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2007年2月25日 (日)

成果主義賃金による降級・減額措置を違法とした東京高裁判決-マッキャンエリクソン事件

マッキャンエリクソン事件 東京高裁2007年2月22日判決

■成果主義賃金による降級・減額措置を違法とした初の東京高裁判決

東京新聞
http://www.tokyo-np.co.jp/flash/2007022201000735.html

2審も「次長の降級無効」
 成果主義の外資系代理店

 外資系広告代理店マッキャンエリクソン(東京)の男性次長が、成果主義により給与等級を違法に降級処分にされたとして、地位確認や差額賃金の支払いを求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は22日、降級を無効と認め、計100数十万円の支払いを命じた1審東京地裁判決を支持し、会社の控訴を棄却した。

 会社は「降級は会社の広範な裁量に含まれる」と主張したが、浜野裁判長は「降級にするには根拠を具体的に挙げ、等級に比べ能力が著しく劣ることを明らかにしなければならない」と判断し、降級を無効とした。

 男性の原告代理人弁護士は「地位確認まで認めたのは高裁レベルでは初めてだと思う。企業の成果判定の裁量にも限界があることを明らかにした」と評価している。

 判決によると、会社は01年10月、成果主義に基づく新賃金制度を導入し、業績などによって降給できるようにした。男性は同月に副社長から退職勧奨を受けたが拒否。03年4月に給与等級を7級から6級にされ、基本給は月額で約20万円下がった。(共同)(2007年02月22日 20時55分)

■東京地裁地裁判決(難波裁判官担当)

第1審の東京地裁は民事第36部の難波裁判官の判決です(2006年10月25日)。難波裁判官は,結審間際に,「地位確認の確認の利益があるんでしょうかね? 差額賃金請求だけで十分でないの」などと釈明されたので,地位確認は棄却されるかと覚悟していました。ところが,判決では地位確認まで認容し,画期的な判決になりました。実は,以前に民事裁判の証人尋問についてブログで書いたのはこのマッキャンエリクソン事件の証人尋問でした(http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2006/05/post_a456.html )。

■成果主義賃金の降級措置を違法として地位確認を認めた初の高裁判決

会社が控訴をしましたが,担当部は東京高裁第21民事部(裁判長浜野惺,高世三郎,遠藤真澄)です。実はこの部は,成果主義賃金による減額措置を違法としたノイズ研究所事件の川崎支部判決を取り消した部なのです。

ノイズ研究所事件は,私と同じ事務所の同僚弁護士が担当しており,審理の経過については聞いており,主任の高世裁判官(元東京地裁19部の労働部の総括)が担当していました。このマッキャンエリクソンの件も高世裁判官が主任でした。ということで,ノイズ研究所事件のようにひっくり返されるのではないかと警戒していました。

幸い,マッキャンエリクソン事件はノイズ研究所事件とちがって,労働者側の地裁勝訴判決を維持し,また差額賃金の請求だけでなく,7等級の地位確認まで認めてくれました。

■ノイズ研究所事件とマッキャンエリクソン事件とで結果が違ったのは何故?

マッキャンエリクソン事件は,成果主義賃金が導入されたことは原告は争いませんでした。そして,会社の降級・減額措置は,裁量権逸脱しているという点に主張立証を絞りました。(マッキャンエリクソンでは成果主義賃金制度について詳細に説明した,従業員全員に配布された冊子により導入されており,実は導入時には就業規則の変更手続は行われていませんでした。しかし,管理職であった原告の要求は,成果主義賃金の7等級に復することだったので,その冊子を成果主義賃金の就業規則たる性格を有するものであることを,あえて原告側は争うことを止めました。就業規則たる性格を否定したら,旧賃金制度が適用されることになります。原告の場合には,月額給与は旧賃金制度のほうが安くなってしまうという事案でもありました。)

この成果主義賃金を説明した会社の冊子には,「降級は例外的な事例,著しく能力が劣る場合にのみ降級をする」という注釈が記載されていました。そこで,これが労働契約の内容になっており,使用者の成果主義賃金決定権の裁量を拘束すると主張したのです。この点をとらえて,地裁判決,高裁判決は,本件降級・賃金減額措置を裁量権逸脱で違法としました。

他方,ノイズ研究所事件は,成果主義賃金制度の導入が就業規則の不利益変更にあたり,当該成果主義賃金は著しい不利益を労働者に課すものであって合理性はなく,就業規則の変更による労働条件の不利益変更に該当し,それは違法であるという点が裁判上の最大の焦点でした。東京高裁は成果主義賃金の就業規則の変更による導入は合理性があり適法としたため労働者を逆転敗訴させたのです。現在,最高裁に上告受理申立をしています(http://www.syuppan.net/kyoto/s2-03-19.htm)。

■個別事例判断

ただ,マッキャンエリクソン事件での東京高裁の「降級にするには根拠を具体的に挙げ、等級に比べ能力が著しく劣ることを明らかにしなければならない」とする判示は一般論というよりも,マッキャンエリクソンの成果主義賃金の規定がそう定めているから,使用者の裁量権が拘束されるという個別事案の判断です。

しかし,使用者の成果主義賃金の決定権も労働契約によって拘束されることを明示し,地位確認を認めた点で大きな意義があると思われます。

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