Not guilty - 富山のえん罪事件に思う
富山の強姦・えん罪事件の報道です。何だか,弁護士として怒り心頭。その後,愕然とします。
朝日新聞
http://www.asahi.com/national/update/0119/TKY200701190358.html
http://mytown.asahi.com/toyama/news.php?k_id=17000000701200003
別の服役中の男が容疑を認めたため,えん罪が判明したという。弁護人も有罪でないとは気がつかなかったと言っています。
富山県警は19日、02年に起きた強姦(ごうかん)事件などで懲役3年の実刑判決を受けて服役した富山県の男性(39)が無実だったと明らかにした。
男性は任意の取り調べに当初は容疑を否認したが、3日目に容疑を認めたため、客観的な証拠がないまま逮捕した。男性は公判中も一貫して罪を認めていたという。
県警によると、2件の事件現場にあった靴跡は、男性の靴のサイズより大きかったという。
佐野仁志・富山地検次席検事は「様々な証拠を総合的に判断して起訴したが、振り返ってみると、男性を犯人と特定する客観的な証拠はなかった。基本に忠実な捜査を怠り、客観的な証拠に対する問題意識が足りなかった」と話した。(朝日新聞)
■虚偽の自白がなぜ生まれるのか?
この男性は,なぜ自白したのか。それを徹底的に調べて,嘘の自白を生み出す刑事司法の構造を是正しなければ「えん罪」は永遠になくならないでしょう。
この裁判を担当した裁判官は,この事件のことを憶えていません。憶えているわけがない。一日に3~5件は処理しますから。また,後で知っても,心を痛めることもないでしょう。
■裁判官は職業柄 「人を見たら泥棒と思え」という人たちです
多くの裁判官は,この事件報道を見ても,心の中では「阿呆な検察官」と「無能な弁護人」のせいだとしか考えないと思います。
今時の裁判官は,エリート意識の固まりで,治安優先思想に凝り固まっていますから。(裁判官って「オレ(アタシ)サマ」たちです)。
先日,被疑者に「踏み字を強要」した捜査官について報道されていました。
http://www.asahi.com/national/update/0118/SEB200701180011.html
このような拷問まがいの捜査や,人質司法が横行しています。検察官も裁判官も見て見ぬふりをしています。多くの弁護士は,空しい刑事弁護を敬遠しがちです(私も反省・・・)。
■刑事司法の改革の必要性-裁判員制度実施を控えて
法曹三者は猛省しなければなりませんね。
もし,この事件を私が弁護人として担当していたとしても,本人が認めたていたら無実だと気づいたかどうか。自信はありません。
でも,担当した検察官,裁判官,弁護士の個々の責任だけではなく,人質司法の是正,代用監獄の廃止,取り調べのビデオやテープ録音,事前の証拠開示など制度的な改善を早急に実現しなけれえん罪はなくなりません。
裁判員制度の実施が近づいています。刑事裁判の原則(無罪の推定)にたちもどる必要があります。無罪の推定を一番軽視しているのが裁判官ですから,裁判員制度になったからといって,裁判官にまかせていては安心できません。
昔は,「無罪の発見こそ,刑事裁判官の職務だ」と言った裁判官がいました。でも,そんな裁判官はけっして司法研修所の刑裁教官にはなれません。えん罪事件に習熟した弁護士も,まず司法研修所の刑弁教官にはなれないでしょう(最高裁が採用しない)。
■映画「それでも ボクは やっていない」
この日本の刑事裁判に対する痛烈に批判した映画が公開されました。試写会を見た知り合いの弁護士(刑事弁護で著名な方)は,「日本の刑事裁判を,リアルに,ありのまま描いている。」と言っていました。
周防正行監督 【それでもボクはやっていない。】
http://www.soreboku.jp/index.html
将来,裁判員になるかもしれない,子どもたちを連れて私も見に行きます。
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