■二弁フロンティア 「労働審判特集」 後編
第二東京弁護士会の会報に労働審判制度に関する論稿の後編をアップしておきます。
「roudoushinpanfurotier2.pdf」をダウンロード
私は労働審判を評価する立場ですが,他方で,労働審判に対する厳しい批判もありますので,紹介しておきます。
■労働審判制度に対する批判
労働審判制度については,概ね労使,裁判所とも,好意的に評価されています。ただし,労働組合の一部の活動家(連合系,全労連系も含めて)及び労働弁護士の一部(主として「司法改革反対派」)からは次のような厳しい批判がなされています。
○労働審判では,復職を願う労働者に対して,金銭解決・退職を押しつけており,解雇の金銭解決制度の先取りした制度である。
○本来は,労働組合の団結の力によって労使紛争を解決すべきであるにもかかわらず,労働審判制度は,労働者を個別労使紛争制度での司法解決(しかも,解雇は金銭解決であり,解決水準も低い。)に誘導して,労働者の権利闘争を阻んでいる。
○労働審判は労働組合の力をそぐための策略の一つであり,労働契約法と同様の規制緩和路線の手段である。
■私見
大きな流れから言えば,労働審判制度は規制改革路線や労使関係の個別化の流れの一つでしょう(そうでなければ自民党政府の下では成立することはありえなかった)。
それはそうですが,どのような制度の下でも,解雇撤回,原職復帰を目指して権利闘争を労働組合が取り組むのであれば,労働審判でなく,やはり仮処分,そして本訴,あるいは労働委員会に不当労働行為救済命令を申立て,大衆的裁判闘争を構える必要があると考えます。
2~3ヶ月程度の労働審判。しかも異議を申し立てられれば失効してしまうような労働審判制度では,そのたたかいの土俵としては狭すぎると思います。労働組合が傍聴動員,社前行動などの大衆行動を広げる前に3ヶ月が過ぎてしまうのではないでしょうか。
■裁判で勝てば,原職復帰できるか?
私も弁護士で,専門家の端くれですから,労働者から「裁判に勝てば復職できますか?」と質問をされた場合,「裁判に勝っても,即,復職できるという制度には日本はなっていない」と,残念ながら説明をせざるを得ません。
ですから,労働者がどうしても復職をしたい,金銭解決は受け入れられない強く希望される場合には,労働組合への加盟をお勧めします。また,労働審判でなく,仮処分か,本訴を選択肢として進めます。そして,最高裁までいって勝訴が確定されれば会社が復職を認めるかもしれないが,最高裁確定までは5年は覚悟してほしいと説明することになります。
より良い労働契約法が制定されて,就労請求権が認められ,ドイツのように訴訟に勝てば確定前でも就労を認めるという法制度が導入されない限り,現行法の下では労働審判や労働訴訟で勝っても原職復帰は実現できるとは限りません。(メレスグリオ事件は,最高裁までいって勝訴判決が確定して解雇から約10年後に復職できましたが。)
その壁を打ち破るには,次に紹介するように労働組合が大きく取り組むことや,粘り強いたたかいが必要となります。労働審判では復職が勝ち取れないと批判する気持ちは分かりますが,本訴で勝っても復職できない現行制度の改善こそが先決ではないでしょうか。
現状で,解雇された労働者が現職復帰を実現するには,最近でも,単に訴訟に勝つのではなく,次のような多くの応援が必要になります。
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