李下に冠を正さず-新司法試験問題「漏洩」疑惑
■慶応大学法科大学院教授の新司法試験「漏洩」問題
件の教授は「李下に冠」を正したのでしょうか、それとも本当に「李(すもも)」に手を出してしまったのでしょうか?
読売新聞で次のように報道されています。(読売新聞8月3日)
今年の新司法試験で出題・採点を担当する「考査委員」を務めた慶応大法科大学院の植村栄治教授(57)が、事前に試験の類題を教えていた問題で、法務省は3日、「慶応大の学生に有利な結果をもたらしたとは認められない」として、得点調整を行わないと発表した。
■「漏洩」疑惑
問題の行為は次のようなものだそうです。
今年5月に実施された新司法試験では、慶応大法科大学院の修了生271人を含む4607人が受験。行政法分野の考査委員だった植村教授は2~3月、試験に向けた答案練習会を同法科大学院で7回開催し、関連する判例などを学生に一斉メールで送っていた。
法務省が今回、メールの内容を調べたところ、「重要そうなもの」と紹介された国民健康保険料に関する判例が、マークシート式の短答式試験でそのまま出題されたことが確認された。採点が終了しているこの問題の正答率を分析した結果、20%台だった全体平均(慶応を除く)に比べ、慶応の修了生の平均は4~5ポイント高かった。
ただ、慶応よりも正答率が高い法科大学院も12校あり、同省は「受験者なら当然勉強しておくべき重要な判例で、慶応の正答率が不自然に高いとは見えない」と判断した。
他の法科大学院との比較だけでなく、慶応の受験生の他の問題の正答率との比較はどうだったのでしょうね。もし、他の問題の正答率は平均的なのに、当該問題が顕著に高ければ「漏洩」の効果があったということでしょうから。
■論文試験について
また、植村教授が事前に判例を教えた、外国人の退去強制処分に関する問題も、論文式試験で出題されていた。論文式は採点が終わっていないが、同省は「この判例を知っていたから試験で有利になるとは言えない」とし、採点面での考慮はしないという。
確かに重要な判例であれば有名ですから、皆知っていて当たり前です。論文試験では判例を知っていただけで高得点につながるわけではありません。また、慶応の受験生が全員答練を受けていたかどうかを調べなければなりません。このような事情調査は難しいですから、採点調整するのは無理でしょうね。(他の法科大学院の受験生の気持ちはおさまらないでしょうが。)
■抜本対策-法科大学院教授は考査委員にしない
法科大学院では「法曹倫理」を強調しているにもかかわらず、この問題を一人の教授の不祥事に矮小化させて、蓋をしてしまうのは許されないと思います。(なお、植村教授は懲戒解雇ではなく、辞職を許されたそうです。常識的な感覚からすると、極めて寛大な措置ですね。)
このような問題が発生した以上、法科大学院教授が司法試験委員の考査委員を担当することを止めるべきでしょう。実務家が問題を作るしかないでしょうね。(実務家にとっては余計な負担ですから、法務省や裁判所は嫌がるでしょうけど。もともと実務法律家試験ですから。)
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