今後の労働契約法制について検討すべき具体的論点(2)(素案)の問題点
11月28日 労働政策審議会労働条件分科会
有期労働契約について,気になる提案をしています。
■期間の定めのある労働契約に関する「気になる提案」
「期間の定めのある労働契約」に関して,「② 使用者は,その労働契約の締結の目的に照らして,不必要に短期の有期労働契約を反復更新することのないよう配慮しなければならないこととしてはどうか」という提案をしています。
でも,この「不必要な短期の労働契約を反復更新することのないように配慮しなければならない」とはどういう趣旨なのでしょうか。
■更新の基準との関連
パートタイム労働指針では,契約締結時に,「更新の有無」を通知し,更新がある場合において、「事業主が当該契約を更新する場合がある旨明示したきは、事業主は、短時間労働者に対して、当該契約を更新する場合又はしない場合の判断の基準を明示するもの」としています。この基準は,「会社の経営状況」「労働者の勤務成績」などで良いとされています。
そこで,使用者が,この「更新基準に鑑みて,もはや更新の必要がない。不必要な更新はできない。」などと主張すれば,有期労働契約の更新拒絶の正当化に使われる危険があると思います。
■民事的効力は何か?
また,「不必要な短期の労働契約を反復更新することのないように配慮しなければならない」という条文の民事的効力は何なのでしょうか?
まさか,必要のない労働契約を締結してしまったら,それが無効になるという趣旨ではないでしょう。
他方で,深読みすると,不必要な短期の労働契約を締結してはならないとの趣旨(正社員に有期契約労働者が代替されることを抑えるつもり)なのかもしれません。しかし,そうであれば,入り口で,「不必要な有期労働契約を締結しないように配慮しなければならない」としなければ意味がありません。
ということで,上記の②の定めは,趣旨不明だけでなく,「有害」だと思います。
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