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2007年6月 4日 (月)

二弁フロンティア「労働審判特集」後編 & 労働審判批判の声

■二弁フロンティア 「労働審判特集」 後編

第二東京弁護士会の会報に労働審判制度に関する論稿の後編をアップしておきます。

「roudoushinpanfurotier2.pdf」をダウンロード

私は労働審判を評価する立場ですが,他方で,労働審判に対する厳しい批判もありますので,紹介しておきます。

■労働審判制度に対する批判

労働審判制度については,概ね労使,裁判所とも,好意的に評価されています。ただし,労働組合の一部の活動家(連合系,全労連系も含めて)及び労働弁護士の一部(主として「司法改革反対派」)からは次のような厳しい批判がなされています。

○労働審判では,復職を願う労働者に対して,金銭解決・退職を押しつけており,解雇の金銭解決制度の先取りした制度である。

○本来は,労働組合の団結の力によって労使紛争を解決すべきであるにもかかわらず,労働審判制度は,労働者を個別労使紛争制度での司法解決(しかも,解雇は金銭解決であり,解決水準も低い。)に誘導して,労働者の権利闘争を阻んでいる。

○労働審判は労働組合の力をそぐための策略の一つであり,労働契約法と同様の規制緩和路線の手段である。

■私見

大きな流れから言えば,労働審判制度は規制改革路線や労使関係の個別化の流れの一つでしょう(そうでなければ自民党政府の下では成立することはありえなかった)。

それはそうですが,どのような制度の下でも,解雇撤回,原職復帰を目指して権利闘争を労働組合が取り組むのであれば,労働審判でなく,やはり仮処分,そして本訴,あるいは労働委員会に不当労働行為救済命令を申立て,大衆的裁判闘争を構える必要があると考えます。

2~3ヶ月程度の労働審判。しかも異議を申し立てられれば失効してしまうような労働審判制度では,そのたたかいの土俵としては狭すぎると思います。労働組合が傍聴動員,社前行動などの大衆行動を広げる前に3ヶ月が過ぎてしまうのではないでしょうか。

■裁判で勝てば,原職復帰できるか?

私も弁護士で,専門家の端くれですから,労働者から「裁判に勝てば復職できますか?」と質問をされた場合,「裁判に勝っても,即,復職できるという制度には日本はなっていない」と,残念ながら説明をせざるを得ません。

ですから,労働者がどうしても復職をしたい,金銭解決は受け入れられない強く希望される場合には,労働組合への加盟をお勧めします。また,労働審判でなく,仮処分か,本訴を選択肢として進めます。そして,最高裁までいって勝訴が確定されれば会社が復職を認めるかもしれないが,最高裁確定までは5年は覚悟してほしいと説明することになります。

より良い労働契約法が制定されて,就労請求権が認められ,ドイツのように訴訟に勝てば確定前でも就労を認めるという法制度が導入されない限り,現行法の下では労働審判や労働訴訟で勝っても原職復帰は実現できるとは限りません。(メレスグリオ事件は,最高裁までいって勝訴判決が確定して解雇から約10年後に復職できましたが。)

その壁を打ち破るには,次に紹介するように労働組合が大きく取り組むことや,粘り強いたたかいが必要となります。労働審判では復職が勝ち取れないと批判する気持ちは分かりますが,本訴で勝っても復職できない現行制度の改善こそが先決ではないでしょうか。

現状で,解雇された労働者が現職復帰を実現するには,最近でも,単に訴訟に勝つのではなく,次のような多くの応援が必要になります。

■ある不当労働行為解雇事件-不当労働行為勝利,裁判和解の原職復帰

ジャパン・ヴィステック事件という不当労働行為解雇事件がありました。労働組合に加入した有期労働契約の労働者が雇い止めされた事件です。

都労委に不当労働行為救済命令申立から4年経過して,労働者の勝利(解雇撤回,原職復帰)を命じる救済命令が出ました。

この事件は仮処分でも勝訴できた事件だと思います。が,労働組合(映画演劇アニメユニオン)の役員らと当事者と十分に相談をして,不当労働行為事件としてじっくり取り組むことにしました。

労働組合の狙いは,中堅どころのテレビ制作会社に労働組合の組織を残し,労使関係を構築することを優先するということです。じっくりと解雇撤回闘争に取り組むことが,社内と社外での労働組合の運動を広げるために必要との戦略判断がありました。

この事件では,都労委が結審した段階で,会社側が労働者を被告として,東京地裁に雇用関係不存在の訴訟を提起しました。都労委は裁判所の審理におかまいなく,救済命令を発令。会社は中労委に再審査。

一方,東京地裁11部(担当:佐村浩之裁判官)に係属した雇用関係不存在確認訴訟(原告は地位確認の反訴提起)は,さくさくと進んで提訴から半年後の年末には集中審理を経て結審しました。社長は代表者尋問されて,裁判での会社敗訴を確信。その後,東京地裁民事第11部で和解交渉が始まり,会社は和解に応じて,労働者(労組員)は今年の5月1日に原職復帰を勝ち取りました。

■ある整理解雇事件-仮処分和解の原職復帰

一昨年に担当した事件ですが,OUP事件という外国大学の出版社で3名の労働者が整理解雇された事件がありました。出版労連の組合員が1名,非組合員が2名でした。出版労連は,全員を組合に組織して,争議団体制を組み,3名を債権者として仮処分申立をしました(東京地裁民事36部:担当:難波孝一裁判官)。

仮処分の審尋では,会社側の人員整理の必要性,実際の人員体制と整理計画との矛盾が明らかになり,敗訴が濃厚となりました。

その上で,出版労連は某国大使館前でのビラ配りや,外交使節来日の際にあわせた宣伝行動を大きく取り組み,共闘組織の組合員も活発に動きました。

結局,仮処分で和解をして,申立後,約5ヶ月後に,会社は解雇撤回,原職復帰に応じて,3名全員が復職をしました。

■労働組合にのぞむこと

労働審判が限界のある制度であることは間違いありません。限界がある制度を労働組合として,いかに活用するのか。労働組合の存在意義を高めるためにいかに育てていくのか,を検討してもらいたいと思います。労働委員会制度や労働訴訟制度の活用と改善に取り組んでもらいたいと思います。

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コメント

水口先生、お元気でいらっしゃいますか。以前、まだ労働審判制度がなかったころ、二度お世話になりました。今、労働審判にかかっています。審判委員の、裁判官以外のかたがたは、どういうかたたちなのでしょうか。

投稿: 岡村幸治 | 2008年8月29日 (金) 09時30分

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