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2007年8月14日 (火)

現代版「関東軍」 イラク先遣隊 佐藤正久一等陸佐

敗戦記念日に

■駆けつけ警護

TBSのインターネットのニュース「集団的自衛権に関する政府の有識者会合はPKO=国連平和維持活動を行う自衛隊に対して、憲法上できないとしてきた「駆けつけ警護」を認めるべきだ、という意見で一致しました。」と報道しています。
http://news.tbs.co.jp/20070810/newseye/tbs_newseye3630843.html
このニュースの中で、元イラク先遣隊隊長(例のヒゲの隊長)で今回、参議院選挙に当選した佐藤正久参議院議員のインタビュー映像が放映されています。

■佐藤正久(元)一等陸佐曰く

 「自衛隊とオランダ軍が近くの地域で活動していたら、何らかの対応をやらなかったら、自衛隊に対する批判というものは、ものすごく出ると思います」(元イラク先遣隊長 佐藤正久参院議員)

 佐藤氏は、もしオランダ軍が攻撃を受ければ、「情報収集の名目で現場に駆けつけ、あえて巻き込まれる」という状況を作り出すことで、憲法に違反しない形で警護するつもりだったといいます。

 「巻き込まれない限りは正当防衛・緊急避難の状況は作れませんから。目の前で苦しんでいる仲間がいる。普通に考えて手をさしのべるべきだという時は(警護に)行ったと思うんですけどね。その代わり、日本の法律で裁かれるのであれば喜んで裁かれてやろうと」(元イラク先遣隊長 佐藤正久・参院議員)

■昔々、「関東軍」がありました

石原莞爾板垣征四郎(首謀者)が計画し、今田新太郎大尉(実行犯)が柳条湖の南満州鉄道線路を爆破。関東軍はこれを中国軍の破壊工作として軍事行動に出て、日本政府の不拡大方針を無視。「満州国」建国まで突っ走った。

当時においても、石原・板垣の計画は、「統帥権干犯」の重罪であり、陸軍刑法では死刑となるべき罪状です(「昭和史」半藤一利著)。

■佐藤一佐=今田大尉 よみがえった関東軍の亡霊

佐藤正久一等陸佐は、オランダ軍が攻撃を受けたら、情勢視察といってわざと巻き込まれて戦闘に参加すると考えて、それを実行しようと考えていたということです。(「不幸にして、オランダ軍が攻撃を受ける事態が起こらなかったので、おめおめ日本に帰ってきて生き恥をさらし無念である」って思っているでしょうな)。

佐藤一佐の思いが実現したら、イラクの占領抵抗部隊=レジスタンス(=米軍にとってはテロリスト)と、自衛隊が戦闘を行い、日本の憲法9条は吹っ飛び、アホウな日本人は頭に血が上って、「ガンバレ ニッポン チャチャチャ」ってなったでしょう。そして、佐藤一佐は「捨て石」として歴史に今田新太郎大尉と同じく名を残せた。

しかし、佐藤一佐、それって軍紀違反でしょうが。

日本の軍人というのは、未だに「関東軍」的な発想しかできないのですね。こいつらに戦争ができる立派な「法制度」を与えることは、「何とかに刃物」と同じです。

こんなことをアメリカ軍の将官が発言したら、共謀した将官や背後関係を追求され、軍法会議にかけられるのではないでしょうか。

■国会での調査と証人喚問を

是非、国会は佐藤一佐を証人喚問をし、自衛隊の上層部も調査をして欲しいものです。民主党多数派の参議院で是非、実現して欲しい。

それほどの重大発言だと思います。軍人の暴走と放言を許してはなりません。
小池百合子防衛大臣にことの重大性が理解できるでしょうか。無理でしょうな。

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憲法」カテゴリの記事

コメント

 はじめまして!
 駆け込み警護はカンボジアPKOの第2次派遣隊のときも行っています。(文民警察官、ボランテアがクメールルージュに殺されたことを覚えていますか)
 詳しくは杉山隆男著「兵士に聞け」をご覧ください。法が不備のまま派遣され、現場が与えられた任務を全うするための苦肉の策です。
 「イラク戦争の善悪の是非」と「日本国から派遣された復興支援部隊の任務遂行」を同列に論じることはできないと思います。

