改正パート労働者法8条の影響
「短時間労働者の雇用管理の改善に関する法律」(パート労働者法)が一部改正され、平成20年4月1日から施行されます。
http://www.mhlw.go.jp/topics/2007/06/tp0605-1.html
通常の労働者と同視すべき短時間労働者について差別禁止規定が盛り込まれました(改正法8条1項)
■通常の労働者と同視すべき短時間労働者
改正法8条は、「通常の労働者と同視すべき短時間労働者」について、「賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、差別的取り扱いをしてはならない」と定めました。
この「通常の労働者と同視すべき労働者」とは、正社員が想定されています。この通常の労働者との比較でパート労働者のうち次の点で通常の労働者と同一の場合には差別取り扱いが禁止されます。
①「職務(仕事の内容及び責任)が同一
②人材活用の仕組み(人事異動の有無及び範囲)が全雇用期間を通じて同一
③契約期間が、無期又は反復更新されて無期と同視される
もっとも、こんなパート労働者は存在しないとして、立法にあたって激しく批判されたところです。
成立した法律を不十分な立法だと批判するのは野党政治家や労働運動活動家の仕事です。是非、参議院選挙で自公政権を過半数割れさせ、衆議院解散して政権を奪取して、もっと労働者側に有利な法律をつくって下さい。
実務法律家は、成立した法律を、どう有効に活用できるかを考えるのが仕事です。先日、日弁連労働法制委員会で、この改正パート労働者法8条について、次のような点が議論になりました。
■短時間労働者ではない非正規労働者で通常の労働者と同視すべき労働者は?
短時間労働者ではなく、正社員と同一の労働時間であり、正社員と全く同一の職務に従事しており、反復更新されて5年、10年以上、継続して働いている労働者(例えば、契約社員)はどうなるのでしょうか。このような契約社員、あるいは不真性パート、疑似パートは結構、多数存在しています。
はっきりしているのは、「短時間労働者」ではないので、フルタイムの契約社員等に対しては改正法8条は適用されないということです。
それでは、通常の労働者ではないフルタイムの労働者には何ら法規制はないのでしょうか。
短時間労働者でさえ、8条により差別取り扱いが禁止されるのに、フルタイムの契約社員は差別取り扱いが放置されるという結果は不合理です。
というわけで、改正法8条の差別禁止規定の趣旨が、民法90条の公序良俗を適用を通じて、妥当することになるのではないでしょうか。
丸子警報器パート差別事件(丸子警報器パートは疑似パート労働者でした)の長野地裁上田支部判決は、同一労働同一賃金の原則に反し公序良俗違反としました。実定法上の根拠がないと批判されてきました。
しかし、改正パート労働者法8条が成立することで、短時間労働者ではない非正規労働者についても、差別取り扱い禁止が民法90条の解釈を通じて強化されると言うべきでしょう。
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