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2007年6月30日 (土)

ザ・ブルーハーツの「街」

先日,川崎からの帰りにタクシーに乗っていたら、ラジオから「ザ・ブルーハーツ」の「街」という歌が流れていました。

21年以上前に司法修習生の頃、聞いた歌です。あの頃は、非行少年の哀歌に聞こえました。
今、聞くと、ワーキング・プアの若者の「労働歌」のようにも聞こえます。

・・・・・

いつか見るだろう
同じ拳を
握りしめて立つ人を
きっと見るだろう

そのとき僕たちは何ができるだろう
右手と左手で何ができるだろう

・・・・・

(作詞/作曲 甲本ヒロト ザ・ブルーハーツ)

負けが込んできたオジサン弁護士も励まされます・・・

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2007年6月21日 (木)

【結果】東京地裁民事11部 君が代強制解雇事件 2007年6月20日判決

残念ながら,極めてひどい内容の判決でした。想定されていた中で最悪の判決です。

東京地裁民事第11部(佐村浩之裁判長)は,ピアノ最高裁判決の多数意見を無批判になぞっています。また,都教委の通達が「不当な支配」に該当するか否かについて,都教委は必要な場合には具体的な命令も出来るとして,最高裁旭川学力テスト判決の「大綱的基準」は都教委の通達指導には妥当しないと言い切りました。
そして,10.23通達は,学校での指揮命令系統を確立するために必要であったと判示しています。

少数者の思想・良心の自由の保障という観点は全く欠落しています。司法の責務を放棄した判決です。原告ら教職員に対する敵意さえ感じられる判決文の内容になっています。

取り急ぎ判決要旨と判決文をアップしておきます。コメントは後日にします。

「kimigayokaikohanketuyoushi.pdf」をダウンロード

「kimigayokaikohanketu.pdf」をダウンロード

原告団・弁護団声明

「kimigayokaikoseimei.pdf」をダウンロード

なお,原告団と弁護団が6月21日に,都教委に申し入れた文書は次のとおりです。

                              申し入れ書
東京都教育委員会
    委員長  木村  孟 殿
  教育長  中村 正彦 殿
 昨日6月20日の東京地裁民事第11部(佐村浩之裁判長)の判決は,憲法に反するばかりか,従来の判例から見ても極めて不当な判決である。原告らは控訴をして,この誤った不当判決を是正することを決定した。
 しかし,この不当な判決でさえ,都教委の措置を手放しで認めているものではない。すなわち,「本件通達及び本件実施指針の定めは,都立高校の卒業式等の式典の実施に関する裁量を相当に制約するものであり,また,式典の画一化を招くおそれや,教育現場の自主的な創意工夫の余地を減少させるなどの批判の余地を免れないものではある」と指摘(64頁)しつつ,「その政策的な意味での賛否について議論の余地があるのは別として,法的には,許容される目的に基づき,これを実現するために必要かつ合理的な関与・介入の範囲にとどまる」としたのである(65頁)。
 また,再雇用職員の制度は,「定年後の勤務保障の意味合いも含まれていることがうかがわれるところ,ただ一度の短時間の不作為にすぎない本件不起立行為によって,その後の勤務の機会を奪われる事態に至ることは,社会通念に照らしていささか過酷であると見る余地もあり,被告代表者が記者会見において,教職員の義務違反に対し,『何もいきなりクビにするわけじゃないけれども』と語っているのも,一度の非違行為により職を失うことに対する違和感を裏付けるものとみることができる」と判断している(69頁)。ただ,「本件合格取消しに至った都教委の裁量判断が社会通念に照らして著しく不合理であるとまではいうことはできない」として,行政裁量を盾にして,不当だが違法ではないとしたのである。
 以上のとおり,この東京地裁民事11部判決でさえ,都教委の政策については議論の余地があるとして批判しているのである。
 原告団は,都教委に対して,昨年9月21日の東京地裁民事36部判決(難波孝一裁判長)を踏まえ,また,昨日の判決の指摘も踏まえて,自らの政策を是正し,10.23通達及び原告らに対する合格取消を撤回することを強く求めるものである。
                                2007年6月21日
                                              君が代強制解雇原告団・弁護団