投稿: ねこまる | 2007年8月16日 (木) 08時03分

日本の警官が襲われた場合に、自衛隊が救助に向かうのは法的に許容されるでしょう。

しかし、佐藤一佐は「他国の軍隊が戦闘を行っているときにあえて巻き込まれて、戦闘に参加するために自衛隊が出動する」と行っているのです。このような部隊の出動は、イラク派兵の趣旨にも、そして自衛隊の「軍隊規律」にも反しています。(法や命令が不備であろうとなかろうと、法と命令に従うのが軍人の本分です。戦前の軍人勅諭もそう言っています。)

オランダ軍と共に、イラク抵抗武装勢力と戦闘を行うべきかどうかは、一現場戦闘指揮官が判断すべきことではありません。

憲法違反以前の問題です。軍隊の規律の問題なのです。軍人が規律を踏み外すことは許されません。

熱意と誠意があれば許されるというようなアホウな、甘い考えで、軍隊を動かして、多くの将兵を無駄な戦闘で殺した旧軍参謀本部の伝統が自衛隊の中にまだ残っておるのでしょうかね。

投稿: 水口 | 2007年8月19日 (日) 06時48分

 上記でねこまるさんがご指摘されていますが、『兵士に聞け』をご覧下さい。

 当時、相当複雑な状況だったことはご存知だと思います。高田晴行警部が殉職後、違法性を問われかねない制度ではありますが、「情報収集班(投票所の警護及び補給)」「医療支援チーム(医療班及びレンジャー資格保持者からなある2個班で構成)」が設置されました。情報収集班や投票所に攻撃があった際には医療チームが救出に向かう手はずになっていました。

 で、問題はですが、原因不明ではあるにも関わらず当時現地で同じく活動していたフランス軍の歩兵が負傷したという連絡が入った際、医療チームに待機命令が下されたということです。即ち、フランス軍への攻撃を受けて自衛隊は「駈け付け警護」を行う準備があったということです。(結局出動せずですが)

 これはPKO協力法(当時)の「偵察行動」「治安情報の収集と交換」に基づいた行動です。ちなみに当時は「巡回」は凍結されていました。

 これらに関しては、防衛庁(当時)から命令が下され、現地において独断専行が成された訳ではありません。
 実際、柳井俊二氏(元外務事務次官、元駐米大使、当時国際平和協力事務局長)は畠山蕃氏(当時防衛事務次官)と合意の上、自衛隊を警護任務に当てたとしています。本では触れられていませんが、政治からのオーダーであると思います。

 さて、今回はその前例を踏襲(判例規則主義ですかね?)したものに過ぎないのではないでしょうかね?
恐らく、自衛隊としての駆けつけ警護に関するマニュアルが、紙ベースかどうかは知りませんが、存在すると思いますよ(あくまで推測に過ぎませんが)。

 現場を責めるより、政府を責めた方が良いのではないでしょうか?政府の命令無くして自衛隊は動けませんから。

参照:文庫版『兵士に聞け』杉山隆男p532,p573
『外交激変』柳井俊二p105

投稿: まろぽん | 2007年9月 1日 (土) 12時16分

論点がずれています。

医療チームと自衛隊の戦闘部隊は話しがちがいます。また、日本の警察官が襲撃を受けた場合と、他国の軍隊が襲撃を受けた場合には、事実上も法律上も質的な差異があります。(軍隊は自ら身を守れます。もし身を守れないのであれば自らのオペレーションが拙劣であったのであって自己責任です。軍人として恥じるべきであって、他国に文句を言うのは女々しいでしょう。「ニッポンが助けてくれなかったから、負けちゃった」とは口が裂けても軍人は言えないでしょうね。もし、そんなことを言う軍人がいたら世界の笑いものでしょう。)

友軍がフランス軍であろうと、オランダ軍であろうと、米軍であろうと、自衛隊の一部隊の戦闘指揮官が判断できる事項ではありません。

もし自衛隊に他国の軍隊への援軍への内部規則があれば、国会に提出すべきでしょうね。もし、そんなものが防衛省内であれば、大臣どころか陸上幕僚長以下の幕僚監部全員のクビが飛びますが。

投稿: 水口 | 2007年9月 2日 (日) 08時13分

お言葉ですが。

>医療チームと自衛隊の戦闘部隊は話しがちがいます。
 『医療チーム』は陸上自衛隊第二次派遣施設大隊の、医療関係者と、レンジャー資格を持つ(当然戦闘を目的とした)自衛官から構成されています。名称こそ『医療チーム』ですが、純粋な戦闘(の伴う救出)を目的とされた部隊です。その戦闘部隊がフランス軍人の負傷に対して待機したということは事実でしょう。

