結果に応じて」と書かれていますが、具体的にはどのような粉じん濃度が出たら対策をとるということになるのでしょうか。

 ③ 三つめは、要綱案五項の「発破による粉じんが適当に薄められた」と改定在りますが、適当に薄められたというのはどういうことなのでしょうか。どうやってそれが判るのでしょうか。

  また、ずり積みや発破の後の散水もさせるようにできないでしょうか。

 このような定めを、さらに具体的に定めるようお願いしたいと思います。

■労働者委員の注文

全港湾の町田委員も次のように述べました。

○町田労働者委員(全港湾)
   粉じん則要綱案は抽象的すぎる。いくつか質もしたい。粉じん測定が困難な例は短いトンネル以外にあるのか。粉じん濃度測定の基準は何か。発破待避時間が具体的でない、目で見て判断するのは無理。喫煙歴を記入するのはおかしい。 労働時間・粉じん作業時間の短縮をはかる必要性があるのではないか。じん肺健康診断の渡り坑夫の健康管理の対策を進めるべき。

■使用者委員の注文

前田建設工業の川嶋委員は次のように注文していました。

○川島使用者委員(前田建設工業)
   ガイドラインは7年経過して定着したという認識。改正には異論はない。ただし、小断面の導水路などでは困難であることも留意してほしい。
   また、費用がかかっているが、積算基準に反映されていない地方もある。厚労省から国交省に積算基準に盛り込むように指導してほしい。

やはり,積算基準は重要なのですね。
次の課題は,作業時間に関して,労基法32条の趣旨を踏まえた積算基準の見直しです。

■厚労省官僚は最後まで意地を張る 

厚労省の説明では,判決で敗訴したことや,合意書はまったく触れません。合意書を委員に配布することすらしていません。
あたかも訴訟とは全く関係がないかのようです。

調査報告書が平成19年7月に報告されたので,それに従い独自に省令改正をはかったかのように体裁がとられています。

敗訴や政府合意書で省令を改正したとは,絶対認めたくないのでしょうね。
でも,それは極めて不自然で,何だか,「裸の王様」って感じですな。

つまり,よっぽど悔しかった,ということでしょうね。

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2007年10月20日 (土)

民主党の労働契約法を読む(3)-約定変更権

■約定変更権

民主党法案には約定変更権が定められています。

(約定変更権の行使の制限)
第23条
 使用者が,労働契約又は労働協約,就業規則その他これらに準ずるもので定めるところにより,労働契約を変更する権利を留保した場合においては,当該権利の行使は,次の各号に掲げる要件のいずれにも該当しているときにのみ,効力を生ずる。
1 当該権利の行使の必要性があること。
2 変更された労働契約の内容が合理的なものであること。
3 使用者が労働者と誠実に協議を行ったこと。

現行法には約定留保権に関する定めは何もありません。ですから,使用者が労働契約を変更する権利を留保することは,契約自由の観点から有効とされています。しかし,他方で,労働基準法2条1項の「労働条件の対等決定の原則」からして無制限には許容されないでしょう。
現行法では,約定留保権は,判例における人事権濫用の法理で規制されることになるでしょう。

民主党法案が,「就業規則」によって労働契約変更権の留保が認めている点は大きな問題です。

第24条で労働契約変更請求権を認める以上,このような約定変更権は原則として禁止しなければならないと思います。

■連合試案では,約定留保権を原則無効

連合試案は,民主党法案と異なり次のように定めていました。

(約定変更権の制限)
第40条
 契約の内容を変更する権限を使用者が留保する約定は,無効とする。ただし,賃金,労働時間その他労咳契約の重要な要素にあたらない契約内容については,右権限を留保することが業務上必要不可欠で,かつ合理的範囲内である場合は,この限りでない。

2 前項ただし書に定める約定変更権を行使する場合には,使用者は,変更権の根拠,変更内容及び変更の必要性を書面で明示のうえ,労働者の了解が得られるよう協議を尽くさなければならない。約定変更権の行使が,留保の趣旨に反し必要性及び合理性を欠く場合並びに前段の手続に反する場合は,無効とする。

連合試案の方がベターですね。

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2007年10月16日 (火)

民主党の労働契約法案を読む(2)-パワハラ防止規定

■パワハラによる自殺-労災認定

東京地裁民事第36部の渡辺弘裁判長の判決です。毎日新聞(http://mainichi.jp/select/jiken/archive/news/2007/10/16/20071016ddm001040084000c.html)が次のように報道しています。

