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2007年8月 7日 (火)

続・李下に冠を正さず-新司法試験問題「漏洩」疑惑

■択一試験に関する「疑惑」

慶応大学法科大学院の教授が、どのような「問題漏洩」行為をしたのかは新聞報道からは良く判りません。「判例を知らせた」という報道から、私は「沢山(10くらい)の憲法・行政分野の判例のリストが送付されたのかな」と思っていました。そうであれば、「漏洩とは言えないかな」と思っていました。

でも、次にアップされているような内容が、仮に事実であれば、そんな生やさしいものではないようです

平成18年度重判による憲法択一漏洩疑惑

http://www34.atwiki.jp/vipepper/pages/30.html

・疑惑の全貌

2007年4月11日、慶応大学ロースクールの答練受講者に対し、答練を主催する、現在は疑惑の渦中にいる考査委員の教授から、一通のメールが送られた。

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From: ".... ......" <......@....>
Date: 2007年4月11日(水) 午前10時42分
Subject: H18重判の判旨ポイント(行政法)
修了生の皆様

平成18年度の重要判例百選が刊行されたので、そのうち行政法関係で重要そうな 判例を幾つか選んで判旨ポイントを作りました(憲法から1件、行政法から5件)。行政1事件は租税法選択者以外は不要と思います。行政法4と5はちょっと個別的な話なので、とりあえず今年は後回しの扱いでいいでしょう。行政法9も(今 の段階では)やや事例判決的なものかと思います。

それではあと1月、直前の追い込みをがんばって下さい!

○○○○ 4月11日 
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本件メールには、このような重判レジュメが添付されていた。以下は、その抜粋である。

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平成18年度重要判例百選解説より行政法関係の重要判例の判旨ポイント集(速報)  

憲法3事件(P10) 国民健康保険料と憲法84条  (最高裁平成18年3月1日判決)
① 租税以外の公課であっても、賦課徴収の強制の度合い等の点において租税に類似する性質を有するものについては、憲法84条の趣旨が及ぶと解すべきである。
② 国民健康保険の保険料には憲法84条の趣旨が及ぶと解すべきであるが、賦課要件がどの程度明確に定められるべきかは、賦課徴収の強制の度合いのほか、社会保険としての国民健康保険の目的、特質等をも総合考慮して判断する必要がある。
③ 本件条例が市長に保険料率の決定及び告示を委任したことは国民健康保険法81条違反とはいえず、憲法84条の趣旨に反するともいえない。
(注:国民健康保険の費用は税(保険税)として徴収する方式もあるが、本件は保険料方式についての判示である。)
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そして、1ヵ月後の第二回新司法試験の初日、択一試験が行われる5月15日のことである。
このメールとレジュメを受信し、考査委員の指示通りに学習していた学生は、我が目を疑ったことであろう。

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〔第18問〕(配点:2)
市町村の国民健康保険条例に保険料率などの具体的規定がないことと租税法律主義を定めた憲法第84条との関係について判示した最高裁判所の判決(最高裁判所平成18年3月1日大法廷判決,民集60巻2号587頁)に関する次のアからエまでの各記述について,正しいもの二つの組合せを,後記1から6までの中から選びなさい。(解答欄は,[№40])
 http://www.moj.go.jp/SHIKEN/SHINSHIHOU/h19-19-01jisshi.pdfより引用。
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重判レジュメでは、学習すべき憲法の判例が「一つだけ」指摘されていた。
そして、その「一つだけ」指摘された憲法の判例が、択一の憲法に出題されていたのである。

■もっとも上記のWEBで、ちょっと疑問

「平成18年度重要判例百選」と書いている部分です。これはきっと、ジュリストの「平成18年度重要判例解説」のことなのでしょうね。

それとも「平成18年度重要判例百選」という判例雑誌があるのでしょうか?(・・・私が無知なだけ?)

でも、「ジュウハン」と言えば、ジュリストの各年度「重要判例解説」のことです。
私の時代の司法試験受験生の間では、重要判例解説を見て、来年度の司法試験の問題を予想して対策をたてるのは「常識」でした。その「ジュウハン」から上記のように絞り込んで勉強できれば、しかも司法試験委員がポイントまで要約してくれれば、こんなに有利なことはありませんよね。

でも「重要判例百選」って書いている、このメールは本物の再現なのでしょうか?「百選」って書いたのは、単なる書き違いなのでしょうかね。慶応法科大学院の教授で、考査委員なのに、こんなケアレス・ミスしますかね?(私はしょっちゅうだけど)。ちょっと上記メールを本物と断定するには躊躇が残ります。

■法務省は調査結果の報告を

もっともこの件は、疑惑の教授が、自分の法科大学院の「合格者を維持したくてやった」と、「動機」を「自白」した(と報道されている)点が大きな特徴です。

法務省は、調査結果を公表すべきです。どのような答案練習会が行われ、どのようなメールがなされたのか全体を明らかにすべきです。法務省が行わなくとも、慶応大学法科大学院がオープンにするべきでしょう。また、法務省は、採点調整をしない理由を公式に発表・報告すべきです。

今後は、国会でも取り上げられるようです(民主党の議員が質問書を出しているそうです)。また、日弁連の法科大学院センターも調査を開始すべきですねやはり、法科大学院の教授は考査委員にしてはならないと思います。法学部の教授ならセーフだと思いますが(答案練習会や受験指導を行わないことを条件)。

もし他ロースクールでも当たり前の雰囲気があるなら、上記の抜本的な対策を実施すべきでしょう。法務省、文科省、大学は臭いものに蓋をするという対応をするはずです。日弁連は及び腰にならないように願います。

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