>また、日本の警察官が襲撃を受けた場合と、他国の
>軍隊が襲撃を受けた場合には、事実上も法律上も質
>的な差異があります。
 さて、ご職業は弁護士さんのようですが、当該法律条文と当時の制約をご存知でしょうか。(別に弁護士業務には全く関係無いでしょうが)
 日本の警察官であろうと、あるいは他国の軍人であろうと、法律上は全く差異はありません。もしご指摘のように日本の警察官が(実際には日本人選挙ボランティアを対象としていたようですが)攻撃を受けた場合、救出に行くことは完全に違法行為ですよね。
 なぜなら、各個人に対して認められた武器使用は、「自己又は自己と共に現場に所在する他の自衛隊員、国際平和協力隊の隊員の生命又は身体を防衛するためやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で武器を使用することができる」(PKO協力法24条)のみだからです。
 そしてご指摘の文民警察官の場合はPKO隊員のようですが、PKFに該当したり、武力行使が伴いかねない「巡回」は凍結されています。救出に向かう"オペレーション"は、当時認められていた「偵察」「情報収集」を逸脱していますから、違法行為であることは間違いないでしょう。(ぼくは裁判官ではないですが、当該条文から判断する限りにおいてです)
 あなたのおっしゃる「事実上」というのは精神面での温情です。確かに国民世論は「事実上」の方を求めていたようですが日本の警察官云々は法律論ではありません。

>軍隊は自ら身を守れます。
>軍人として恥じるべきであって、他国に文句を言う
>のは女々しいでしょう。
 映画『ブラックホーク・ダウン』の基となったソマリアPKOでは米軍部隊が敵対勢力間で一時的に孤立しています。純粋に米軍指揮官の判断ミスから生じたようです。その際、パキスタン軍とマレーシア軍から米軍は支援を受けていますが、その後米軍が女々しいといった評価は聞いたことはありません。米軍人は軍人であるとともに人間であり、指揮官は可能な限り部下の命を守らなければならないでしょう。女々しいなどという発想こそが、関東軍の思想ではないですか?

>自衛隊の一部隊の戦闘指揮官が判断できる事項では
>ありません。
 尤もですが、それを事前に政府が判断していたら別ですよね。

>内部規則があれば、国会に提出すべきでしょうね。
 ベレンコ中尉事件の際は、ソ連戦闘機をソ連特殊部隊が奪還に来るという情報がアメリカ情報関係者から寄せられ、自衛隊は臨戦態勢に入りました。
 陸上自衛隊第11師団第28連隊が陸上防戦を主に担いましたが、後に(本件は必ずしもシビリアン・コントールに則っているとは言えませんが)総理と防衛長官が全ての関係書類破棄を命じています(参照:大小田八尋『ミグ25事件の真相』(学研M文庫,2001)p214)。
 さて、このような姿勢の政府が本当に提出するでしょうか。これは政府によって文書破棄が命じられているので、自衛隊の責任の範疇ではないですし。
 まぁ、当為命題としては尤もなのですが。

 あと、「駆けつけ警護」というのは、あらゆる日本国内法で認められた正当防衛を援用したものに過ぎません。実際に自らが敵と友軍との間に割って入り、自らが攻撃されている環境を作り出すことによって正当防衛の要件を満たそうというものです。(これこそ立法権者である国会議員は制定当時認めていなかったでしょうから、法律論として如何かと仰るでしょうが)
 この「駆けつけ警護」戦術が既にPKO第一回であるカンボジアで実施されている以上、"伝統文化"として自衛隊の行動様式を決定付けていても不思議ではありません。
 前出の『兵士に聞け』を見ても、カンボジアの事例が現場のみの判断で決定されたということはまずあり得ませんから(他の典型例として、阪神大震災の事例を見て下さい。知事要請及びそれに伴う陸幕長・方面総監・師団長命令が無かったため近傍派遣さえしなかった部隊もあったはずです)、今回のイラク派遣の際にも政府・防衛省が何らかの指示をしていたのでしょう。
 前回も申し上げましたが、まず、佐藤氏自身を批判するのではなく(公務員の守秘義務があります)政府を批判したらいかがですか?
 政府を批判することに、私は口を挟むつもりはありません。むしろ、安倍自民党政権には愛想が尽きました。

投稿: まろぽん | 2007年9月 3日 (月) 14時24分

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