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2006年12月31日 (日)

読書日記「脱格差社会と雇用法制」福井秀夫・大竹文雄編著

読書日記「脱格差社会と雇用法制」福井秀夫・大竹文雄編著
     2006年12月25日  第1版 日本評論社

解雇規制は雇用機会を減らし格差を拡大させる

     大竹文雄,奥平寛子著

■「労働ビッグバン」本の登場

「労働ビッグバン」の理論的正当性を論証しようとする書物が出版されました。
10人の学者と1人弁護士が雇用法制について論じています。中でも注目されるのは,大竹文雄教授(阪大教授)と奥平寛子氏(阪大院生)の同著の第7章の論文です。

■解雇規制は雇用機会を減らし格差を拡大させる

この章で論者たちは次のように論じています。

一度雇用すれば簡単には解雇できないという解雇規制の強化を求めるのは,労働者の自然な要求である。ところが,経済学的に考えてみると,皮肉なことに解雇規制の強化は,目的とは逆に不安定雇用や失業を増やす原因になってしまうのである。
 …
不況期に解雇を抑制するために作られた解雇規制は,好況期になっても正社員の増加に結びつかないという後遺症をもたらす。それだけでなく,正社員の長時間労働の一方で非正社員比率の上昇という雇用の二極化を招くのである。
  …
それでは,非正社員についても解雇規制を強化すれば,この問題は解決するのだろか。非正社員の解雇も規制が強化されれば,企業は,正社員や非正社員以外の生産要素である機械や設備を使う比率を高めて,労働者を使わないようにすることで対応できる。どうしても,労働投入が必要であれば,企業は労働契約という形ではなく,人々を雇用者(被雇用者の意味-*引用者)としてではなく,独立した自営業者として請負契約を結ぶことで対応することになる。結果的に,労働法の対象外という意味で,契約社員や派遣社員よりもさらに不安定な立場に労働者が置かれることになる。

以上の議論は,「標準的な経済学による考え方」だそうです。確かに,八代尚宏教授も「雇用改革の時代」(1999年・中公新書)で強調していましたから,この一見,筋の通った理屈自体は目新しいものではありません。(でも,世の中,そんな単純なわけないじゃん!?)

ところが,大竹・奥平論文で注目すべきは,1950年から2001年までの整理解雇判例の260件(判例体系CD-ROM)を分析して日本各都道府県の雇用率に与える影響を分析して事実を確認した,としている点です。

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2006年12月29日 (金)

後藤田正純議員 「労働ビッグバン」への宣戦布告!

「エコノミスト」(2007年1月9日号)に自民党雇用・生活調査会事務局長の後藤田正純衆議院議員のインタビューが掲載されています。

題して,「経済界は,まだ金儲けが必要なのか」!

大手企業は,「いざなぎ景気越え」を謳歌しているが,その一方で,生活保護を受けている100万世帯を超えている。最低賃金は先進国の次いで2番目に低く,ワーキングプアの問題は深刻だ。憲法25条の生存権の保障の精神からしても見て見ぬふりはできない。

いやあ~。さすがは,大・後藤田正晴の甥っ子。
貸金規制法の時も,男・後藤田の気っぷの良さは素晴らしかったですね。(先日,議員会館前ですれ違ったことあるけど,本当にイイ男でした。)
今は,なくなってしまった社会党のような発言です。
ちなみに,社会党の衆議院議員の井上晋方の親戚でもあるそうな。

後藤田議員曰く,

市場万能主義を主張する時期は終わりを告げている。

審議会が,連合と日本経団連の「談合機関」と化し,弱い立場にある一般労働者のために機能していない。

労働法制は規制緩和の一点張りだったが,これからは党が責任を持って,規律ある労働市場の創設を働きかけていく。

自民党や政治家が労働市場の規制緩和に反対しても,「抵抗勢力」になることはあり得ない。負担ばかりを強いられてきた国民はそうはみない。むしろ,経営者の論理を理解する層の方がマイノリティー。こちらも言いたいことを言い,経済界にはヒール(悪役)になってもらう。

この調査会に,60人が自民党議員が参加しているとのことです。
自民党のHPに役員や幹事が発表されています。なかなかの陣容です。 http://www.jimin.jp/jimin/yakuin/yakuin-3.html

主なメンバーには次のような人がいます。 

 会長 川崎二郎(元厚労大臣)
 顧問  大野功統 小坂憲次 
 事務局長 後藤田正純 

自民党政調厚労部会部会長の石崎岳議員も幹事として参加してます。厚労部会の労働担当部会から格上げされたような感じですね。 

調査会に参加した加藤紘一議員は,「この調査会は,経済財政諮問会議に対する宣戦布告だ」とぶちあげていたと言います。

この調査会の件は,前にも取り上げました。
http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2006/12/post_6502.html

どうやら,「負け組議員」の集まりとは,違うようですね。
本当に,経済財政諮問会議への「宣戦布告」のようです。

来年の通常国会は面白くなりそう?