自殺:原因は上司の暴言 「パワハラで労災」初認定--東京地裁

◇「居るだけでみんなが迷惑」「給料泥棒」
製薬会社「日研化学」(現興和創薬、本社・東京)の男性社員(当時35歳)が自殺したのは上司の暴言が原因だとして、妻が国に労災認定を求めた訴訟で、東京地裁は15日、請求を認め、静岡労働基準監督署の労災不認定処分を取り消した。渡辺弘裁判長は「上司の言葉が過重なストレスとなってうつ病になり、自殺した」と判断した。原告代理人によると、パワーハラスメント(地位を利用した嫌がらせ)を原因とした自殺を労災と認めた司法判断は初めて。

■民主党の労働契約法案

民主党の労働契約法案には,パワハラを,法的に使用者の配慮義務に位置づける画期的な定めがあります。

(労働者への就業環境への配慮)
第15条 使用者は,労働者が,当該労働者の就業環境が害される言動を職場において受けることのないように配慮しなければならない。

パワハラなどで就業環境が害されないように配慮する義務を使用者に課したということになります。

性的な言動による就業環境の侵害は,雇用機会均等法11条のセクハラ規定が使用者に必要な措置をとるよう義務づけています。

第11条  事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

しかし,企業の人事管理も,人間関係の配慮など,学校的な配慮(余計なお世話)が求められるようになります。切れる,一線をこえる人間が増えているのでしょうかね。

競争・効率優先の企業社会=現代社会=ストレス社会の帰結なんでしょうね。

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2007年10月14日 (日)

民主党の労働契約法案を読む(1)

今日,民主党の労働契約法案を通読しました。

参議院で,過半数を制した民主党の労働契約法案ですから重みがちがいます。

もはや,自民党も,日経連も,厚労省も,民主党が了承しない限り,労働法制の「規制緩和」を実現できません。他方,民主党の労働分野に対する姿勢は(疑似的?保守的?)「社会民主主義」政策になっています。民主党の労働契約法案は,まさに「社会民主主義」的な法律案です。

労働契約法案をめぐっては,労政審の動きと並行して,連合の検討と対案作成が先行してきました。少しおさらいします。

■連合の検討経過

先ず,2005年10月に連合総研の労働法契約法制研究委員会が「労働契約法試案」を発表しています。毛塚勝利教授が主査です。

http://www.rengo-soken.or.jp/houkoku/itaku/20051011_rodokeiyaku_hosei.htm

労働契約法試案の条文【連合試案】
    ↓
http://www.rengo-soken.or.jp/houkoku/itaku/sian_jobun.pdf

そして,2006年6月15日 連合は中央執行委員会にて,労働契約法案要綱骨子を確認しました。
   ↓
http://www.jtuc-rengo.or.jp/roudou/seido/roudoukeiyaku/houshin/keiyaku_houan.html

■民主党の労働契約法案の策定

民主党は2006年12月7日に「民主党のめざす労働契約法案と労働時間法制(案)」を発表してパブリックコメントを求めています【民主党の方向性案】。
   ↓
http://www.dpj.or.jp/news/files/roudou061206(2).pdf

そして,今回の民主党の労働契約法案にとりまとめました【民主党法案】。
   ↓
http://www.dpj.or.jp/news/dpjnews.cgi?indication=dp&num=11890

■連合試案と民主党法案の特徴

(1)包括的な労働契約法の制定。
(2)有期労働契約を合理的な理由がある場合に限定。
(3)経済的理由による解雇について規制(整理解雇の要件)。
(4)労働条件変更のルール化
(5)パートや有期労働者の均等処遇
(6)準労働者(従属的自営業者)の労働契約法の適用

どれも長年にわたり,労働者・労働組合側が実現を求めてきた内容です。こんな労働契約法が具体化するなんて,ひょうたんからコマみたいですね。

■連合試案と民主党法案の違い

連合試案と民主党法案は基本的には同一と言って良いとは思いますが,子細に見ると,個別的には異なっているところがあります。

やはり「就業規則」を労働契約法の中にどう位置づけるかという点では重要な違いがあります。民主党法案は,パブリックコメントの段階では,連合試案と同じスタンスですが,民主党案になるときに変化しています。

■労働条件変更のルール

(1)連合試案
 連合試案は,39条,40条,41条,42条で基本ルールを定めています。その特徴は,就業規則によって労働条件が決定される法制を抜本的に変更する枠組です。