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2007年6月18日 (月)

トンネルじん肺 政府との合意成立,全面和解へ 2007年6月18日

■政府との合意成立

トンネルじん肺根絶訴訟について,ついに政府との間で,トンネルじん肺防止対策の強化をすることを政府に約束させて全面解決をすることになりました。

本日,首相官邸で原告団・家族会が安倍総理大臣と面談し,その上で,厚生労働省,農林水産省,国土交通省,防衛施設庁との間で,「トンネルじん肺防止対策に関する合意書」を締結したのです。

来る6月20日,午後2時30分に東京高裁101号法廷にて和解を成立させます。その後,順次,全国10地裁,3高裁にて国との間での和解を成立させていきます。

■安倍総理のトンネルじん肺根絶に向けての決意

首相官邸の会議室にて,安倍総理の前で原告団長の船山友衛さん,家族会会長の山崎眞智子さん,弁護団長の小野寺利孝弁護士が挨拶しました。

安倍総理大臣は,次のように応えてくれました。

「じん肺のためにつらい苦しい思いをしてこられた患者の皆さん、家族の皆さんに対し、心からお見舞い申し上げる。すでに亡くなられた方々と、そのご遺族の皆さまに哀悼の誠をささげたい」

「原告団の意見も十分くみ取るよう厚労省はじめ関係省庁に指示し、与党とも十分に相談しながら、合意を目指して努力したいと申し上げた。その結果、じん肺対策の一層の強化策がまとめられ、合意に至った」

「じん肺が今後起こらないよう決意したところだ。じん肺対策の強化策が合意できたのは我々の喜びだ」

「現場で働いている方々にもしっかりした対策がとられるようにしたい。皆様の気持ちを無駄にすることのないよう、じん肺防止策を進め、じん肺の起こらない日本にしていきたい」

「じん肺に苦しまれた人々の気持ちを無駄にすることなく,じん肺防止対策を万全に行って二度とじん肺が起こらないよう決意した。」

同席した柳澤厚労大臣も最新の知見と技術でじん肺防止対策を検討することを表明しました。

■トンネルじん肺防止対策に関する合意書の調印

同日午後2時30分に,衆議院第1議員会館第2会議室で「合意書」の調印を行いました。自民党じん肺議連会長の逢沢一郎議員,事務局長の萩原誠司議員,事務局次長の北村茂男議員,公明党じん肺PTの漆原良夫議員が立会人となり,厚労省の青木豊労働基準局長をはじめ,農水省,国交省,防衛施設庁の幹部が調印式に同席しました。

この合意書は次のとおりです。

「tonnerugouisyo.pdf」をダウンロード

この政治解決に至る経過は次のとおりです。(以下に続く)

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2007年6月16日 (土)

【予告】6月20日 君が代強制「解雇」事件判決

■6月20日 午後1:15 東京地裁で君が代解雇事件の判決が言い渡されます。

昨年9月21日,予防訴訟(国歌斉唱義務等不存在確認訴訟)では,東京地裁民事36部(難波孝一裁判長)は違憲判決を言い渡しました。

その後,今年,2007年2月27日,最高裁第三小法廷はピアノ伴奏拒否戒告事件で「君が代」のピアノ伴奏を拒否した音楽教師の懲戒処分を合憲・適法としました。

この最高裁の合憲判決の逆風の中,6月20日,東京地裁民事第11部(佐村浩之裁判長)はどう判断するのでしょうか。

都教委の暴走に歯止めをかけ,少数者の人権を擁護する良識ある判決を期待しています。

君が代強制解雇事件とは次のような事件です。2004年3月,都立高校で,都教委の通達に基づき校長が卒業式の「君が代」斉唱時に教職員に「国旗に向かって起立して国歌を斉唱せよ」との職務命令を発令しました(従来は,都立学校では「内心の自由」があることを説明して参加者各人の「自由」が保障されていました)。