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2006年12月28日 (木)

12月27日労政審「今後の労働契約法制及び労働時間法制について(報告)」

12月27日に労働政策審議会は「今後の労働契約法制及び労働時間法制について(報告)」を厚労大臣に答申しました。
    ↓
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/12/dl/h1227-4a.pdf

■労働契約法-就業規則の変更
労働契約法について,「就業規則の変更による労働条件の変更」は次のようになりました。

イ 就業規則の変更による労働条件の変更については,その変更が合理的なものであるかどうかの判断要素を含め,判例法理に沿って明らかにすること。
ロ 労働基準法第9章に定める就業規則に関する手続が上記イの変更ルールとの関係で従業であることを明らかにすること。

これ以前の12月21日の報告案は次のように定めていました。

イ 使用者が就業規則を変更し,その就業規則を労働者に周知させていた場合において,終業規則の変更が合理的なものであるときは,労働契約の内容は,変更後の終業規則の定めにところによるものとすること。
ロ 上記イの「合理的なもの」であるかどうかの判断要素は,次に掲げる事項その他の終業規則の変更に係る事情とすること。
ⅰ 労働組合とその合意のその他の労働者との調整の状況(労使の協議の状況)
ⅱ 労働条件の変更の必要性
ⅲ 終業規則の変更の内容

12月21日の案では,従来の判例の就業記規則の変更による労働条件の不利益変更についての合理性の基準を大幅に緩和する内容になっていました。ところが,12月27日の報告では判例法理に沿って明らかにすると,判例法理をそのまま法律とするという原則が宣言されています。

結果的には堂々巡りをして,実務の現状を承認するというところに落ち着きそうです。もっとも,判例法理に沿って,合理性の判断要素を明らかにすると言っても,その文言がどのようなものになるのか,何ら具体的な文言の記載もありません。不思議です。

法案化の段階で,具体的なものが出てくるのでしょうが。秋北バス,第四銀行,みちのく銀行の最高裁の判決文をそのまま法文とするわけにもいかないでしょうね。

■大山鳴動して?
この程度の「労働契約法なら,あってもなくても良い」という意見もあります。ただ,現状の労使の力関係では,判例で積み重ねられてきた水準を労働契約法とするくらいしか,労働運動には力がないということなのでしょう。

他方で,弱体化した労働運動側が,違法解雇の金銭解決制度などの改悪部分をよく撤回させたと言えるのではないでしょうか。
(もっとも,法制面で無理がありすぎたものを,規制改革会議がごり押ししての自滅という面もありそうです。勝負は「労働ビッグバン」の次ラウンドに持ちこされたということですかね)。

■WE導入等への労働者委員の反対
労働時間法制はまったく以前の報告と変わりありません。ホワイトカラー・イグゼンプション(WE)と企画業務型裁量労働制の緩和について,労働者代表委員の「認められない」との意見が報告書内に明記されています。

■2007年 「労働国会」
労基法改正案と労働契約法の2つの法案になるのでしょう。
07年の通常国会は「労働国会」となるそうです。自民党内に「雇用・生活調査会」が設置され,公明党も「格差社会」の是正を掲げており,WE導入に批判的な姿勢を強めています。与党内にも,WE導入反対の意見が強まりつつあるようです。

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2006年12月24日 (日)

労働市場改革専門家調査会 小嶌典明教授(阪大大学院・労働法)の発言

「労働新聞」(北朝鮮の新聞でないですよ。念のために!)の2007年1月1日号に注目の労働市場改革専門家調査会の委員の小嶌典明教授が論考を載せています。

題して,「派遣法を”新たに制定”-求められる発想の転換」と言います。
そこに書かれているのは,「一定の派遣期間に達した派遣労働者に対して,派遣先企業に正社員としての雇用契約の申し込みを義務づける制度の廃止」ということだけです。

