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2007年8月 9日 (木)

季刊・労働者の権利07年夏号-福井秀夫・大竹文雄編著「脱格差社会と雇用法制」批判特集

■日本労働弁護団の機関誌の特集

福井秀夫・大竹文雄編著「脱格差社会と雇用法制」に対する批判を、日本労働弁護団の機関誌「労働者の権利」で特集されています。労働法学者である、小宮文人、土田通夫・石田信平、野川忍、野田進、濱口桂一郎教授ら各研究者による批判です。

労働法学からの総批判といった感じです。
非常に、力の入った読み応えのある特集です。
http://homepage1.nifty.com/rouben/

特集1 解雇規制をあらためて考える
解題 解雇規制を改めて、考える  鴨田哲郎

現実的政策提言を欠いた新古典派経済原理主義キャンペーン
-福井・大竹編著『脱格差社会と雇用法制-法と経済学から考える』  小宮文人

解雇規制をめぐる効率と公正
-福井・大竹編著『脱格差社会と雇用法制』(日本評論社・2006年)の検討-  土田道夫・石田信平

「解雇ルール」の実態と展望-労使間取引をどう再構築するか-  野川 忍
日本は「解雇制限的な法制」をもつ国か-エールフランス事件とダンロップ事件-  野田 進

解雇規制とフレクシキュリティ  濱口桂一郎

大竹判例分析に異議あり-基礎データを検証する-  労働弁護団 大竹判例分析検証チーム

■政府の労働・雇用政策を決定する人たち

hamachanこと濱口桂一郎教授は、「同書は労働経済学や本来の『法と経済学』の立場から見ても問題点が多く、これを経済学そのものと考えて『法学に対する新自由主義からの果たし状』などといきり立つのはいささか敵を高く評価しすぎている感がある」と書いておられます。(結構、きつい言い方ですね。)

でも、福井秀夫氏らは経済財政諮問会議や規制改革会議の政策決定の中枢に近い人たちですからね。学問的水準はともかく、その政府内での影響力は無視できないでしょう。

■大竹・奥平論文の判例分析の基本的誤りを指摘

大竹・奥平論文の「解雇規制は雇用機会を減らし格差を拡大させる」は、整理解雇判例260件の「判例CD-ROM」の分析から、解雇無効の判決は当該地域の失業率を増加させることが統計的に確認されたと言っています。

http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2006/12/post_5403.html

労働弁護団の検証チーム(8名の労働弁護士)が「判例CD-ROM」(第一法規)のうち整理解雇で検索される件数は実は「324件」もあり、これらの事案を分析した結果が掲載されています。この分析結果では、判例分析として整理解雇事案と言える事件は174件にしかすぎないことが確認されています(検証チームの皆さまご苦労さまでした)。大竹・奥平論文の基礎データは、整理解雇事案でない判例86件も含めて、統計処理をして結論を出したことが判明したということです。つまり、まったく前提となる判例データが間違っていることが、法学的に確認されたことになります。

大竹・奥平氏らは、優秀な経済学・統計学の研究者なのでしょうが、実体法、判例分析、民事訴訟制度についての知識が決定的に欠けているということでしょうかね。前提となる基礎データの誤りは致命的です。にもかかわらず、「統計的に確認された」などと、良く大言壮語できるものです。経済学者という人たちの自信過剰(傲慢さ?)にはあきれます。

それとも、優秀な学者の「知性の目」も、新自由主義というイデオロギーで曇らされたということなのでしょうか。

もっとも、「鬼の首でもとったように言うのは大人げない」か?

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コメント

>「統計的に確認された」などと、良く大言壮語できるものです。

もともと【一つの分析で統計的に確認された】と言っているだけだから

いろいろな分析があって、その多くで確認されて、尚且つ、否定的なものは少ない、という話ではないので

投稿: toss | 2007年8月12日 (日) 11時19分

 初めましてよろしくお願いします。
ビデオニュースという番組(http://www.videonews.com/on-demand/321330/001091.php)で
梓澤和幸先生が先生のブログについて
一瞬触れていたので検索して辿りつきました。
福井秀夫先生は政策研究大学院で教えられて
いますよね。借地借家法改正法などの正当性
についてロースクール志望者対象の雑誌で
述べられていました。読んでて少し笑ってしまい
ました。騙されちゃいかんよなぁと思っていて
法曹側からある程度反論しなきゃと考えて
いましたがされていたんですね。

投稿: yuukinohana | 2007年8月15日 (水) 17時23分

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