(労働契約変更請求権)
第41条1項 当事者の一方が契約内容を維持することが困難な事情が生じ  たために,相手方に契約の変更を申し入れた場合において,当事者間の協議が調わないときは,裁判所(労働審判委員会を含む。以下同じ)に契約内容の変更を請求することができる。

(統一的労働条件の変更と労働契約)
第42条 使用者が当該事業場における労働者の全員又は一部に適用を予定する就業規則その他の統一的労働条件を変更する場合には,労働者代表と協議しなければならない。
2 使用者は,前項の協議を経て作成された統一的労働条件に基づき労働者の契約内容の申し入れを行う場合には,4週間を下回らない一定期間内に諾否の回答を求めることができる。右期間内に意思を表明しない者は承諾したものとみなす。承諾を拒否した労働者に対しては,前条に定めるところに従い,契約内容変更請求権を行使することができる

 要するに,連合試案は,就業規則を変更しても,労働者がその変更を承諾しない限り労働契約内容を変更することができない。承諾を拒否した者に対して,契約変更請求権を行使して裁判で決着つけなければならないということです。労政審労働契約法制在り方研究会の「契約変更請求権」と同じ構成です(裁判を起こす側は転換されていますが)。

 民主党の方向性は,この連合試案の同じでした。

○労働契約とは合意のもとに成り立つものであり,使用者が一方的に作成する就業規則によって契約内容を一方的に決定したり変更することを自明のこととする労働契約法であってはならない。

2 労働契約変更請求権
○当事者の一方が,契約内容を維持することが困難な事情が生じたために,相手方に契約の変更を申し入れ,当事者間の協議が調わないときは,労働審判所を含む裁判所に契約内容の変更を請求することができる。

3 統一的労働条件の変更
○使用者が当該事業場における労働者の全員又は一部に適用を予定する就業規則その他の統一的労働条件を変更する場合には,労働者代表と協議しなければならないこと。
○使用者は,労働条件の変更を拒否した労働者に対し,2に定めるところに従い,契約変更請求権を行使することができること

 両者とも,現行の最高裁就業規則変更法理を踏まえた実務を大きく変更する内容です。

(2)民主党法案
 民主党法案は,連合試案40条と同じく,24条で労働契約変更請求権を定めています。ところが,25条は次のように定めます。

(就業規則の作成又は変更と労働契約との関係)
第25条 第5条第1項に規定する使用者が,労働基準法第89条の規定により就業規則を新たに作成し,又は変更した場合(同条の規定により行政官庁に届けられ,かつ,同法第90条の規定により意見を聞いた場合に限る。)において,次のいずれにも該当するときは,当該作成され,又は変更された就業規則に基づいて労働契約の内容を変更することについて,使用者と労働者が合意したものと推定する
1 使用者が当該就業規則の作成又は変更について,あらかじめ労働者代表と誠実に協議を行ったこと
2 当該作成又は変更の必要性があり,かつ,当該作成され,又は変更された労働条件の内容が合理的なものであること。

 要するに,民主党案は,最高裁の就業規則変更の法理を,労働者代表との誠実協議義務を付け加えて法律条文とするものです。

 「合意推定」ですから,労政審労働条件分科会の素案と似たような構造となっています。民主党法案5条を見ても,民主党法案の就業規則のルールは,現行の実務とほぼ同じです(協議義務を追加しているが)。

(3)政府案
ちなみに,政府案は次のとおりです。

(就業規則による労働契約の内容の変更)
第10条 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において,変更後の就業規則を労働者に周知させ,かつ,就業規則の変更が,労働者の受ける不利益の程度,労働条件の変更の必要性,変更後の就業規則の内容の相当性,労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは,労働契約の内容である労働条件は,当該変更後の就業規則の定めるところによるものとする。

■感想

民主党法案は,実際に就業規則が果たしている機能が大きい現状では,実務を大変更する必要はないと政治的に判断したのでしょう。就業規則の位置づけについては政府案と民主党法案は,ほぼ同一ということになります。

う~ん。この当たり,政府を法案修正路線に引き込む「入り口」というか,「呼び水」なのかしら? では,どこが「のりしろ」になるのでしょうかね?