この都教委通達及び校長の職務命令に反して,起立せず歌わなかった教師が定年後5年間の再雇用職員として合格していたにもかかわらず,不起立を理由に,その合格を取り消されたのです。そこで,教師らが「合格取消」(実質的な解雇)の違法を訴えて地位確認・損害賠償を請求した事件です。

■次に,6月6日に行った記者レク資料を掲載しておきます。興味のある方は,どうぞご覧下さい。

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2007年6月11日 (月)

規制改革会議の第一次答申と経済財政諮問会議2007年方針(素案)の労働・雇用分野

■規制改革会議の第一次答申
平成19年5月30日,規制改革会議から「規制改革推進のための第一次答申-規制の集中改革プログラム-」が発表されました。

http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/publication/2007/0530/item070530_02.pdf

規制改革会議とは,内閣府設置法に基づく内閣府本府組織令38条にて設置され,同令39条により,「 経済に関する基本的かつ重要な政策に関する施策を推進する観点から、内閣総理大臣の諮問に応じ、経済社会の構造改革を進める上で必要な規制の在り方の改革(国及び地方公共団体の事務及び事業を民間に開放することによる規制の在り方の改革を含む。)に関する基本的事項を総合的に調査審議すること」をつかさどる機関です。現議長は草刈隆郎・日本郵船社長。

■消えた労働タスクフォースの提言
上記第一次答申では,雇用・就労分野は,労働法制について全く触れられていません。なんと,規制改革会議の下の労働タスクフォース(主査・福井秀夫政策大学院教授)が5月21日に発表した「脱格差と活力をもたらす労働市場を~労働法制の抜本的見直しを~」がすっぽりと抜け落ちています。

http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/publication/2007/0521/item070521_01.pdf

福井秀夫・労働タスクフォースは,「労働市場における規制を見直し,誰にとっても自由で開かれた市場にすることこそ,格差の是正と労働者の保護を可能とし,同時に企業活動も活性化する」との確信のもとに,「過度に女性労働者の権利を強化すること」に反対し,「労働者の権利を強めれば,労働者の保護になる」というのは「神話」だと論難し,また,労働市場に労働法や判例による介入や,画一的な数量的規制(例えば,就業率や労働時間)などの規制を撤廃することこそが,「根源的な政策課題」であり,「ごく初歩的な公共政策」だと主張していました。

(まさに「リバタリアン」の面目躍如。ハイエク=フリードマン流のシカゴ・ボーイズってわけですね。「国家の品格」の著者の藤原正彦氏に言わせれば「論理を振り回す愚か者」となるのでしょうか。http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2006/03/post_33a2.html

この労働タスクフォース提言は,さすがに参議院選挙前だから,ボツにされたようです。自民党の人たちは,福井秀夫・労働タスクフォースの提言には,苦々しく思ったでしょうね(「まったく,だからイヤなんだよ。政治音痴の学者は!」ってね。「日経連」の人たちからは「現場を知らないamemkoukabure」とか言われているんでしょうな。)

■経済財政諮問会議 基本方針2007年
6月4日に発表された経済財政諮問会議の「基本方針2007年(素案)」では,「労働市場改革」として次のような提言をしています。http://www.keizai-shimon.go.jp/minutes/2007/0604/item6.pdf

(1)「憲章」及び「行動指針」の策定

経済財政諮問会議「労働市場専門調査会」,男女共同参画会議,仕事と生活の調和(ワークライフバランスに関する専門調査会」,「子どもと家族を応援する日本」重点戦略検討会議の提言等を津妻絵,関係府省の連携の下,平成19年内に目処に「憲章」及び以下の内容を含めた「行動指針」を策定する。
・就業率向上や労働時間短縮などの数値目標
・ワークライフバランス社会の実現度を把握するための指標の在り方
・ワークライフバランスの実現に向けた支援施策,制度改革等に関する政府の横断的な政策方針