派遣法が最後の一線<派遣労働者による直接雇用代替をできるだけ抑制しよう>という発想を取り払おうということです。

この小嶌教授は,過去に次のようなことを言っていました。

差をつけて意欲を高めよ

格差社会と騒がれているが,戦前の階級社会に比べれば,格差がなさすぎる。年功序列の横並び賃金がまだ主流で,その究極形が公務員だ。成果主義には評価の難しさがつきまとうが,仕事の重要度や能力で差をつけなければ,労働意欲は高まらない。日本の企業は単純労働に高給を払いすぎている米国は単純労働に給与を抑える代わり,キャリアを磨いて職や企業を渡り歩き,給与・待遇を向上させる自由度が日本よりはるかに高い」(「縦並び社会」毎日新聞社会部2006年)

いやあ,小嶌教授は労働法の教授ですけどね。「労働法のネオコン」っていう感じですね。
専門家調査会での山川隆一教授や大沢真知子教授との論戦は見物でしょうな。

なお,朝日新聞によるとこんなことも言っていますね。
http://www.asahi.com/life/update/1225/003.html

労働組合法は、組合員がその会社に1人でもいれば、使用者は正当な理由がなければ組合との団体交渉を拒否できないと定めている。しかし、同会議専門委員の小嶌典明・大阪大教授(労働法)が「経営側への負担が大きい。交渉権を一定割合以上の組合に限れば、労組が多数の組合員を組織する動機付けにもなる」と主張。米国では、過半数の労働者の支持を得た組合が交渉権を得る仕組みで、これを念頭に、1割以上の組織率を条件にした構想だった。

もう一人,八代尚宏教授の朝日新聞や毎日新聞のインタビューでの発言も,すごいと思います。
興味のある方は続きを読んでみてください。
ある人は,八代教授のことを「宇宙人みたい」と言っていました。(ただし,ほめているのか,けなしているのか,聞くのを忘れました。

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2006年12月23日 (土)

中華人民共和国 労働契約法(草案)

■社会主義市場経済と労働契約法

中華人民共和国でも,労働契約法の制定が検討されているそうです。

中国に進出した外国企業(日本企業)も,その影響を受けるので立法動向を注視しているとのことです。JETROのWEBで労働契約法(草案)の仮訳がアップされています。
  ↓
http://www.jetro.go.jp/china/shanghai/jp/supportcenter/data_example/labor/0329.htm

■中国 労働契約法の労働契約変更の法理

これによれば,中国の労働契約法草案では,労働契約について,次のように定めています。

第9条 
労働契約は書面形式で締結しなければならない。

第29条 
雇用組織と労働者は話し合いで一致し,労働契約の規定内容を変更することができる。書面形式で変更する内容を記載する必要があり,雇用組織と労働者双方の署名或いは捺印することによって効力を生じる。

つまり,労働契約の変更は労使の合意(書面合意)によるという原則を定めています。

他方で,次のような解除(解雇)制度を定めています。

第32条 
下記の状態…がある場合,雇用組織は30日前に書面で労働者本人に通知する或いは低額以上の労働者の賃金1ヶ月分を支払った後,非固定期限で労働契約を解除することができる。
(1)(2)略
(3)労働契約の締結時根拠となる客観状況に重大な変化が発生し,労働契約を履行で きないため,雇用組織と労働者が話し合いを経ても労働契約内容の変更或いは労働契約の達成協議を中止できない場合

つまり,労使で話し合いをしても労働契約を変更ができない場合には,客観的状況に重大な変更が発生し,労働契約が履行できない場合には,解雇できるという制度をとっています。

労働契約の変更は合意によるのが原則です。
しかし,変更の合意ができないが,変更することが社会的にみて妥当という場合にどのように処理するのか?

一つは,合意がなくても例外的に就業規則等により変更できる制度を容認する。
二つは,合意ができない場合には例外的に解雇することを容認する。
三つは,合意ができない場合には例外的に契約変更請求権を認める。

中国は2番目の制度を選択しようとしているということでしょうか?

■中国の就業規則制度?

