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2007年1月 7日 (日)

今,解雇規制を緩和すれば,さらに格差が拡大し雇用が破壊される

■雇用保障を前提とした戦後の日本企業

(*12月31日の続き→)確かに,日本企業は,戦後の高度経済成長の時代を経て,雇用保障を前提とした日本的雇用ルールを作ってきました。雇用保障と引き替えに,年功的賃金制度,柔軟な配転などの人事処遇,協調的な労使関係があったのでしょう。敗戦直後の激烈な労働争議を経験した「階級的妥協」という側面があったと言われています(R.ドーア氏)。しかし,この雇用保障を前提とした雇用ルールは大企業と中堅企業で妥当していただけで,中小零細企業では「建前」にしかすぎず,現実ではありませんでした(労働者の7割は中小零細に雇用されていた)。

同時に,日本企業は,昔から,雇用保障を受けない季節工,臨時工,社外工などを活用してきました。ですから,非正規労働者を拡大しようと思えば,過去においても十分に拡大して活用できたはずです。

では,何故,今(1990年前半)までは正社員中心の労働・雇用システムを維持してきたのでしょう? (解雇規制が強すぎて解雇できなかったから? じゃあ非正規労働者をもっと増やせばヨカッタのに?でも,量的には拡大しなかった。)

■正社員雇用がメリットとなった戦後の経済情勢

それは,企業にとってメリットがあったからでしょう。正社員による技術の承継や労働意欲の維持・向上,多能工化による柔軟な生産組織を維持することができたからです。

今まで,日本企業は,けっして「解雇規制が緩やかだったから/解雇規制が厳しかったから」,正社員を雇い続けてきたわけではないはずです。つまり,当時の客観的な経済情勢から,正社員を中心とした生産組織を維持することが企業経営上,適切であった(もうかる)からにほかなりません。

■「非正社員化」は日本企業が弱体化している結果

現在,企業が正社員の採用をできるだけ抑制しているのは,「解雇規制が厳しいから,とか,厳しくなりそうだから」ではないと思います。割高な正社員を雇用しなければならないほど価値のある生産組織=労働組織を日本企業が今,持っていないからなのでしょう。

つまり,正社員を雇い入れて,雇用を蓄えなければならないほど利益をあげるような新技術や新製品の開発などの売上げを伸ばす見通しが企業にないからです。
こんな状態の中,解雇規制を緩和すれば,より一層,非正規雇用が増大するだけです。解雇規制を緩和しても,大企業が正社員を増やすとは到底思えません。(そう思える人はお人好し?=合理的な愚か者?)

■本音はグローバル競争を勝ち抜くための労務コストの低減

もっとも,経済学者は,「解雇規制緩和により,労務コストが低くなる。したがって,起業が活発化し,新技術の開発も活性化する。そして,新産業も起こり,雇用が創出されるのだ。」と言うんでしょうな。つまり,要するに狙いは「労務コストの低減」なんです。

米国と英国は労働市場を規制緩和したが,格差は拡大しています。確かに,失業率は好転したが,雇用の劣化は著しい。

経済学者さんは,解雇規制を緩和して社会的な軋轢を増して多くの人の生活を壊すようなコストの高い方法でなく,もっとましな方策は思いつかないのでしょうかね? 

ちなみに,故森嶋通夫教授は,「日本経済が停滞しているときこそ,政治が風を吹かせなければならない。それは新機軸の打ち出しである。例えば,中国大陸の高速鉄道網の創設などの一大経済プロジェクトが必要である。そして,EUのような東北アジア(中国,台湾,朝鮮半島,琉球,日本)共同体こそが必要である。」などと論じていましたっけ。

もっともそんなうまい話しがあるわけないか。

では,共生の知恵,ワークシェアリングの精神で行くしかないのでは。

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