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2006年12月10日 (日)

労働政策審議会「報告案」は安全配慮義務の「改悪案」

■安全配慮義務についての最高裁判例

○最高裁昭和50年2月26日判決 自衛官判決
「国は公務員に対して、国が公務遂行のために設置すべき場所、施設もしくは危惧等の設置管理又は公務員が国もしくは上司の指示のもとに遂行する公務の管理にあたって、公務員の生命及び健康等を危険から保護するよう配慮すべき義務(以下、「安全配慮義務」という。)を負っているものと解すべき」と判示している。

■労政審労働条件分科会11月21日素案(1)
この最高裁判決を踏まえて,労働政策審議会労働条件分科会の11月21日素案(1)は次のように提案しました。
使用者は労働者の生命,身体等を危険から保護するように配慮しなければならない」。

■12月8日報告案の修文
ところが,12月8日報告(案)では次のような文言になっています。

「使用者は,労働者がその生命,身体等の安全を確保しつつ労働することができる職場となるよう,労働契約に伴い必要な配慮をするものとする」

■安全配慮義務改悪案じゃがな
12月8日報告案のような法文で「安全配慮義務」が定められたなら,現在の判例の労働者保護水準は大きく後退させられてしまうのではないでしょうか。

これは大問題な文章だと思います。
このままでは,法文として意味不明なのでは?
職場となるような必要な配慮って,何かしら?
つまり,保護義務から努力義務におとしめたということなのでは?

改悪されることになりかねないです。

■安全配慮義務についての最高裁の判例
これに比べて,最高裁判例は明確です。
危険から労働者を保護する配慮義務ですから,具体的な安全対策の義務をイメージできます。

おそらく,報告案のような安全配慮義務の法律ができると,最高裁判例は大幅に変更されてしまうのではないでしょうか。こんな法文では裁判官ははたと困るのではないでしょうか。(安全を配慮した職場をつくるように努力していれば良いのだ???)

使用者の抵抗により「保護義務」的な要素を薄めて,「努力義務」に限りなく近いレベルまで後退させられてたということでしょう。

■労働者委員に求めたい点
労働者委員は就業規則変更の拘束力否定や合意原則の「高尚な理論」を強調しています。
ただし,12月8日の分科会では,「理屈はそうだけど,現段階では最高裁の就業規則論をそのまま法文化するべきだ」と言い出しました。
な~んだ。結局,そうなるのか…。それならそうで,最初からそこで勝負すれば良いのにね。

就業規則の変更の効力については,報告案のままでは,最高裁の「みちのく銀行」などの判例基準から,より合理性を認めやすい仕組みに後退させられます。労働者委員は,そこを突いてほしい。

■少数派労働運動-とにかく労働契約法は最後まで反対
これに対して,少数派・非主流派は,まだまだ「資本家の言うがママになる労働契約法反対!」と意気盛んです。解雇の金銭解決がなくなっても,就業規則による労働条件の変更を法律に明記する限り,「労働契約法」案に反対するとのスタンスを決めたのでしょうな。
弁護士会内の「一条の会」派のようなスタンスですな(弁護士業界の人にしか判らない比喩でスミマセン。)
もっとも,運動論としては「改悪だ!」とワンフレーズの方が判りやすい。「小難しいこと言っては労働者は運動に立ち上がらない」って言われるのが目に見えていますが。


(他方,連合の12月6日の集会アピールを見ると,就業規則による労働条件変更の法案化反対はトーンを弱めたように読めます。http://www.jtuc-rengo.or.jp/news/rengonews/2006/20061208_1165561781.html


とにかく,「高尚な理屈」も「資本家に反対する原則的立場」も重要なことは判るし,必要だけど,「安全配慮義務」や「有期雇用契約の更新配慮」などの素朴な実務的な論点について,労働者委員はおかしな点を,しつこく厚労省事務局を追求してもらいたいと思います。

「不十分だからけしからん」から反対なのか,「従来の判例水準からの改悪になる」から反対なのか。どっちか,メリハリをつけた論戦を挑んでほしい。

とにかく,12月8日報告案のような「安全配慮義務」を労働契約法に入れるくらいなら,何も規定しないほうがましでんがな。是々非々で,しっかり反対をしてください。

■最近のアメリカかぶれの民法学者の安全配慮義務不要論
ちなみに,民法の債権総論で安全配慮義務は「結果債務」とか「手段債務」とか議論されていました。労働法分野でも,保護義務なのか配慮義務なのかは永年にわたり論争されてきたところです。

ところが,最近はUSAロースクール帰りの民法学者どもは「債権総論など不要」,「安全配慮義務は不要。不法行為法で十分だ」との説を唱えているそうです。
ほんとにあいつら英語が出来るだけでんな。>【英語が出来ないおいらのひがみですがな。】

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