ちなみに,中国では,日本の就業規則制度に類似した「雇用組織の規則制度」を認めているようです。

第5条
雇用組織の規則制度は直接労働者の身近な権利に及ぶものであり,労働組合,職員組合或いは職員代表組合での討論を経て,或いは平等な話し合いによって規定を作成しなければならない。雇用組織の規則制度は組織内で公告しなければならない。

この規則は,直接,労働者の権利を定めるもののようですが,この規則と労働契約によって定められた労働条件との関係がどうなるかについては,法文には明記されていません。きっと,労働契約が優先するということになるように思えます。

どこの国でも労働契約の合意原則と,労働契約(労働条件)の変更制度をどう折り合いをつけるのか,いろいろな考え方があるようです。

■開発独裁だから,日本の労働法に類似のはずだけど?

中国政府は日本の労働法や欧州の労働法を研究していると思います。中国が参考にするとなると日本の労働法のような気がしていました。なにしろ,日本は,社会主義類似(あるいは「開発独裁」 by後藤道夫)的な企業-労働組織をもっているからです。

でも,この労働契約が変更できな場合には労働者を解雇するという制度は欧州的な制度のように思います。

以上,全くの無知を顧みず,コメントしてしまいました。
中国法の専門家から見れば的外れなんだろうと思います。ご容赦を!

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2006年12月22日 (金)

まねきTV 知財高裁決定

■まねきTVとは?

ソニーの「ベース・ステーション」という機器を使って,TV局のテレビ番組をインターネット経由で個々のモニターに転送するシステムを提供していた永野商店に対して,NHK以下,テレビ局6社が,送信可能化権を侵害したとして差し止めの保全処分を申し立てた事件。知財高裁で永野商店が2006年12月21日,知財高裁で勝訴しました。

永野商店 まねきTV
  ↓
http://www.manekitv.com/index.html

新聞報道(TVでは報道していないそうです。やはりTVはジャーナリズムではないですな)
  ↓
http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20061222k0000e040043000c.html

永野商店は,東京地裁で勝訴し,昨日,知財高裁でも勝訴しました。
裁判所サイトに既に掲載されています。
  ↓
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=07&hanreiNo=33948&hanreiKbn=06

■TV局6社弁護団の偉容

東京地裁の仮処分審尋と知財高裁の保全異議では,TV局6社の代理人10数名とTV局の法務部員が合計30名位が出廷して,裁判所の部屋が一杯になりました。

こちら側(永野商店側)は4名だけ。「知財」弁護士で著名な藤田康幸弁護士や小倉秀夫弁護士と,私と同じ事務所の志村新弁護士と一緒に担当させてもらいました。

TV局6社を相手にして知財高裁で完勝。痛快です。

■産業政策をサポートする司法政策?

この知財高裁の判断の背景には,「技術進歩」と,それによる「新サービスの芽を育てる」という司法政策(産業政策)があるように感じました。

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2006年12月21日 (木)

労政審労働条件分科会12月21日 「報告(案)」

12月21日に報告案が提案されました。
報告案を掲げておきます。

「rouseishin06z21.pdf」をダウンロード

■労働契約法

整理解雇,違法解雇の金銭解決制度は先送りにされています。
均衡原則は,まだ固まってないようです。

問題点はそのままです。
(1)安全配慮義務はやはり総則規定に努力義務のような形での定めです。
総則規定なので判例の安全配慮義務はそのまま生きるということになるのでしょうか?

(2)就業規則については,第1要件に「労働組合の同意」が来る形式はそのままです。
判例の基準が変更,緩和されるのでしょうか?

(3)不必要に短期の有期労働契約を反復更新しないよう配慮しなければならないとの定めはそのままです。これは,例えば,「2ヶ月契約を6回更新して1年間働かせるようなことはしてはならない」という意味なのでしょうか?

■労基法労働時間

連合は導入自体に絶対反対を主張しています。年収の条件交渉はしない立場を表明していますから,折り合いはつかないでしょう。

厚労省は36条は適用され,週休2日は確保されるから,現状より改善だと説明していると聞きました。しかし,それで休日労働が確保されるとは到底,思えません。

実際の職場において,労基法が守られるような環境なのか否かという現状認識の差でしょうか。

次回12月27日にとりまとめの予定のようです。

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2006年12月10日 (日)

労働政策審議会「報告案」は安全配慮義務の「改悪案」

■安全配慮義務についての最高裁判例

○最高裁昭和50年2月26日判決 自衛官判決
「国は公務員に対して、国が公務遂行のために設置すべき場所、施設もしくは危惧等の設置管理又は公務員が国もしくは上司の指示のもとに遂行する公務の管理にあたって、公務員の生命及び健康等を危険から保護するよう配慮すべき義務(以下、「安全配慮義務」という。)を負っているものと解すべき」と判示している。

