読書日記「脱格差社会と雇用法制」福井秀夫・大竹文雄編著
読書日記「脱格差社会と雇用法制」福井秀夫・大竹文雄編著
2006年12月25日 第1版 日本評論社
解雇規制は雇用機会を減らし格差を拡大させる
大竹文雄,奥平寛子著
■「労働ビッグバン」本の登場
「労働ビッグバン」の理論的正当性を論証しようとする書物が出版されました。
10人の学者と1人弁護士が雇用法制について論じています。中でも注目されるのは,大竹文雄教授(阪大教授)と奥平寛子氏(阪大院生)の同著の第7章の論文です。
■解雇規制は雇用機会を減らし格差を拡大させる
この章で論者たちは次のように論じています。
一度雇用すれば簡単には解雇できないという解雇規制の強化を求めるのは,労働者の自然な要求である。ところが,経済学的に考えてみると,皮肉なことに解雇規制の強化は,目的とは逆に不安定雇用や失業を増やす原因になってしまうのである。
…
不況期に解雇を抑制するために作られた解雇規制は,好況期になっても正社員の増加に結びつかないという後遺症をもたらす。それだけでなく,正社員の長時間労働の一方で非正社員比率の上昇という雇用の二極化を招くのである。
…
それでは,非正社員についても解雇規制を強化すれば,この問題は解決するのだろか。非正社員の解雇も規制が強化されれば,企業は,正社員や非正社員以外の生産要素である機械や設備を使う比率を高めて,労働者を使わないようにすることで対応できる。どうしても,労働投入が必要であれば,企業は労働契約という形ではなく,人々を雇用者(被雇用者の意味-*引用者)としてではなく,独立した自営業者として請負契約を結ぶことで対応することになる。結果的に,労働法の対象外という意味で,契約社員や派遣社員よりもさらに不安定な立場に労働者が置かれることになる。
以上の議論は,「標準的な経済学による考え方」だそうです。確かに,八代尚宏教授も「雇用改革の時代」(1999年・中公新書)で強調していましたから,この一見,筋の通った理屈自体は目新しいものではありません。(でも,世の中,そんな単純なわけないじゃん!?)
ところが,大竹・奥平論文で注目すべきは,1950年から2001年までの整理解雇判例の260件(判例体系CD-ROM)を分析して日本各都道府県の雇用率に与える影響を分析して事実を確認した,としている点です。
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