・経済界・労働界を含む国民運動の推進に向けた取組方針

(2)労働市場改革についての検討

専門調査会において,労働市場改革をめぐる課題について引き続き検討を進め,その報告等を踏まえ,経済財政諮問会議で議論を行う。

ちなみに,経済財政諮問会議とは,内閣府設置法18条に基づき,「内閣の重要政策に関して行政各部の施策の統一を図るために必要となる企画及び立案並びに総合調整に資するため、内閣総理大臣又は内閣官房長官をその長とし、関係大臣及び学識経験を有する者等の合議により処理することが適当な事務をつかさどらせるための機関」として設置されたものです。議長は安倍晋三・内閣総理大臣。

「第一次答申」と,「基本方針2007年(素案)」を読む限り,労働市場改革=労働法制改革については,主導権は経済財政諮問会議に移ったように読めます。

■労働市場改革専門調査会
今後の注目は,労働市場改革専門調査会の第1次報告がどのようなものに収斂するかということでしょう。

http://www.keizai-shimon.go.jp/special/work/07/item1.pdf

「リバタリアン」の親玉である八代氏と数少ない規制改革推進派の労働法学者(労働法否定の希有な労働法学者)の小嶌氏がリードしつつ,それに「浪花節」的な日本温情主義のオブラートにくるんだ労働市場政策になるのではないでしょうか。秋に取りまとめられる労働市場改革専門調査会の報告書は,福井・労働タスクフォースの提言を取り込んだ内容になるのかもしれませんもっとも,参議院選挙の結果次第なのかもしれません。

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2007年6月 8日 (金)

映画「しゃべれども しゃべれども」

■落語
先日,落語の映画を見てきました。
売れない二つめの若い落語家が,ひょんなことから「落語教室」をはじめる。
「生徒」は
・解説が下手な野球解説者
・口のきき方を知らない,怒りんぼの美女
・東京に転校していじめられている大阪の子ども

■江戸情緒
縁側のある日本家屋,路地裏の植木,ほおずき市,風鈴,住吉神社,隅田川の佃島・月島界隈の江戸情緒が満載です。とはいえ,ウオーターフロントの高層マンションと着物姿の落語家というミスマッチ感。

ほのぼのとした気分で映画館を出ました。そして,美味しい蕎麦と日本酒をいただきたくなりました。

敢えて,難を言えば,主人公の落語家の青年が二枚目すぎることと,ラストが「安易」で少し残念でした。

http://www.shaberedomo.com/

■寄席に行きたくなり

新宿に末廣亭があります。午後9時からの深夜寄席は木戸銭500円だそうです。

http://suehirotei.com/

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2007年6月 6日 (水)

アクセス数6万件超アクセストップ20 

2007年3月1日~同年6月4日までの本ブログのアクセスのトップ20です。数字はアクセス数です。

1 労働審判制度施行1年      908
2 弁護士大増員時代-ドイツ弁護士事情     624
3 成果主義賃金による降級・減額措置を
    
違法とした東京高裁判決-マッキャンエリクソン事件  452
4 読書日記「脱格差社会と雇用法制」
       
福井秀夫・大竹文雄編著  412
5 「世界」5月号 西原博史「『君が代』伴奏拒否訴訟
       
最高裁判決批判」論文を批判する  384
6 会社分割・労働契約承継法と「在籍出向」  361
7 「労働市場改革専門調査会」
        第一次報告(案)を読んで      289
8 新人弁護士用 労働事件の研修   279
9 日本の自殺率-驚愕の国際比較    257
10 民事裁判の証人尋問      249
11 労働契約法案に関する日弁連意見     223
12  後藤田正純議員 「労働ビッグバン」への宣戦布告!  192
13  君が代ピアノ伴奏職務命令合憲
              -最高裁第三小法廷判決   175
14  労働審判 ホットライン   171
15  規制改革会議「脱格差と活力をもたらす労働市場へ」 148
16  「労働者性」について    142
17  裁量労働みなし時間制も見送り
          労働契約法案要綱及び労基法改正法案要綱④  135
18  トンネルじん肺国賠訴訟
       徳島地裁3/28,松山地裁判決3/30   131
19  読書日記 「下流志向」
      -学ばない子どもたち働かない若者たち 内田樹著 126
20  「青法協」攻撃と故矢口洪一氏 憲法記念日 123

