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2007年7月 6日 (金)

労働法律旬報 毛塚教授の「労働タスクフォース(和田一郎氏)」批判について

■労働タスクフォースの中心は誰か

最新号の労働法律旬報(1650号)にて、毛塚勝利教授が、「労働市場改革の核心」の論考の中で、「規制改革会議の労働タスクフォース(和田一郎氏)はとんでもない意見書を提出した。」と書かれています。

規制改革会議の労働タスクフォースがとんでもない意見書を提出したことはそのとおりです。私も、前にブログで、「とても、まともに相手にするような水準でない」と思い、「オウンゴール」だ、と揶揄しました(結果は、規制改革会議の方針に盛り込まれず、ボツになりました)。http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2007/05/post_4a78.html

ところで、毛塚先生は、労働タスクフォースは、著名な経営法曹会議の和田一郎弁護士だと認識されているようですが、主査は福井秀夫氏(政策研究大学院大学教授)です。和田一郎弁護士は専門委員の一人として参画されています。

■経営法曹と労働弁護士と福井センセイとの「対話」

この労働タスクフォースではヒアリングを実施しており、経営法曹からは和田一郎弁護士労働弁護団からは鴨田哲郎弁護士が出席しています。お二人の福井秀夫主査との「対話」はなかなか面白いです。

和田一郎弁護士編 http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/minutes/wg/2007/0308/summary0308.pdf

鴨田哲郎弁護士編 http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/minutes/wg/2007/0509/summary0509.pdf

わが日本労働弁護団の幹事長の鴨田先生(旬報法律事務所)は、敵の牙城に乗り込んで獅子奮迅です(議論になったのか、すれ違いになったのか・・・)。

和田一郎弁護士は、もちろん経営法曹会議の中心メンバーで「労働タスクフォース」の専門委員ですから、経営側弁護士のエリートです。

ところが、ちょっと不思議なことに、福井秀夫センセイとはニュアンスが違う部分があります。

■労働市場が流動化したら「ファイア(クビだ)」って言われても平気の平左?

福井主査たちがどんな考えかというと、同類の松井副主査(松井証券社長)なんかは、「アメリカの労働市場は極めて流動化していますから、解雇されたとしても、それで首吊らないといけないといった深刻なことにならなくて、『あっそう、じゃあ・・・他を探すよ』とこれだけの話しですよね。」って発言する人です。(昔、自民党政治家が、「アメリカでは破産してもアッパラパーっだ」て言った人がいましたっけ。それと同じレベルですな。)

■和田一郎弁護士 諫める

和田弁護士は、不思議なことに、ちょっと(だけど)、彼らを諫めるような発言をしています。

福井主査に対して、「ただ、やはり使用者と労働者は対等でないですよ。」と言ったり。

経営者に「ホワイトカラー・エグゼンプションの対象労働者の賃金総原資を減らさないと言えるのですか、と聞くと、はい、という返事も反ってこないし、賃金総原資を減らす合理的な説明もない。これでは、労働側から、あれは残業代ゼロ法案だと批判されても仕方がない。」と言ったり。

解雇の金銭解決制度についても、「たしかに、経営側の私から見ても、立法の際に工夫しないと、(カネさえ出せば解雇できる制度になるんじゃないか)懸念が無い訳でもないと思います。・・・・・(この制度が導入されたら)労働側から(解雇無効の)訴えが提起されると、使用者側は、訴訟のための時間と費用を避けるため、直ちに労働側の請求を認諾すると思います。すなわち、解雇が無効であることを認めてしまう。しかし、同時に、金銭解決を申し立てる。裁判所としては労働者に支払うべき金額だけを決めることになります。・・・こうなると解雇をカネで買う制度と言われると、その懸念は必ずしも外れていないように思われます。」って言ったり。

もちろん、労働タスクフォースの専門委員ですから、基本指向は一緒なんでしょうが・・・。

労働タスクフォースの中心は和田一郎氏でなく、主査である福井秀夫氏なんでしょうね。毛塚先生、そこは、ちょっと主査は「福井秀夫氏」だと訂正したほうがいいかも。(・・・労働側弁護士の私が言うのも変ですが)。

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