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2006年10月28日 (土)

読書日記 「悪魔のサイクル」 内橋克人著 文藝春秋

読書日記 「悪魔のサイクル-ネオリベラリズム循環」
                  
  内橋克人著 文藝春秋

  2006年10月23日読了

1995年に出版された著書の「規制緩和の悪夢」の続編です。
この15年,10年で日本社会がどう変わったか。
格差の「現実」は,プロローグで簡潔にまとめられています。

○OECDレポートでは,日本の貧困率が15.3%。先進国ではアメリカに次いで2位。
【なお,貧困率の定義は,国民の可処分所得の中央値から半分以下の所得層を貧困層として定義。日本の場合には厚労省の「国民生活基礎調査」によれば一世帯当たりの年間所得の中央値は476万円。その半分以下の238万円で生活する世帯が15.3%となる。】

○正規雇用が10年で460万人減少し,非正規雇用は600万人増加。
○生活保護世帯が1992年で58万世帯。2005年に104万世帯に増加。
○自殺者は1992年に2万2104人。2005年には3万2552人に増加。
○刑法犯は1992年に235万件。2005年には342万件に増加。

フリードマンを嚆矢とするネオリベラリズムが世界を席巻する有り様が南米のチリとアルゼンチンの歴史を通して描かれます。フリードマンの弟子達と,チリのピノチェト独裁政権の新自由主義経済政策との繋がりには驚きました。

ちなみに,私にとっては,チリのアジェンデ政権を崩壊させたピノチェトの軍事クーデターは,若かりし頃の忘れられない一コマです。
(高校の世界史(必修だった!)や地理の教師が一生懸命,資料をまとめて解説してくましたなあ。まあ,若いころ,あんな事件に興味をもったから,労働弁護士になったようなものです。ワカゲのイタリですな。なお,映画「愛と精霊の家」(アジェンデ派活動家の恋人役のウィノナ・ライダーが可愛かった。)や映画「死と処女」(ピノチェト秘密警察の拷問者に復讐しようとする被害者役の女性シガニー・ウイーバーが怖かった)など,チリのクーデーターを描いた映画は色々あります。)

【ネオリベラリズムが循環】
 資本の自由化+規制緩和+市場整備
  ↓
 海外マネーの流入
  ↓
 バブルの発生と好景気
  ↓
 バブル崩壊 → 海外マネーの流出
  ↓
 不景気
  ↓
 労働規制緩和 → 非正社員化
  +
 企業淘汰・合併・外資化
  +
 所得の二極分化
  ↓
 海外マネーの流入
  ↓
  バブルの再発生+超金持ち
  ↓
 経済事犯の頻発
  ↓
 海外マネーの流出
  ↓
 地域社会の崩壊・共同体の破壊・治安悪化

著者によれば,日本は今,第二のバブル崩壊の下り坂にいるということです。著者は北欧の人間的資本主義を目指します。そして,人々が連帯して市場を「調教」する市民参加型資本主義。共生の経済を高らかに歌い上げています。

米国型「市場原理主義」の象徴「MSウィンドウズ」に対抗する「市民参加型資本主義」の象徴は「リナックス」です。じゃあ,日本で「トロン」を復活すれば,「共生型資本主義」の象徴になりますかね。

なんとなく「白鳥の歌」のような本です。

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