政府の労働契約法案に対して,「就業規則万能法案だ」と反対した人たちは,この民主党法案25条には反対ということになるのでしょうね。政府案と民主党法案はそこは一致している。

政治的動きはともかく,個別論点では,いろいろ触れたいことが沢山あります。民主党法案23条(約定変更権の行使の制限),15条(労働者の就業環境の配慮)→パワハラ配慮義務,38条(有期労働契約の締結事由等),第39条(有期労働契約とパート労働者の差別的取り扱いの禁止),43条(役務提供契約への準用)などなど。

この民主党法案を全体として見れば,高く評価できます。衆議院で徹底的に審議がつくされて,労働契約法の重要性が国民の前に明らかになることを望みます。そして,以前にも書きましたが,来年に実施されるであろう,総選挙で決着をつけてほしいと思います。民主党が政権をとれなくても,参議院での過半数は変わらないから「法案」は修正調整できますからね。

もっとも,自民党が過半数確保すれば,政界再編必至でしょうね。
第二次小泉・新自由主義政権が成立しちゃうかも?

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2007年10月 7日 (日)

護憲派でなく,「立憲派」?

10月6日の朝日新聞が,田村理教授(憲法学・専修大学)の「鉄人28号と憲法」と題するエッセイを載せています。鉄人28号(国家権力)を操るリモコン,それが,すなわち「立憲主義」という内容です。

「強大な力をもった鉄人は公権力という力そのもの。そしてその動きを制限・管理する為のリモコンが憲法であり,それを通じて公権力が国民の人権を侵すことの無いようにする,いわばリモコンの管理者が国民自身である」

憲法こそがリモコンである(立憲主義)。しかし,国民自身がその憲法(リモコン)を手放し,暴走させることもできる。

国民自身がリモコンの操作が苦手,それが日本人です。つまり,「立憲主義なき国,日本」 それが問題だ,と言いたいのだと思います。

護憲よりも,立憲主義を強調する「立憲派」ですね。

「日本国憲法」をただひたすらまもるのが,護憲派。象徴天皇制も,非武装条項も,なにもかも「日本国憲法」そのものを護ることを至上命題にする。最終的には,9条プログラム規定説まで後退してでも,9条を維持することを優先する(渡辺治説)。

9条護持派は,自衛隊は違憲であり,即時廃止を主張しなければ論理が一貫しません。9条のもと,自衛隊を容認するということは,その限度で,9条は政治宣言,ないしプログラム規定でしかないということを認めることになります。その解釈は,歴代自民党の誤魔化しの御都合憲法解釈と同一です。それは立憲主義の観点からは許されないということになります。

ずっと復古主義的な改憲派が強かったから,「護憲」と言ったほうがアピールしやすいという政治的な思惑が,戦術的には正しいのは否定しませんが・・・。

立憲民主主義制にとっては,議会が二院制であろうと一院制であろうと,どっちでも良い。大統領制を前提にした議院内閣制だって良いはずです。ドイツのような大統領制をとった上で,議院内閣制にすれば,「象徴天皇制」も廃止できます。フランス的な大統領制と議院内閣制も魅力的です。

これこそが,立憲主義と共和主義の実現です。

また,軍隊を持っていても,専守防衛,海外派兵禁止,核兵器不保持を定めた憲法があってもおかしくないでしょう。だから「専守防衛」を定めた憲法があっても良いわけです。また,必要かつ適切な国連PKO,PKFであれば,それへの参加を宣言する憲法があっても良いのでしょう。

理性的な国民の下で,賢明な政府が組織されれば,そのような憲法が理想的な憲法でしょうね。

もっとも日本人は,鉄人28号をリモコンで操れるほど成熟していないから無理でしょう。まあ,情緒的な護憲運動しか,日本人には受けないのでしょうね。

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2007年10月 4日 (木)

フランスの弁護士のバカンス(5週間の有給休暇)

青年法律家協会の機関誌「青年法律家」(№439号)に第二東京弁護士会の金塚彩乃さんが,フランスの大統領選挙について投稿されています。その中で,フランスのイソ弁(勤務弁護士)の有給休暇について紹介されています。

イソ弁にも年5週間の有給休暇が法律上保証され,イソ弁を雇うときには,雇用弁護士は法律の規定にしたがった契約書を弁護士会に提出し,認可を受けなければならないとされているし,弁護士会の規則では,相手方の弁護士の休みを取る権利を尊重して,夏の期間は緊急の場合を除き,訴えを提起しないこと,という規定もあったりするくらいである。

さすが,フランス・モデルです。夏の間に訴えを提起しないと弁護士会の規則で決められているとはびっくりしますね。

勤務弁護士も労働者としての権利が保障されているようです。日本の企業法務のイソ弁(アソシエイト)たちが毎日2時,3時まで働いているの比較すると,別世界のようですね。

サルコジ氏は「金持ちになりたいなら,もっと働け」と言って,大統領選に勝利しました。さて,フランスはどう変わるのでしょうか。それとも,変わらないのでしょうか。

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