労働審判施行1年がトップです。マッキャンエリクソン事件のアクセス数が多いのも珍しい判決だからでしょうか。西原論文批判がけっこうアクセス数が多いのには驚きました。こんなにアクセスが多いとは,ちょっと厳しく批判しすぎたかな・・・。

われながら,堅いテーマのブログですね。やわらかいテーマと言ったら映画ネタくらいですが,次くらいにはアップしたいと思います。

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2007年6月 4日 (月)

二弁フロンティア「労働審判特集」後編 & 労働審判批判の声

■二弁フロンティア 「労働審判特集」 後編

第二東京弁護士会の会報に労働審判制度に関する論稿の後編をアップしておきます。

「roudoushinpanfurotier2.pdf」をダウンロード

私は労働審判を評価する立場ですが,他方で,労働審判に対する厳しい批判もありますので,紹介しておきます。

■労働審判制度に対する批判

労働審判制度については,概ね労使,裁判所とも,好意的に評価されています。ただし,労働組合の一部の活動家(連合系,全労連系も含めて)及び労働弁護士の一部(主として「司法改革反対派」)からは次のような厳しい批判がなされています。

○労働審判では,復職を願う労働者に対して,金銭解決・退職を押しつけており,解雇の金銭解決制度の先取りした制度である。

○本来は,労働組合の団結の力によって労使紛争を解決すべきであるにもかかわらず,労働審判制度は,労働者を個別労使紛争制度での司法解決(しかも,解雇は金銭解決であり,解決水準も低い。)に誘導して,労働者の権利闘争を阻んでいる。

○労働審判は労働組合の力をそぐための策略の一つであり,労働契約法と同様の規制緩和路線の手段である。

■私見

大きな流れから言えば,労働審判制度は規制改革路線や労使関係の個別化の流れの一つでしょう(そうでなければ自民党政府の下では成立することはありえなかった)。

それはそうですが,どのような制度の下でも,解雇撤回,原職復帰を目指して権利闘争を労働組合が取り組むのであれば,労働審判でなく,やはり仮処分,そして本訴,あるいは労働委員会に不当労働行為救済命令を申立て,大衆的裁判闘争を構える必要があると考えます。

2~3ヶ月程度の労働審判。しかも異議を申し立てられれば失効してしまうような労働審判制度では,そのたたかいの土俵としては狭すぎると思います。労働組合が傍聴動員,社前行動などの大衆行動を広げる前に3ヶ月が過ぎてしまうのではないでしょうか。

■裁判で勝てば,原職復帰できるか?

私も弁護士で,専門家の端くれですから,労働者から「裁判に勝てば復職できますか?」と質問をされた場合,「裁判に勝っても,即,復職できるという制度には日本はなっていない」と,残念ながら説明をせざるを得ません。

ですから,労働者がどうしても復職をしたい,金銭解決は受け入れられない強く希望される場合には,労働組合への加盟をお勧めします。また,労働審判でなく,仮処分か,本訴を選択肢として進めます。そして,最高裁までいって勝訴が確定されれば会社が復職を認めるかもしれないが,最高裁確定までは5年は覚悟してほしいと説明することになります。

より良い労働契約法が制定されて,就労請求権が認められ,ドイツのように訴訟に勝てば確定前でも就労を認めるという法制度が導入されない限り,現行法の下では労働審判や労働訴訟で勝っても原職復帰は実現できるとは限りません。(メレスグリオ事件は,最高裁までいって勝訴判決が確定して解雇から約10年後に復職できましたが。)

その壁を打ち破るには,次に紹介するように労働組合が大きく取り組むことや,粘り強いたたかいが必要となります。労働審判では復職が勝ち取れないと批判する気持ちは分かりますが,本訴で勝っても復職できない現行制度の改善こそが先決ではないでしょうか。

現状で,解雇された労働者が現職復帰を実現するには,最近でも,単に訴訟に勝つのではなく,次のような多くの応援が必要になります。

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