新年早々「ホワイトカラー・エグゼンプション」導入を巡る政治家の動き
新年早々,私は風邪をこじらせ寝込んでいましたが,その間の,WE(ホワイトカラー・エグゼンプション)に関する政治家の発言は目まぐるしいですね。
昨年12月3日,自民党の雇用・生活調査会が立ち上がり,後藤田議員らが経財諮問会議に対して宣戦布告(http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2006/12/post_bbf7.html)をしました。確かに見事な「反転攻勢」です。
やっぱり政治家の力は凄いです。(大ざっぱなところは難点ですが…。)
○1月2日に公明党の太田代表のWE導入の労基法改正への反対姿勢と,与党協議会設置の要求(1月2日朝日新聞)。
○1月4日に自民党の丹羽総務会会長が,「賃金抑制や長時間労働を正当化する危険性をはらんでいる」「法改正は極めて慎重に対応しなければならない。経営者は人件費の削減ばかりでなく,従業員が報われるように雇用環境の整備にもっと力を入れるべきだ」と強調した(1月4日朝日新聞,1月6日,毎日新聞。詳細は後記参照)。
○1月5日,安倍首相は5日、一定条件下で会社員の残業代をゼロにする「ホワイトカラー・エグゼンプション」の導入について「日本人は少し働き過ぎじゃないかという感じを持っている方も多いのではないか」と述べ、労働時間短縮につながるとの見方を示した。首相は「家で家族そろって食卓を囲む時間はもっと必要ではないかと思う」と指摘。長く働くほど残業手当がもらえる仕組みを変えれば、労働者が働く時間を弾力的に決められ、結果として家で過ごす時間も増えると解釈しているようだ。(1月5日朝日新聞)。
○1月7日,中川秀直自民党幹事長は,「成果があれば短時間労働でよいという考え方や家庭にいる時間が長くなることもある。方向性は理解できる」としながら,政府も経営者も国民への説明が十分でないとして,慎重姿勢をにじませた(1月7日朝日新聞)
公明党の太田代表や自民党の丹羽総務会長らは,WEが残業代を抑制し,長時間労働を助長することを危惧しているのです。
これに対して安倍総理は,「残業代ゼロにすれば,長時間労働がなくなる」というトンチキ理解でいらっしゃる(このヒト,大丈夫かいな?-八代教授の言い分を真に受けられる希有な理解力を持っていらっしゃっる)。自民党中川幹事長は,さすがに「成果があれば短時間で良いから,家庭にいる時間が長くなることもある」と言うにとどめている。
読売新聞は,早々と「労基法改正案,通常国会提出見送りか」と観測記事を報道しています。(1月8日読売新聞)。でも,安心はまだ早いでしょう。自公の与党協議会がどうなるか注目です。
労働組合は,労基法「改悪案」国会提出阻止を強調しています。民主党も,参議院選挙は格差是正を掲げてたたかうという路線だそうです。共産,社民も同様。
労働弁護団も集会を予定しています。
↓
http://homepage1.nifty.com/rouben/
参議院選挙の争点は,安倍総理の「憲法改正」と「公務員改革(公務員バッシング)」,対する野党が「格差是正」。この構図は,自民党と公明党の議員さんたちは嫌でしょうね。
丹羽総務会長の1月4日の講演会の発言はこの続きで,どうぞお読みください。
丹羽総務会会長の発言
http://www.niwayuya.net/2007_1.5_topics.html
今後、全力を挙げて取り組まなくてはならない課題は、いわゆる格差の問題であります。企業収益は回復し、設備投資も好調ですが、一方で、個人消費がもう一つ伸び悩んでおります。
大企業はかつてない増収の一方で、中小企業や勤労者の所得が伸び悩み、これが消費低迷の大きな原因と言われています。幸いにして失業率も改善されつつありますが、景気回復によって実った果実が、国民全体に幅広く行き渡ることによって、この国の社会に漠然と広がる不安やいらだちを解消するように努めていかなければなりません。
最近、経済界が主導して、労働ビッグバンが進められようとしております。一定以上の年収のホワイトカラーの残業代を無くすことも議論されております。働き方が多様化していることは事実ですが、賃金抑制と長時間労働を正当化する危険性を孕んでおり、慎重に議論すべきであります。剰余金や株主配当も配慮しなくてはならないことは言うまでもありませんが、経営者は人件費削減ばかりを求めるのではなく、従業員が報われるような雇用環境の整備に努めることが大切であります。私は行き過ぎた市場原理主義を正し、汗を流したものが報われるように、国民の皆様方が将来とも安心して生活できるような労働分配率に改めなければならない。
丹羽氏は厚生大臣を歴任した自民党内の大物議員です。
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