トンネルじん肺 3月30日 松山地裁判決勝訴 5連勝
■5連勝
松山地裁は,3月30日の判決で,トンネルじん肺の国家賠償請求訴訟で,被告国に対して損害賠償の支払いを命じました。東京地裁,熊本地裁,仙台地裁,徳島地裁に続いて5連勝です。
本日、松山地裁民事1部は、全国トンネルじん肺根絶訴訟について、五度、国の責任を厳しく断罪し、原告(患者単位)22名中16名の原告(患者単位)を救済する勝訴の判決を言い渡した。
判決は、規制権限の不行使の責任に関し、昭和61年ころには,NATM工法が山岳工法での支保工の標準工法となり、機械式掘さくの割合が増加するなどしていたこと、さらに,建設災害防止協会は、昭和61年11月、トンネル建設工事に即した粉じん濃度測定方法及び屋内作業上の管理濃度を参考にした評価方法を示していたこと等から、労働大臣は、昭和61年末ころには、①湿式さく岩機と防じんマスク使用を重畳的に義務付けること、②NATM工法の標準化及び普及に伴い、コンクリート吹付作業時等のエアライン・マスクの使用を義務付けること、③粉じん濃度測定及びそれに対する評価を義務付けることを各内容とする省令を制定すべきであるにもかかわらずこれを怠ったことについて、規制権限(省令制定権限)不行使の違法があると認定した。
■次は金沢地裁 9月21日判決 国の連敗の流れは決まり
結局,厚労省は解決能力がないということですね。トンネルじん肺は金沢地裁が3月30日に結審して判決は今年9月21日です。6度目の判決ですが,もはやトンネルじん肺については流れが決まりました。今後判決が予定されている広島地裁,札幌地裁,新潟地裁,長野地裁,松江地裁の裁判所で国の敗訴は間違いない。筑豊じん肺の最高裁判決の下,訴訟で国が逆転するのは困難でしょう。
国は,東京高裁で最後の勝負に出るつもりでしょうか。
しかし,東京高裁(石川善則裁判長)では,今年6月に原告本人尋問が予定されています。東京高裁第1回(3月12日)の控訴審弁論で,石川裁判長は,第1審原告2名の意見陳述,弁護団3名の陳述に対して,「まことに密度の濃い弁論であった」と発言しました(法廷で,こんな発言を裁判官がするは極めて異例です。)。
法務省の訟務検事(裁判官の判検交流組です)は,東京高裁,仙台高裁,福岡高裁への対応に四苦八苦している様子がありありです。
■厚労省の頑なな対応と連敗路線
担当官庁である厚労省の国家賠償請求事件では,原爆訴訟(国の5連敗),C型肝炎訴訟(国の3連敗),そして,トンネルじん肺(国の5連敗)で連敗を続けています。厚労省は,もはや負け慣れしてしまい,粛々と控訴し,淡々と敗訴するつもりのようです。
戦前の日本が,連戦連敗しているのに,どこかで反転攻勢をかけて,少しでも有利な講話をしようと目論んだが,結局,無条件降伏を余儀なくされました。今の厚労省は,この旧日本軍のようです。官僚というのは自分のイニシアで方針転換して物事の解決を図ることは苦手なのでしょう。組織の中での自己保身・自己保存の本能に凝り固まっていますからね。
官僚組織の方針や方向転換を決断するのはやはり政治家しかいないでしょう。あるいは,最高裁までいって判決で勝ちきるしかありません。しかし,それではじん肺患者の原告の多くは,この世を去ってしまいます。
■柳澤厚労大臣の発言
ところで,柳澤伯夫厚労大臣は,3月27日の定例記者会見で次のような受け答えをしています。
http://www.mhlw.go.jp/kaiken/daijin/2007/03/k0327.html
(記者)
中国残留孤児の訴訟では国は勝ったわけですね。今回C型と原爆では負けたわけですけど、(国が)勝ってそれでも(原告に)会うと、(国が)負けて(勝訴した原告には)やっぱり会わない、これは原爆訴訟、しかもB型、C型と 孤児を分けるものというのは何なんでしょうか。(大臣)
これは、やはり何と言っても、総理の判断というものがあって、それに基づいて私に指示が下って、その翌日、その指示を受けて総理がお会いになったと、こういうことですね。で すから、そういう一連の動きがある中で、そうしたことが行われたと、こういうふうにご理解いただけたらと思います。
要するに,「裁判では原告に勝ったけれど,総理の指示があれば原告らに会います」と言ってる。じん肺患者の原告らが勝訴をして,厚労省に協議を申し入れても,「係争中の事件の当事者に会わない」と言っているのに。
■肝炎訴訟での官邸の動き
3月21日の朝日新聞には次のような記事が掲載されていました。要は,官邸の指示がないと厚労省は動かないということですな。
C型肝炎訴訟「政府・与党で解決」 官房副長官が原告に
2007年03月30日23時33分下村博文官房副長官は30日、官邸で薬害C型肝炎訴訟の原告らと面会した。原告らによると、下村氏は「政府と与党が一体となって肝炎問題の解決に取り組む」として、政府主導で肝炎対策に本格的に動き出す方針を示した。大阪、福岡、東京地裁で続けて国が一部敗訴したことを受け、「政治的解決」を望む原告らに応える形だ。一方で、国は東京地裁判決については不服として同日、東京高裁に控訴した。
面会した原告らによると、下村氏は「安倍首相の声と思って聞いてほしい」としたうえで、「政府としてもみなさんと痛みをできるだけ共有したい。与党と一体となって解決に向けて取り組んでいく」と話したという。
また下村氏は、安倍首相から「訴訟とは別に、解決できることがあれば努力する」などと指示されたといい、与党にも肝炎対策を勉強・研究するよう働きかけると明言した。http://www.asahi.com/politics/update/0330/016.html
■トンネルじん肺でも政治解決を
現在521名にのぼる国会議員の賛同署名,自民党のじん肺議連,公明党のじん肺プロジェクトチーム,そして,野党の支援を足がかりに,政治の力によって,トンネルじん肺根絶のための粉じん測定及びその評価の義務づけなどの抜本的な防止対策を確立させたいです。
自民党のじん肺議連の事務局長 萩原誠司 衆議院議員のWEB活動報告を紹介します。http://www.hagiwara-seiji.jp/houkoku_kako/houkoku.html
○徳島のじん肺訴訟で、原告側がほぼ全面的に勝訴、つまり、国が敗訴しました。4つの地方裁判所で4連敗です。自由民主党のじん肺議連を代表する形で萩原誠司と逢沢一郎代議士他が、原告の皆さんの報告集会に出席。じん肺の根絶にむけて政府の対策の強化を促すことを含め、早期の和解が必要だと感じています。
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