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2006年10月18日 (水)

労働審判法の施行状況

■労働審判の現状
労働審判法が今年4月から施行されました。その施行状況について概要の情報が入りました。中間的な速報(聞き取りも含み訂正もありうる)を次ぎにアップしておきます。

特徴は,第1に,調停が成立する率が顕著に高いこと。第2に平均処理日数が62日と迅速であること,第3に,仮処分が激減していること。第4に,期待された掘り起こし効果はまだまだということです。

1年経過後の総合的な分析が必要ですが,労働側弁護士がもっと労働審判申立に力を入れるべきだと思います。

■全国的な労働審判新受件数(8月末日)
 全国合計 466件
 
  ①東京地裁 130件
  ②大阪地裁 47件
  ③横浜地裁 40件
  ④名古屋地裁26件
  ⑤神戸地裁 18件
  ⑤札幌地裁 18件

■東京地裁の最新データ(9月末現在)
 ○新受件数   156件
 ○事件種別件数
    地位確認   71件
    賃金      31件
    退職金     17件
    損害賠償    14件
    解雇予告手当  5件
    残業代      5件
  ○使用者申立    3件
  ○本人申立     20件
  ○処理別件数
    調停成立    74件
    審判       18件
    24条終了     2件
   
■調停成立率(既済件数)
 全国  69% 地位確認につき 80.2%
 東京  74% 地位確認につき 80%
 労働訴訟事件の和解率が50%を切っていることの比較からは調停成立率は極めて高い。
■審判に対する異議申立
 全国 審判=33件→異議申立=14件(8月末)
 東京 審判=18件→異議申立=13件(9月末)
■審理期間
 東京地裁 平均62.5日
■他の手続との比較-仮処分の半減
 東京地裁では,労働審判が156件であるかわりに,仮処分事件は半減しているとのことである。
 全国的に見ると各年4月から7月の手続別新受件数は次のとおり。

  年(4~7月)   合 計   仮処分   訴 訟    労働審判
 平成16年  1026件 235件 791件    -
 平成17年   1003件 232件 771件    -
 平成18年  1172件 144件 669件 359件

■労働審判がメインストリート化する可能性
労働審判の急増と,仮処分だけでなく本訴からも,事件が流れている傾向が伺われます。将来的には個別労働紛争については,労働審判がメインストリートになるのではないかと思わせます。各地の労働局の紛争調整手続がどうなっているかも見てみたいですね。

■事務所及び私の担当事件
ちなみに,私は労働審判を2件申し立てました。私が所属している事務所では現時点で17件申し立てているとの話しです。まだ,事件傾向は分析できていません。)

私が担当した事件は,①残業代請求事件(労働者性の有無が争点)と,②退職金請求事件(グループ企業間で労働者が転籍した場合に退職金の計算日数として転籍前の在職期間が引き継がれるかどうかが争点)の2件です。両事件とも調停で終わりましたが,労働者側の要求がほぼ9割方実現しました(退職金事件は100%回収,残業代事件は証拠のある期間で100%,証拠ない部分で5割回収)。本訴だったら,延々1年間主張と証拠調べして和解してもっと低額の和解になる危険性があります。労働審判員会の熱いうちに打てという流れで良い解決になったと思います。

■積極的な申立を決意
あと1件,早く申立をしなければいけない事件を受任しています。
他方で,予想より,労働審判事件数は増えていません。私としては,要領が見えてきましたので,もっと積極的に労働審判を申し立てようと思っています。

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コメント

労働審判法の新受状況データを探していたら、
ココにたどり着きました。
もしよければ、どうやってデータを拾ってきたのか教えて下さいますか?

投稿: まゆっぺ | 2007年6月18日 (月) 04時00分

日弁連労働法制委員会の弁護士と最高裁が労働審判についての協議会を行っています。そのときに発表された統計です。また,東京3弁護士会と東京地裁との間で労働審判協議会がもたれており,そこで東京地裁労働部から提供された統計です。最近のジュリスト,判例タイムズに,裁判官が統計数字を公表して論文を掲載しています。同じ統計数字です。

投稿: 水口 | 2007年6月18日 (月) 14時18分

水口先生へ
質問コメントを残した後で、すごい先生に瑣末な事を伺ってしまったことに気づき焦りまくっていました。
お優しくも直ぐにお返事を頂きまして感激してます。
本当にありがとうございました。

投稿: まゆっぺ | 2007年6月18日 (月) 22時40分

解雇についてご意見を聞かせてください。
私は生命保険の募集外務員をしていました。会社の規定により査定を達成できないときは会社は外務員の職を解職することができる旨の定めがある。この場合就業規則および社員規定により退職を余儀なくされる。慣例的には従業員より退職願を提出することにより合意解約の形式をとっている。
私は退職願の提出を拒否し、解職にかかる規定を認めることで7月1日より職を失うことになった。しかし、会社は解職は解雇と異なり解雇通知および予告手当ての支払いについては行わないことを就業規則に記載しています。
したがって、解雇の通告も予告手当ての支払いもありません。会社の見解は就業規則の記載により解職者は当然退職するものであり、合意の契約解除であると言う。
この事件を労働審判の申し立て手続きによって解決したいと考えています。
労働審判会の構成員はどのような方がしているのでしょうか。本人申し立てで解決をしたいと考えています。よろしくお願いいたいます。

投稿: 使用人 | 2007年7月23日 (月) 23時33分

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