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2006年12月24日 (日)

労働市場改革専門家調査会 小嶌典明教授(阪大大学院・労働法)の発言

「労働新聞」(北朝鮮の新聞でないですよ。念のために!)の2007年1月1日号に注目の労働市場改革専門家調査会の委員の小嶌典明教授が論考を載せています。

題して,「派遣法を”新たに制定”-求められる発想の転換」と言います。
そこに書かれているのは,「一定の派遣期間に達した派遣労働者に対して,派遣先企業に正社員としての雇用契約の申し込みを義務づける制度の廃止」ということだけです。

派遣法が最後の一線<派遣労働者による直接雇用代替をできるだけ抑制しよう>という発想を取り払おうということです。

この小嶌教授は,過去に次のようなことを言っていました。

差をつけて意欲を高めよ

格差社会と騒がれているが,戦前の階級社会に比べれば,格差がなさすぎる。年功序列の横並び賃金がまだ主流で,その究極形が公務員だ。成果主義には評価の難しさがつきまとうが,仕事の重要度や能力で差をつけなければ,労働意欲は高まらない。日本の企業は単純労働に高給を払いすぎている米国は単純労働に給与を抑える代わり,キャリアを磨いて職や企業を渡り歩き,給与・待遇を向上させる自由度が日本よりはるかに高い」(「縦並び社会」毎日新聞社会部2006年)

いやあ,小嶌教授は労働法の教授ですけどね。「労働法のネオコン」っていう感じですね。
専門家調査会での山川隆一教授や大沢真知子教授との論戦は見物でしょうな。

なお,朝日新聞によるとこんなことも言っていますね。
http://www.asahi.com/life/update/1225/003.html

労働組合法は、組合員がその会社に1人でもいれば、使用者は正当な理由がなければ組合との団体交渉を拒否できないと定めている。しかし、同会議専門委員の小嶌典明・大阪大教授(労働法)が「経営側への負担が大きい。交渉権を一定割合以上の組合に限れば、労組が多数の組合員を組織する動機付けにもなる」と主張。米国では、過半数の労働者の支持を得た組合が交渉権を得る仕組みで、これを念頭に、1割以上の組織率を条件にした構想だった。

もう一人,八代尚宏教授の朝日新聞や毎日新聞のインタビューでの発言も,すごいと思います。
興味のある方は続きを読んでみてください。
ある人は,八代教授のことを「宇宙人みたい」と言っていました。(ただし,ほめているのか,けなしているのか,聞くのを忘れました。

■朝日新聞2006年11月15日

「派遣として雇用安定を」「社員解雇規制の修正も」 経財諮問会議・八代議員に聞く

 安倍内閣の下で一新した経済財政諮問会議。目指す労働市場改革とはどのようなものか。14日、民間議員の八代尚宏・国際基督教大教授に聞いた。(足立朋子)

 ――労働ビッグバンは何を目指しているのか。

 企業は子会社や系列会社を含めた「企業内労働市場」の中で社員を動かしてきた。これは高度成長で市場がどんどん広がり、企業組織も拡大していたから可能だった。

 だが、90年代以降の低成長時代には、企業はリストラを迫られている。外部人材を含めた横断的な労働市場を作り、生産性の低い分野から高いところに人材を移さなければならない。

 ――労働法制上、何が障害になっているのか。

 派遣労働の規制だ。労働者派遣法では派遣社員は正社員になるための前段階と位置づけているが、間違いだ。派遣法は契約期間を3年などと制限し、引き続き働いてもらうには正社員としての雇用申し込み義務を企業に課している。だが、企業は規制から逃れるために2年で辞めさせている。

 派遣を含めた非正社員は1600万人おり、全員を正社員化できるはずがない。非正社員なりに雇用を安定させることが大事だ。対象業種の制限、事前面接の禁止など非現実的な規制をなくすなど、派遣法を抜本改正し、純粋な「派遣労働者保護法」にしたい。

 ――正社員の雇用保障も見直すべきだと主張されているが。

 低成長で正社員の雇用を守るために、非正社員がより多く必要になった。正社員の過度の雇用保障が若者や主婦の参入を妨げている。判例上、正社員を解雇できるのは、パートや派遣を解雇してからといった解雇規制も法律で修正すべきだと思う。解雇の金銭解決を認めるのは当然で、やめてほしいと言われた会社で無理に働くより、手切れ金をもらって新しい仕事を探した方がいい

 ――一定の年収以上の人などを労働時間規制の対象から外す「ホワイトカラー・エグゼンプション」は必要か。

 いまの労働時間規制は時間と賃金が結びついている工場での働き方が前提だ。だらだら働いて残業代をもらう人がいる一方、子供を抱える母親が効率的に働き、早く帰宅しても残業代がない。労働時間規制がなくなれば過労死につながるという批判もあるが、過労死するほど働かせる会社はやめられるよう、労働市場の流動性を高めることが必要だ。

■毎日新聞 2006年12月18日 20時31分

労働市場改革:正社員待遇を非正規社員水準へ 八代氏示す

 経済財政諮問会議の民間メンバーの八代尚宏・国際基督教大教授は18日、内閣府の労働市場改革などに関するシンポジウムで、正社員と非正規社員の格差是正のため正社員の待遇を非正規社員の水準に合わせる方向での検討も必要との認識を示した。 八代氏は、低成長のうえ、国際競争にさらされた企業が総人件費を抑制している中、非正規社員の待遇を正社員に合わせるだけでは、「同一労働・同一賃金」の達成は困難と指摘。正規、非正規の待遇を双方からすり寄せることが必要との考えを示した。 また、八代氏は現在の格差問題が規制緩和の結果生じた、との見方を否定し「既得権を持っている大企業の労働者が、(下請け企業の労働者や非正規社員など)弱者をだしにしている面がかなりある」と述べた。 八代氏は、労働市場流動化のための制度改革「労働ビッグバン」を提唱しており、近く諮問会議の労働市場改革の専門調査会の会長に就任する予定。【尾村洋介】

ある人(某大学非常勤講師)は,これを読んで,八代教授が在籍している大学では,「きっと専任教授らの労働条件を下げて,非常勤講師の労働条件を少しは良くしてくれるにちがいない。」と期待されていました(なお,これは皮肉だと思います。)。

■規制改革派と,これを支持する日本人

このような小嶌教授八代教授に期待する勢力が強まっているようです。都市中間市民層(相対的に若い方が中心でしょうね)の3割くらいは,これらのニュータイプの教授たちに期待しているとの報道もあります(前記「縦並び社会」参照)。

他方で,自民党内にこれに対抗すべく,一部の議員らが自民の政調会内に「雇用・生活調査会」(旧「労働調査会)を作ったという報道もありました。
   ↓
http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2006/12/post_6502.html

2006年12月3日朝日新聞(朝刊)
「自民 労働調査会復活へ 経財会議にらみ党主導で」
2006年12月3日毎日新聞(朝刊)
自民党「労働調査会を復活へ 財政諮問会議「ビッグバン」に対抗」



来年の参議院選挙を睨んで,与党内でも両派の綱引きが強まっているようです。

連合と距離を置くと言われる(?)民主党現執行部はどうする?
個人的には,まっとうな社民主義に舵を切るよう期待しているのですが・・・

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コメント

少数組合の団交権制限を言い出したのも小嶌のようですね。朝日新聞
http://www.asahi.com/job/news/TKY200612240201.html

投稿: 増田尚 | 2006年12月25日 (月) 11時45分

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