■労政審労働条件分科会11月21日素案(1)
この最高裁判決を踏まえて,労働政策審議会労働条件分科会の11月21日素案(1)は次のように提案しました。
使用者は労働者の生命,身体等を危険から保護するように配慮しなければならない」。

■12月8日報告案の修文
ところが,12月8日報告(案)では次のような文言になっています。

「使用者は,労働者がその生命,身体等の安全を確保しつつ労働することができる職場となるよう,労働契約に伴い必要な配慮をするものとする」

■安全配慮義務改悪案じゃがな
12月8日報告案のような法文で「安全配慮義務」が定められたなら,現在の判例の労働者保護水準は大きく後退させられてしまうのではないでしょうか。

これは大問題な文章だと思います。
このままでは,法文として意味不明なのでは?
職場となるような必要な配慮って,何かしら?
つまり,保護義務から努力義務におとしめたということなのでは?

改悪されることになりかねないです。

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2006年12月 8日 (金)

労政審労働条件分科会12月8日 「報告(案)」

12月8日 午後1時から 労働政策審議会労働条件分科会が開催。

事務局から「今後の労働契約法制及び労働時間法制の在り方について(報告)」(案)が提案されました。
  ↓
「rouseishin06z08.pdf」をダウンロード

イタリック文字(斜体字)は,未だ事務局の案が固まっていないということでした。
イタリック文字の項目は次のとおり。

(1)労働契約の原則 均等考慮
(2)整理解雇
(3)解雇の金銭解決
(4)長時間割増賃金の一定時間及び一定率
(5)自由度の高い働き方の年収

取りまとめが極めて困難な項目という趣旨なのでしょうね。
労側は普通の字の部分が決まったわけではないと批判していましたね。
取り急ぎ「報告」(案)をアップしておきます。

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2006年12月 7日 (木)

民主党の労働契約法案と労働時間法制(案)を読んで

■注目すべき民主党案
民主党は「労働契約法案と労働時間法制(案)」について,パブリックコメントを募集しています。

○民主党HP
http://www.dpj.or.jp/news/dpjnews.cgi?indication=dp&num=9337

○民主党案
http://www.dpj.or.jp/news/files/roudou061206(2).pdf

■労働弁護団の労働契約法制提言
労働契約法案としては,1994年に労働弁護団は第一次案を発表しています。1994年当時は,労働弁護団が労働相談活動をする中で個別労働紛争が急増している現実に気づき,労働契約法の必要性を痛感していました。当時は,労働契約法が現実の立法課題や政治課題になるとは(私は)思っていませんでした。
その後,労働弁護団は2005年に労働契約法を提言しています。
  ↓
http://homepage1.nifty.com/rouben/teigen05/gen050519.htm

ちなみに,当時,私自身,このような法律は,「『革命前夜』にでもならない限り,日本では実現できない」と陰で言っていたものです(要するに「実現不能」ということ)。ところが今,労働契約法が実際に立法課題として浮上しています。文脈とステージが異なる(規制改革の流れにのった)とはいえ「時代」は動くものですな。

■時代は変わる
ということで,民主党の労働契約法を興味深く読みました。中身は,連合の労働契約法試案とほぼ同じです。
  ↓
http://rengo-soken.or.jp/houkoku/itaku/sian_jobun.pdf

でも,「新自由主義政党」かと思われていた民主党が政治課題として連合の労働契約法試案を受け入れたこと自体が素晴らしいことです。

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2006年12月 4日 (月)

今後の労働契約法制について検討すべき具体的論点(2)(素案)の問題点

11月28日 労働政策審議会労働条件分科会

「rouseishin2.pdf」をダウンロード

有期労働契約について,気になる提案をしています。

■期間の定めのある労働契約に関する「気になる提案」
「期間の定めのある労働契約」に関して,「② 使用者は,その労働契約の締結の目的に照らして,不必要に短期の有期労働契約を反復更新することのないよう配慮しなければならないこととしてはどうか」という提案をしています。

でも,この「不必要な短期の労働契約を反復更新することのないように配慮しなければならない」とはどういう趣旨なのでしょうか。

■更新の基準との関連
パートタイム労働指針では,契約締結時に,「更新の有無」を通知し,更新がある場合において、「事業主が当該契約を更新する場合がある旨明示したきは、事業主は、短時間労働者に対して、当該約を更新する場合又はしない場合の判断の基準を明示するもの」としています。この基準は,「会社の経営状況」「労働者の勤務成績」などで良いとされています。

そこで,使用者が,この「更新基準に鑑みて,もはや更新の必要がない。不必要な更新はできない。」などと主張すれば,有期労働契約の更新拒絶の正当化に使われる危険があると思います

■民事的効力は何か?
また,「不必要な短期の労働契約を反復更新することのないように配慮しなければならない」という条文の民事的効力は何なのでしょうか?

