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2006年11月 1日 (水)

個別労使紛争解決研修(応用研修)-労働審判

■JIRRA研修
10月26日,日本労使関係研究会(JIRRA)の個別労使紛争解決研修(応用研修)の講師を担当しましたhttp://www.jirra.org/info/funso0607/index.html。この研修では,労働審判員経験者が参加して,模擬労働審判用の記録を使ってグループ研修を行いました。

用いた素材は,2006年1月に日弁連が実施した模擬労働審判ですhttp://www.nichibenren.or.jp/ja/event/attorneys/060113.html

■解雇の労働審判(模擬労働審判)のグループ討議
事案は解雇事件です。衣料品販売会社の支店店長が,売り上げ不振,顧客とのトラブルなどを理由に普通解雇されたという事例です。

参加者は,申立人グループ,労働審判委員会グループ,相手方グループに6~7人づつ別れて議論をしながら進める方式です。

労働審判委員会グループは,争点の整理,釈明事項,当事者や関係者への尋問を検討します。申立人,相手方グループもどう対応するかを検討して準備をします。

そして,講師である私が,申立人役,申立人代理人役,相手方代理人役,人事部長役,営業課長役をこなして,質問に答えることになりました。さてさて,初めての方法でどうなることやら,と心配でした。

■グループ研修の進め方
参加者は,各グループで争点整理や証拠を検討して,講師に質問(審尋)することになります。それぞれのグループ同士でやるのも一つの手なのですが,準備する時間がなく,まとまりがつかないため,講師が本人役,証人役をやりました。

■調停の試み
審尋をした後,調停の試みについては,実際に各グループにやってもらいました。これが,なかなか面白かったです。各グループには,労働側に推薦された審判員と使用者側に推薦された審判員がそれぞれ半数くらいづつ入っています。なかには労働組合役員の顔見知りや,なんと,私が労働委員会で反対尋問をした大手企業の元人事部長の方さえいます(びっくり!)

申立人グループに入った使用者側の審判員が結構,強気の発言をしたり,面白かったです。また,各グループが策定した調停案の金銭解決案が,私から見ても結構,高額だったのには驚きました。民間の感覚は,裁判所の相場よりも高い感じですね。

■労働審判の結論は如何に?
最後に,調停が不調になったとして,各グループが労働審判委員会になったつもりで,労働審判をしてもらいました。その結果は,・・・・

■解雇は有効か無効か? 判断は如何に
3つのグループとも「解雇無効」と判断しました。(私の証人役の演技のせいでしょうが,)労使推薦の区別なく全員一致の結論です。

■金銭解決の労働審判!?
ところで,3つのうち2つのグループが「解雇無効。金銭解決。雇用関係終了」の労働審判を出したのです。そのグループには,もちろん労働者推薦の審判員がいます。おまけに,私が今まで一緒に争議をやったことのある全労連系労組の役員も「解雇無効。でも退職金銭解決」という労働審判が妥当との判断をしたのには驚きました。個別労働紛争であり,復職しても,使用者と,うまくいかない事案だという判断だからでしょうか。

他方,私が過去に反対尋問したことのある某大手企業の元人事部長がいるグループは「解雇無効。地位確認。賃金支払い」との労働審判でした。

結構,みなさん模擬労働審判のグループ研修なのに,本気になって議論して真剣に結論を検討されていました。

■労使でも合議可能!
参加者の感想を聞くと,「労働者側の推薦の審判員,使用者側の推薦の審判員と一緒に議論して大丈夫なのか,と心配していた。ところが,一緒に議論したらちゃんと話しができて合意ができることにびっくりした」とおっしゃていました。

私も,初めての応用研修でしたが,とても面白く,大変興味深いものでした。12月に埼玉,来年3月に大阪で,応用研修を行う予定です。それぞれ,どんな参加者で,どんな応用研修になるのか,楽しみになりました。

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