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2007年2月 5日 (月)

映画「それでもボクはやっていない」

■周防正行監督の裁判映画 「痴漢えん罪事件」

富山のえん罪事件についてコメントしたとおり,「それでもボクはやっていない」を子どもたちと見に行ってきました。子どもたちには大好評でした。弁護士として,【日本の刑事裁判が,ありのままま映画化されている】と自信をもって断言できます。

裁判をめぐる人物像も,裁判官,副検事,検察官,弁護士,傍聴人,裁判所門前でマイクで叫んでいる人も含めて「そのまんま」です。

指先でペンをくるっと回す癖のある検事(弁護士もいる!)。「子役人」風のエラソな副検事。ちょっとおたくっぽい裁判官。小生意気な新人弁護士。くたびれた中年弁護士(私です)。みんな「いるいる」です。

法廷の場面でも,周防監督は,エンターテイメントを意識した演出をいっさい排しています。ドキュメンタリーのようです。

裁判員制度を控えて,時期を得た映画となりました。この映画は,最高裁,検察,警察はいやがるでしょうね・・・・。でも,真実なんだから仕方がない。

■幻冬舎「それでもボクはやっていない」

完全シナリオ,周防監督の自作解説,そして,弁護士の木谷明氏(元裁判官)との対談が掲載されています。ご両人の対談も面白いですが,映画ではカットした場面を解説した自作解説も面白いです。

周防監督は同書の「おわりに」で,次のように書いていました。

「刑事裁判の最大の使命は,無実の人を罰してはならないということです」という一節が,木谷弁護士著の「刑事裁判の心」には見つからなかった。」

「刑事裁判の最大の使命は,冤罪を生まないことである」という秋山賢三弁護士の「裁判官はなぜ誤るのか」(岩波新書)にあった一節を発見した。

■「刑事裁判の目的は無罪の発見である」と言った裁判官は誰か?

おなじような趣旨の一節を,私は「無罪の発見こそ,刑事裁判官の職務だ」と,うろ覚えで前にブログで書きました。
  ↓
http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2007/01/post_0ddd.html

この一節は,下村幸雄氏(元裁判官・弁護士)の「刑事裁判を問う-在官30年の思索と提言-」(1989年 勁草書房)の中で書いてありました。

この下村氏の著作を自宅で取り出して探してみたら,この一節が見つかりました。そこには,次のように書かれていました。

「刑事裁判の目的は無罪の発見にある」という藤江忠二郎判事の言葉。(同書263頁)

「藤江さんは民事裁判官であられたが
,『刑事裁判の目的は無罪の発見にある』ということを口癖のように言われていたのである。私はこの言葉を藤江さんご自身の口から聞いた。そして,結局,この言葉が,法律家としての私の金科玉条になった」(同書336頁)

「無実の発見」というところが,有罪率99.9%の実態を踏まえた,うまい言い方だなあと感心した覚えがあります。

あらためて下村氏の著作を読んでみて,研修所教育の在り方について,「無罪記録を使用しないことは『刑事裁判』修習の致命的欠陥である」とされ,誤判事件の「記録を使って始めて,『合理的な疑い』或いは『確信』といった概念の内実を味得し,事実誤認の恐ろしさを知る機会を持つのである」とされています。
「判決書きの訓練」を優先する「官僚的な法律技術屋養成のため」の教育だと喝破されています。

「官僚的な法律技術屋」というのは,民事・刑事の区別なく,また裁判官だけでなく,弁護士にとっても耳が痛いところですね。

とにかく,映画「それでもボクはやっていない」を是非,ご覧ください。

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コメント

>この映画は,最高裁,検察,警察はいやがるでしょね・・・・。でも,真実なんだから仕方がない。

同感です。本当によく作られていると思います。他の弁護士の方もこの作品を傑作だと評価していました。

記事を私のブログに転載させてもらいました。ご了承お願いします。

投稿: クレーマー&クレーマー | 2012年11月29日 (木) 08時29分

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