労働者性に関する紛争(3)-マッスルミュージカル事件
■マッスル・ミュージカルって、知っていますか?
マッスル・ミュージカルという劇団に所属している劇団員は、会社と年間出演契約を書面で締結しています。毎年1月から2月に、年俸を決定して、その後、年俸を12で割るか、10で割るかして、毎月報酬が支払われます。そして、1月半ばから会社の指示に従って稽古と練習に参加し、指定されるスケジュールに従い本番の公演(ミュージカル)に出演しています。出演契約書は4月頃に書面で締結されます(日付は2月まで遡及)。
出演契約書には、「出演者は、会社の指示に応じてスケジュールを調整してリハーサルや本番に出演する義務がある」ことが明記されています。出演すべき公演と報酬額と支払時期も明記されています。
■労災と報酬の減額措置
激しい動き(アクロバット・パフォーマンス)ですから、事故もおきます。ところが、会社は労災保険に加入していません。十分な療養と補償を受けられていません。
会社はラスベガスへの1年間公演への参加を労働者に指示しました。公演中の負傷で行けないと断った劇団員には契約の更新を拒絶してきました。
また、家庭等の都合で1年もの長期のラスベガス公演への参加は無理だと言った劇団員らについては報酬を20%から50%まで減額しました。(ラスベガスの1年契約は契約書に明記されておりません)。社長さんはこういう業界のやり手ですから、盛り上げ系のワンマンでしょうな。
■労組結成
このような一方的な減額や労災補償を認めない取り扱いを改善しようと、労働組合を結成した劇団員らが15名いました。
団体交渉を申し入れた後、社長は深夜から早朝にかけて劇団員を集めて労組脱退を説得して労組を切り崩しました(脱退強要)。会社の事務所から連名の脱退届がファクシミリにて送付されてきました。
最後まで労組に残った3名に対しては公演への出演を拒絶するばかりか、劇場・事務所への立ち入りまで拒否しています。
団体交渉では、劇団員と映演労連は、社長に対して、劇団員みんなが安心して楽しくエンターテイメントを作るために、円満解決をするように申し入れています。ところが、社長は対決路線を変更せずに、3名の組合員の出演を拒否し続けています。
日刊スポーツコム[2007年5月28日22時43分]
http://www.nikkansports.com/entertainment/f-et-tp0-20070528-205585.htmlマッスルミュージカル労組が救済申し立て
元体操選手らが舞台でパフォーマンスを披露する人気のショー「マッスルミュージカル」の出演者らでつくる労組が、制作会社側の一方的な賃下げに抗議して交渉を求めたメンバーを職場に入らせず、舞台の降板も強いたのは不当労働行為だとして28日、東京都労働委員会に救済を申し立てた。
また、労組は引き下げられた賃金を元に戻すよう求める仮処分も同日、東京地裁に申し立てた。労組は「映画演劇労連フリーユニオン・マッスルミュージカル支部」で、制作会社は「デジタルナイン」(東京)。
申立書などによると、5月下旬から予定されていた米国公演への参加を希望しなかった出演者に対して、会社側は3分から20~50%の賃金を引き下げた。出演者らが抗議して交渉を求めたが会社側が応じないため、4月下旬に労組を結成。
しかし、会社側はほかの出演者を通じて組合を脱退するよう組合員に求め、当初15人いたメンバーが5人に減少。その上、会社側は残った組合員を職場に入れない措置を取った。
50%減額されて月収が13万円台になったという労組委員長の磯前方章さん(31)は「マッスルミュージカルが好きで、その舞台をよりよくしたいという思いで動いている。きちんと会社と交渉したい」と話している。
デジタルナインは「不当労働行為はないと認識している。(裁判などの)公的機関の場で会社の正当性を主張していきたい」としている。
■裁判(仮処分)、不当労働行為の申立て、労災申請
やむなく、東京地裁に賃金仮払の仮処分(民事第19部担当:中西茂裁判官)、東京都労働委員会(担当:荒木尚志公益委員)に不当労働行為救済命令申立をしているところです。久しぶりに実行確保も申し立てをしました。左膝靱帯断裂の重症を負った劇団員については、労基署に労災申請したところです。
ここでも会社は、「出演契約は労働契約ではない」と強調しています。
若い体育会系の礼儀正しい若者たちです。彼・彼女らが「労組を結成して、たたかって良かった。」という解決をしたいものです。
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