まさか,必要のない労働契約を締結してしまったら,それが無効になるという趣旨ではないでしょう。

他方で,深読みすると,不必要な短期の労働契約を締結してはならないとの趣旨(正社員に有期契約労働者が代替されることを抑えるつもり)なのかもしれません。しかし,そうであれば,入り口で,「不必要な有期労働契約を締結しないように配慮しなければならない」としなければ意味がありません。

ということで,上記の②の定めは,趣旨不明だけでなく,「有害」だと思います。

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2006年12月 3日 (日)

経済財政諮問会議「労働ビッグバン」を政治争点に

経済財政諮問会議 労働ビッグバン

12月1日 朝日新聞朝刊  一面トップ
「派遣労働者の直接雇用 企業の義務撤廃検討」
 経財会議 3年期限見直し

■経財会議に雇用労働分野の専門調査会を発足
http://www.keizai-shimon.go.jp/minutes/2006/1130/item4.pdf

労政審労働条件分科会での議論に業を煮やしたということでしょうね。
厚労省にまかしていては,労働分野の規制改革は実現しない。専門調査会で突破をはかるということでしょう。

厚労省内の旧労働省は,どこまで踏ん張れるか?

■日本経団連と新自由主義者の共闘?
日本経団連の御手洗会長も,キャノンが「偽装請負」で批判と摘発を受けて,頭にきて「法律が間違っている」と口走ってしまいました。日本的大企業の「領袖」も,とうとう新自由主義者たち(スポークスマン八代教授)と共闘しようと腹を固めたのでしょうかね。

■自民党の労働調査会
今朝12月3日の朝日新聞は,自民党が政調に労働調査会を「雇用・生活調査会」に衣替えして,経済財政諮問会議の専門調査会に対抗するとの記事を書いています。http://www.asahi.com/politics/update/1203/001.html

朝日は,雇用・労働問題について,系統的に記事を書いていますねえ。

自民党の政調には,厚生労働部会があり,部会長は石崎岳議員。労働担当は貸金規制法で男をあげた,あの後藤田正純議員です。この厚労部会との関係はどうなるのでしょうかね。
http://www.jimin.jp/jimin/yakuin/yakuin-3.html

ともかく,さすが自民党は,層が厚いというか,懐が深い。「腐っても鯛」ですな。

■国民の関心を呼ぶ政治争点になってほしい
参議院選挙前に,この「労働ビッグバン」を契機として,政治問題として選挙の争点,国民的議論の的になってほしいと思います。若者の問題なのだから,団塊の世代(息子,娘の問題)から若者までの全ての人々の関心事のはずです。

古くさい日の丸や君が代を振り回すような教基法改正なんかより,ずっとみんなの関心を引くはずなんだけど。

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2006年12月 2日 (土)

映画「トンマッコルへようこそ」

トンマッコルへようこそ

  韓国映画 2006年日本公開

http://www.nikkatsu.com/movie/history/2006_in/dongmakgol/index.html

場所は朝鮮半島の山奥。時は朝鮮戦争。仁川に国連軍(連合軍。米軍)が上陸して北朝鮮軍と中国人民軍に対して反転攻勢している時期。

山奥の村に,米軍の飛行機が墜落。米兵が1人降ってきた。韓国軍(サウスコリア)の脱走兵2人。朝鮮人民軍(ノースコリア)の敗残兵3人が「トンマックル」という村に転がり込みます。

トンマックルとは,「子どものような無垢な村」という意味。戦争が起こっていることすら知らない「桃源郷」に住む村人たち。兵隊たちと,村人たちを「交流」(?)を楽しく描いています。

素晴らしい反戦ファンタジー映画です。韓国映画のパワーを感じます。
是非,ご覧ください。

以下,ネタバレです。

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